このところ仮想通貨ビットコインの価格が乱高下している。これまでビットコインは主に中国人投資家が購入していたが、最近の急激な価格上昇は日本人投資家による影響が大きい。投機性の高いFX(外国為替証拠金取引)から投資家の一部が流入しているともいわれるが、そもそもFX取引をここまで積極的に行う国民も珍しい。日本人は、実は相当な投機好き(もしかしたらギャンブル好き?)の国民なのかもしれない。

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発行上限があるビットコインは価格が高騰しやすい

 ビットコイン取引は、もともとボラティリティが高かったが、それでも昨年(2016年)後半までは1BTC(ビットコイン)あたり5万〜10万円程度の範囲で価格が推移していた。しかし今年に入って価格は急上昇し、1BTC=10万円を突破。4月後半には15万円、5月には何と一時30万円を突破した。

 ビットコインはインターネット上に流通する仮想通貨で、既存通貨のように発行元になる国家や中央銀行が存在していないことが最大の特徴となっている。仮想通貨に関して、いわゆる電子マネーと混同している人が多いが、仮想通貨と電子マネーとは根本的に異なる存在である。

 電子マネーはあくまで既存通貨がベースであり、これを電子的に置き換えたものに過ぎない。既存通貨を使って電子マネーを購入したうえでICカードなどの媒体に保存しているだけだ。しかし、ビットコインはそれ自体が通貨であり、存在そのものに価値がある。既存の通貨を置き換えたものではないという点で根本的に異なる存在といってよい。

 ビットコインは、コインの発行総量について構造的な上限が決められており、一定量以上の発行は不可能な仕組みになっている。新しくコインを生み出すには、ビットコインの取引を管理するシステムに対してコンピュータの計算能力という「労働力」を提供しなければならず、この作業によって新しい価値が生み出される。経済学でいうところの投下労働価値説と金本位制の概念をうまくミックスさせたようなものだ。

 このためビットコインは、不必要にコインが発行されて貨幣価値が毀損するリスクは低いが、通貨の量が簡単には増えないため価格が高騰しやすい。一連の価格急騰にはこうした側面があるわけだが、金に近い存在と考えればそれも納得できるかもしれない。

このところの価格上昇は日本人投資家によるもの

 ビットコインが生まれた当初は、投機対象としての利用がほとんどだったが、しばらくすると、資金の避難先としてのニーズが強くなってきた。ここ1〜2年におけるビットコインの価格上昇は中国人投資家によるものといわれており、純粋に投機目的の人もいるが、国外への資金流出ルートとしての利用が多かった。

 中国人の一部は、自国の通貨制度を信用しておらず、ビジネスなどで得た資産を海外に避難させたいというニーズが一定数存在する。香港のビットコイン取引所などに口座を開設し、香港経由で資金をビットコインに両替していたとされる。

 ところが中国当局が資金の国外流出に神経質になり、規制を強化したことで香港経由での資金流入も一段落。これで相場の上昇も終了するかと思われたが、価格はさらに上昇を続けている。ここ最近、ビットコイン価格を急激に押し上げているのは、日本人投資家による積極的な買いである。

 ここ1〜2カ月の値動きを見ていると、円建てのビットコイン取引価格がドル建ての取引価格を大きく上回るケースが目立つ。ビットコイン市場にドル円の為替レートを気にしない投資家、つまり円ベースでしか取引しない日本人投資家が大挙して押し寄せている可能性が高い。このところFX(外国為替証拠金取引)の取引量が減少していることを考え合わせると、これまでFX取引を行っていた個人投資家の一部がビットコインにシフトしたとみてよいだろう。

 ビットコインに関する法整備が進められたことも投資拡大に影響している。当初、日本政府はビットコインを通貨として認めず、モノとして扱うことを決定してしまった。しかし各国はビットコインを通貨として法整備する方向に進み、日本政府もあわてて方針を変更。今年の4月に改正資金決済法が施行され、金融庁の監督の下、ビットコインは準通貨として利用できるようになった。

 取引のネックになると懸念されていた消費税についても課税が撤廃されたことで、国内のビットコイン取引には制限がなくなった。関連の法整備が進んだことで、積極的に取引する投資家が増えた可能性は十分に考えられる。

ハイリスクの投資にこれだけ熱中する国民も珍しい

 もちろん一連の法整備は投機的取引を促すためのものではなく、決済通貨としての利用を想定したものだ。実際、法整備が進んだことを受けて、ビットコイン決済を導入する企業も増えてきている。

 家電量販店のビックカメラは仮想通貨事業を手がける株式会社ビットフライヤーと提携、4月から有楽町店など2店舗でビットコイン決済の試験導入を開始した。リクルートライフスタイルは外食や小売店舗向けに中国の「アリペイ」や「LINEペイ」に対応する決済サービスを提供しているが、今年の夏からはビットコインによる支払いを追加する。またLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションも年内にビットコインによる支払いに対応する予定となっている。

 しかしながら、各社が主な利用者として想定しているのはビットコインを決済通貨として用いる外国人観光客であって日本人ではない。日本ではビットコインというともっぱら投機目的というイメージが強いのが実情だ。

 このような状況を考えると、「日本人は堅実で投資嫌い」というステレオタイプなイメージは少し疑ってかかった方がよいかもしれない。

 日本ではFX取引はメジャーな存在となっているが、ここまで投機性の高い商品にごく普通の個人投資家が手を出す国というのは実は非常に珍しい。世界におけるFX取引の過半数が日本人によるものといわれており、国際的に見ると日本人のFX好きは突出している

 米国人は国際的に見ても投資好きでリスクに対して果敢に挑むというイメージがあるが、一般的な米国人でFXのようなハイリスクの商品に手を出す人はほとんどいないのが現実だ。

健全な市場育成が重要

 同じような傾向は、住宅ローン商品についても見て取れる。日本の住宅ローンは、住宅そのものではなく、借り手に対する融資というニュアンスが強く、もし返せなくなった場合には、最悪の場合、自己破産を迫られるという極めてリスクの高い商品である。

 一方、米国の住宅ローンはノンリコースと呼ばれるタイプが主流で、融資は購入する住宅に対して付与される。このため、借り手がローンを返済できなくなった場合でも、家を銀行に返せばそれでローンからは解放される。米国において住宅ローンがきっかけで破産するのは、多重債務になっている場合がほとんどであり、住宅ローン単体で破綻するというケースは少ない。

 おそらく一般的な米国人が見たら、日本の住宅ローンはあまりにもリスクが高く、とても怖くてローンを組むことはできないだろう。ところが日本では、こうした状況などお構いなしに、多くの人が気軽に住宅ローンを組んでいる。少なくともリスクに対する考え方に大きな違いがあることは間違いない。

 筆者は、一貫して仮想通貨の取引拡大は経済に大きなメリットをもたらすと主張してきており、日本でのビットコイン取引拡大についても肯定的に捉えている。ただ、日本人には意外な投機性があるという現実を考えると、手放しで歓迎するわけにはいかない。

 最近ではビットコインの価格高騰に関する話題が、投資に関心のない層にまで広がっており、一部では仮想通貨への投資をうたった詐欺まがいの行為も散見されるようになっている。健全な市場が育成されるよう、正しい情報を普及させることが重要だろう。

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筆者:加谷 珪一