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米労働省が6月2日に発表した5月雇用統計の主な結果は、(1) 非農業部門雇用者数13.8万人増、(2) 失業率4.3%、(3) 平均時給26.22ドル(前月比0.2%増、前年比2.5%増)という内容であった。

(1) 5月非農業部門雇用者数は市場予想(18.2万人増)を下回る13.8万人増にとどまった。また、前月分と前々月分の合計で6.6万人が下方修正された結果、3ヶ月平均の増加幅は今年最低の12.1万人に落ち込んだ。米国の雇用拡大ペースにブレーキがかかり始めた様子が覗える。

(2) 5月失業率は市場予想(4.4%)を下回る4.3%に改善。4カ月連続の低下であり、2001年5月以来、16年ぶりの低水準を記録した。ただし、労働参加率が前月の62.9%から62.7%に低下しており、労働力人口の減少が失業率低下の主因と見られる。なお、不完全雇用率(やむを得ずパート職に就いている者などを含めた広義の失業率)も2007年11月以来の8.4%に低下した。

(3) 5月平均時給は26.22ドルとなり、前月の26.18ドルから予想通りに0.2%増加。ただ、前年比の伸び率は2.5%と予想(2.6%)に届かなかった。米平均賃金は漸増基調を維持しているが、伸び率はこのところ鈍化傾向にあるようだ。

米5月雇用統計は、市場にとってやや期待外れの結果であった。米株式市場こそ発表後も底堅く推移したが、米国債市場で10年物の長期金利が2.15%前後に低下して今年の最低水準を記録した。また、ドル/円が1円以上下落するなど外国為替市場ではドル売りが活発化した。先行指標である米5月ADP全国雇用者数が25.3万人もの大幅増となった事で非農業部門雇用者数も予想を上回るという期待があったのは事実だが、市場が問題視したのはおそらくそこではないだろう。失業率が歴史的水準に低下した事は、失業者が大幅に減少した事とほぼ同義であり、失業者が少なければ雇用者が増えないのは、むしろ当然と言えるかもしれない。

今回、市場が最も失望したのは米雇用市場が「完全雇用」に近い状態にあるとされながらも、賃金の上昇率が加速しなかった点だろう。賃金上昇圧力が低いままでは、個人消費やインフレ率が加速する公算は小さい。その結果、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げは、ペースダウンする事はあってもアップする事はないとの見方が広がりやすい。実際に、米短期金利市場が織り込む6月利上げの確率は9割前後で5月雇用統計の発表後も目立った変化はなかったが、7-12月に1回以上の利上げが行われる確率は5割以下に低下した。つまり、今月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が年内最後の利上げ発表の場になるとの見方が優勢になりつつあるという事になる。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya