警視庁は6月5日までに、「グルメンピック2017」の開催を呼びかけ飲食店から出店料をだまし取ったとして、運営会社の大東物産(株)(TSR企業コード:300183526、東京都)の社長ら5名を詐欺容疑で逮捕した。逮捕されたのは、中井冬樹容疑者(社長)、大須健弘容疑者(前社長)、田邉智晃容疑者、矢野千城容疑者、高木信治容疑者。
 東京商工リサーチ(TSR)情報部は、逮捕直前の6月1日、中井容疑者、田邉容疑者、高木容疑者の3名に独占インタビューしていた。

インタビューに応じる中井容疑者(6月1日撮影)

インタビューに応じる中井容疑者(6月1日撮影)

 5日までに逮捕された大須容疑者と田邉容疑者、矢野容疑者は中学校の同級生で、高木容疑者は田邉、矢野両容疑者の知人だった。TSRは3月10日に公開した「破綻の構図」の中で、「グルメンピック2017」の出店概要書が、あるイベントの出店者向け資料に酷似していたことを指摘した。これは、矢野容疑者が経営していた会社が作成した資料をほとんど転用したためだった。
 大東物産の破産申立書によると、会場に予定されていた味の素スタジアムには、11月28日に270万円を支払っている。だが、首謀者の逮捕後の取材に味の素スタジアムは、「弁護士が入っておりコメントしない」としている。
 5名の逮捕を受け、「被害者の会」は6月5日午後4時30分から司法記者クラブで会見を開いた。会見では「5月30日、計8名で告訴状を提出した」ことが明らかにされた。

インタビュー内容

 インタビューは6月1日、午前10時30分から東京都港区で行った。主なやり取りは以下の通り(以下、敬称略)。

―「グルメンピック」を企画したきっかけは
田邉:矢野が、同級生だった大須と私でイベントをやりたいと考えていた。大須を社長にして、矢野が社長のW社を使うのではなく、一から作っていきたいと考えていたと思う。それで私が「大東物産」を買い取り、大須を代表にしてグルメンピックをスタートした。

―企画を主導したのは
田邉:企画は矢野。私は営業の立場、大須はお金の管理をしていた。
高木:企画書作成や会場の交渉を手伝っていた。(自分は)音楽関連会社のS社の社長だが、ほとんど動いておらず、S社はグルメンピックにも関わっていない。

―矢野や大須は偽名を使って営業活動していたとの話があるが
田邉:わからない。矢野にそういう業界だからねって言われるとそうなのかなと思っていた。

―TSRが入手したグルメンピックの概要書には、仮の「協賛・後援企業」の記載があった
田邉:記憶があいまいだ。矢野からイベント業界では仮や調整中はよくあると聞いていた。矢野と中井以外はイベントに素人で、企画については矢野に任せっきりだった。

―中井社長は100万円をもらって社長に就いたとされるが
中井:私は矢野の会社(W社)に勤めていて、(同社が企画した)お祭りイベントの経験があった。100万円も魅力だったが、前社長の大須より知識、経験があるので社長を受けた。大須より成功させる自信もあった。

―1月17日、グルメンピック開催延期の公表はだれが決めたのか
中井:延期を決断したの自分だ。矢野から助言を受けた。日付を変えて開催したいとの気持ちもあった。イベント会社から断られたというより、会社(大東物産)として進捗などの遅れがあり、一度白紙に戻そうと決断した。

―1月23日、返金のお知らせを公表したが、本当に返金するつもりだったか
中井:延期、返金した経験がなくパニックになっていた。夜中はこのまま死のうかなと思うぐらい追い込まれていた。矢野が策を講じていると思っていた。

―破産申請を決断したのは
中井:矢野の助言だ。正直びっくりした。返金しないといけない時期なので悩んだが、どうすることもできないので決断した。

―業務上のデータや経営幹部のLINEの履歴などが消されているようだが
中井:パニックになっていた時期で、(申込書など)シュレッダーにかけて処分した。矢野の方でデータ化していると思っていた。

―3,500万円の使途不明金があると債権者集会の資料で明らかになったが
田邉:大須の説明では1月10日、3,500万円を僕に渡したとしているようだが1月10日にもらったのは2,000万円。茶色のトートバックのなかに二つの封筒が入っていた。一つは中に1,000万円が入っていて、それは担当していた沖縄の人件費などに使った。残りの封筒の1,000万円は翌11日、矢野にイベント準備金が必要ということで渡した。ただ、矢野がその1,000万円を受領していないというならば、その封筒の中身が1,000万円でなかったということになり、そうなれば私が大須から1,000万円のみもらったことになる。

―資金の流れが不透明だが
中井:細かなお金の流れは調査中。大須の勘違いもあると思う。ただ、矢野や大須に任せっきりにしたのは責任を感じる。
田邉:大須の話は二転三転している。大須は経理担当として、宣伝広告費や交通費などの経費勘定科目の計上がゼロでズサンだった。言い方が悪いが、全部不明な点は私に(責任を)投げているのではないか。(経理担当の大須が)約1億円を東京で引き出している。現金が動くなか、経理経験もなく、勘違いもあったんじゃないか。1月中旬に延期を聞かされた後、1月27日フィリピンに妻の関係で行った。その後、中井がフィリピンまで来て、資金の流れを説明してほしいとヒアリングされた。看病で忙しかったが、中井から経緯を聞いて、日本に戻った。
中井:破産手続きの準備中から矢野と大須と連絡が取れなくなり、詳細がわからない。

―被害者の会は返金、刑事罰を求めているが
中井:本当に申し訳なかった。悩んだが、破産を決断した。チャンスがあれば、もう一回経営を勉強して、こういったイベントができたらなと強く思う。
田邉:できる範囲で考えられることを考えている最中だ。管財人や顧問の弁護士と相談して進めていきたい。
高木:ぼくからは(コメントは)ありません。

―社長としてなぜグルメンピックは開催できなかったと思うか
中井:私は会社の経営、社長職の経験が不足していた。以前、お祭りをやっていて楽しい気持ちがあり、出店者寄りの対応をしたかった。細かいところは大須、矢野に任せていたのが、開催できなかった要因だ。

インタビュー後記

 インタビューで3人とも「グルメンピック2017」の企画、経理は、矢野、大須両容疑者に任せていたと何度も話していた。まるで自分は無関係と言わんばかりだった。
 資金の流れで、「二つの封筒の中に1,000万円づつ入っていた」と話しながら、中身を確認していない。出店希望から集めた現金を確認せず無造作に扱うことは普通の感覚とかけ離れている。
 また、中井容疑者は「もう一回こういったイベントが出来たらなと強く思う」と話していた。実際に開催せず、508名の一般出店希望者に迷惑をかけた人間が真相も明らかにされない中、もう一度やりたいと話す感覚も違和感を覚える。

 今後は司直の手で事実が明らかにされる。インタビューの中で、田邉容疑者はTSRの「破綻の構図」(3月10日公開)を読んでいたことを明らかにした。「ちゃんと調べて書かれている。大がかりでずさんだったかも知れない。ただ、自分とは連絡つくじゃないか」と修正を求めたが、もちろんその場で修正を拒否した。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年6月7日号掲載予定「Weekly Topics」より再編集)


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