今年度の日本記者クラブ賞を受賞した松尾文夫・元共同通信ワシントン支局長が同クラブで記念講演した。米中間の結びつきは深まっていると指摘、「東アジア情勢は和解へ向け、大きな展開を描く時代に入っている」と強調した。

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2017年5月30日、今年度の日本記者クラブ賞を受賞した松尾文夫・元共同通信ワシントン支局長が同クラブで記念講演した。米中間の結びつきは深まっていると指摘、「東アジア情勢は和解へ向け、大きな展開を描く時代に入っている」と強調した。

また戦争で亡くなった人たちのために、お互いに祈るという鎮魂の儀式を行うべきだとし、昨年の米大統領の広島訪問に続いて、「日本が率先して韓国、中国などと和解することが急務であり、日本外交のチャンスでもある」と強調。安倍晋三首相は甚大な被害を与えた中国の南京や重慶を訪れ、献花すべきだと訴えた。

松尾氏は共同通信で論説委員なども務め、2002年からフリージャーナリスト。『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』を8年前に刊行するなど半世紀を超えるライフワークとして米国報道に取り組み、近年は被爆地広島とハワイ真珠湾を日米首脳が訪問し献花することで、真の戦後和解が生まれると熱心に訴えてきた。2016年5月、オバマ大統領が広島を訪問し、12月には安倍晋三首相が真珠湾を訪れ、提言通りの相互献花外交が実現した。

発言要旨は次の通り。

昨年の日米首脳による広島と真珠湾訪問まで、日本と米国は目に見える形での和解を果たしていなかった。戦争で亡くなった人たちのために、お互いに祈るという鎮魂の儀式を行っていなかったからだ。疎開先の福井で空襲を生き延びた人間として、何とか日米の間で「真の和解」ができないか。いつの日にか、米国の大統領が広島を、日本の首相が真珠湾をそれぞれ訪ね、鎮魂の花を捧げられないか考えた。

日本が広島にオバマ大統領を招き「被害者の顔」をしたことに対し、太平洋戦争で日本軍に侵略された国々は納得していない。日本が率先して韓国、中国など和解することが急務であり、安倍首相が果たしてこなかった「中韓和解外交」のチャンスでもある。安倍首相は甚大な被害を与えた中国の重慶や南京を訪れ、献花すべきだ。未来に向けた大きな一歩となる。

米中間には「相互確証破壊」(2つの核保有国の双方が、相手方から核先制攻撃を受けても、相手方の人口と経済に耐えがたい損害を確実に与えるだけの核報復能力を温存できる状態)が成立している。核戦争ができない間柄であり、これで結ばれた米中関係は日米間よりも深い。

現在、トランプ氏と安倍首相との関係よりも、トランプ氏と習主席氏との関係の方が実質的には近い関係と見るべきだ。米国では中国語を幼児に習わせる家庭が急増しており、トランプ氏の5歳になる孫も中国語を学んでいる。(日本は)米中の関係の深さを改めてかみしめるべきである。

南シナ海での「航行の自由」作戦をトランプ政権にいなって初めて実施したようだが、発表ではなく、極めて抑制された表現だった。

◆朝鮮半島分断の責任は米国にある

北朝鮮の核開発問題を巡る問題が大きな関心事となっているが、今日の朝鮮半島の分断の責任は米国にある。第二次大戦後(1945年)、米国には朝鮮半島をどうするかの準備や構想がなく、南北が分断された。最終的には自らその責任を負うべきだとの動きが米国内にもある。さらに、中国との和解に踏み出したドゥテルテ・フィリピン大統領は、日韓併合(1905年)と米国のフィリピン領有の承認(1904年)を取引した「日米の“古傷”」を問題にしている。

韓国に革新系の文在寅政権が誕生、南北対話を志向している。一方、現実路線をとるトランプ米大統領も金正恩氏に会ってもいいと言いだしたこともあり、この組み合わせに注目したい。

日本では北朝鮮のミサイル発射実験に緊迫し、アラート(警報)まで鳴るが、韓国では戦争気分はない。対話の可能性はゼロではない。北欧ストックホルムで米朝は接触しており、「和解」するチャンスがある。

東アジア情勢は和解へ向け、大きな展開を描く時代に入っている。(八牧浩行)