外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2017年5月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円相場5月の振り返り】

5月のドル/円相場は110.235〜114.362円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.7%の下落(ドル安・円高)となった。上旬は、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明などから6月利上げが確実視される中、原油高と株高の「リスクオン」ムードにも支えられて約2カ月ぶりに114円台を回復した。ところが、中旬に差し掛かると米国の大統領にロシア関連疑惑(ロシアゲート)が持ち上がり110円台へとドルが急落。その後は大きく下落する事はなかったが、米長期金利が低位に留まる中、ドルの上値は限られた。ロシアゲート問題の影響で大統領が掲げる税制改革やインフラ投資などの刺激策の実行が遅れるとの見方や、インフレ率の上昇が鈍い事から、FOMCの利上げペースが鈍るとの見方が広がり、ドルの上値を抑えた。

【ドル/円相場6月の見通し】

6月13-14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが行われる確率(短期金利市場の織り込み度合い)は90%前後と極めて高い水準にある(5月31日時点)。利上げは「ほぼ確実」の状態にあるにもかかわらず、米長期金利(10年債利回り)が2.20%前後の低位に留まっており、日米金利差の観点からドル/円相場の重しとなっている。6月のドル/円相場は、FOMC後に、米長期金利が上昇基調に復するのか、続落するのかがカギを握る事になりそうだ。

足元で米長期金利が上昇しない背景には、トランプ政策実施への不透明感に加え、利上げペースの鈍化観測がある。米インフレ率の伸びが鈍り始めた事で、今年後半の利上げが見送られるとの観測も浮上しており、7月以降の年内の追加利上げ確率は50%を下回っている。FOMCが3月会合で示した年3回の利上げ見通しを維持するかどうかが、今回のFOMCにおける第1の焦点となろう。

年内に「あと一回」以上の利上げ見通しが示されれば米長期金利とドルが上昇する公算が大きい。第2の焦点は米連邦準備制度理事会(FRB)のバランスシート縮小に関する決定だろう。FRBは、金融危機後に市場から買い入れた資産の規模を、満期到来分の再投資によって維持してきたが、4.5兆ドルに膨らんだその資産を徐々に圧縮する方針を示している。仮に今回のFOMCで縮小が決まれば、圧縮ペースにもよるが長期金利の上昇要因となり得るだろう。6月のドル/円相場は、米国の金融政策に左右されるという、いわば「原点回帰」の展開が見込まれる。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya