現代版「孫子の兵法」はないのか クレディセゾンの戦略から考える

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 現代版「孫子の兵法」はないのか。

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 『こども孫子の兵法』(齋藤孝著、日本図書センター)を見読(よんだ)。分かりやすかった。これまでにも企業経営者の何人かから「孫子の兵法と企業経営」式の自著を頂いたが、正直、積読が殆どだった。しかし、今回は「なるほど、企業経営にも役立つ」と実感した。と同時に「現代版:孫子の兵法だってあるぞ」と痛感した。

 孫武の作とされる「孫子の兵法」は、中国の春秋時代に書かれたというから紀元前500年頃である。確かに「こども孫子の兵法」で知った限りでも、現代の企業経営の在り方に通じる「活かせる」ことが多い。その意味では孫武なる御仁には最大の賛辞を贈りたい。しかし現代の経営者が言動で示し、記したものにも「勝つための兵法」と呼ぶに値するものはある!

 例えば「バブル酒の影響を受けなかった」貸金業者がいた。クレディセゾン元会長・社長を歴任し2003年に71歳で他界した、故竹内敏雄氏である。こども孫子の兵法は、戦いに勝つには「己を徹底的に分析し知ること」であり「敵を研究し尽くすこと」と教えていた。

 クレディセゾンの事業は、セゾングループの専用カードビジネス。貸金事業といっても1件当たり数万円が常。そんな状況下で目の前に、1件数十億円・数百億円、しかもメインバンクから資金が付いた「不動産関連融資」が相次いで舞い降りてきた。竹内氏はどうしたか。「新しい事業を手掛けるかどうかは『実験』と『研究』の結果で断を下す、というのが僕の譲れない哲学なのですよ」と聞かされた。

 現に1回だけ「失敗しても屋台骨に影響ゼロ」という案件に手を出した。だがほうほうのていで逃げ出した。「不動産の複雑な利権に手を焼いたこともあるが、銀行は絡んでいる業者の通帳を手にしているから資金の流れが掴める。我々にはその手だてがない。これは我々の商売じゃない、と痛感した」とした。

 また「実験」に着手すると決めるのと同時に、社長室のスタッフに「海外の著名ノンバンクの躓きの歴史を調べるように」と命じた。実験から逃げ出すことを決めるのとほぼ同時に、こんな「研究」の結果が提出された。「外国の破綻したノンバンクの原因を調べた結果、8割までが不動産関連投資が引き金です」。

 爾来、竹内氏は社内に「俺の目が黒いうちは、銀行がどう強圧的に出てこようと不動産関連融資はやらない」と命じ貫いた。バブル崩壊後もンンバンクにあって皆無な「8期連続増益」はこうして実現された。

 事態を知り尽くす「あらゆる手立てを講じた」からこそクレディセゾンは、バブルとの闘いに勝利したのである。堂々たる「兵法」といえよう。