新方式によるパナソニック環境エンジニアリングのバラスト水処理装置は、既存の船にも、これから建造される船にも、どちらにも適用できる。設置スペースによって、キーコンポーネント(中核装置)の場所は、フレキシブルに配置できる。パイプの中で全ての仕事を完結させる一気通貫の処理システムだからこそ、それが可能になっている。 写真提供:パナソニック環境エンジニアリング

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 5月末に愛媛県今治市で開かれた「バリシップ2017」。船(船舶)の“国際見本市”のようなこのイベントに、見慣れない企業がブースを出していた。家電メーカーのパナソニックの関連会社、パナソニック環境エンジニアリングだ。なぜ、「陸」の会社であるパナソニックの関連会社が、「海」の見本市に乗り込んできたのか。

 今年で5回目となったこのイベントに“畑違い”の同社が参加したのは、数年越しで開発した「バラスト水処理設備」を地元の今治造船グループを初めとした業界関係者たちに大々的にお披露目するためだった。

 パナソニック環境エンジニアリングは、1976年に旧松下精工の事業部門から分離・独立し、水や空気、土壌の浄化など環境エンジニアリングを手掛けている。そのルーツは1909年(明治42年)に国内で初めて扇風機を製造したメーカーだ。なんと、1918年(大正7年)創業の旧松下電器産業(現パナソニック)よりも古い。

 創業108年目にして、陸から“大海原”に乗り出すことを決断したのは、バラスト水処理設備で独自の技術を開発することに成功したからだ。

 ここで、バラスト水について説明しよう。

 バラスト水とは、船のバラスト(底荷=船底に積む“重し”)として使われる水のことを指す。通常、貨物船は、“空荷”の状態で出発するのではなく、港で大量の海水を積み込んでから目的地へ向かう。海水の重みでバランスを取りながら航行するためだ。目的地に着いたら海水を港に排出し、今度は荷物の重みでバランスを取りながら帰っていく。

 このバラスト水は、かつては寄港した先で捨てるのが当たり前だった。ところが、1970年代以降、世界各地で海水に含まれる微生物などが生態系を破壊するケースが報告されるようになった。例えば、日本の瀬戸内海で、地中海原産のムール貝が大量に発生するなど、世界中で“ありえない事態”が続出していた。

 そこで2004年2月には、国際海事機関(IMO)が「バラスト水管理条約」を定めて、海へ排出する前に化学的にバラスト水を処理する専用設備の導入を義務化するなど、地球規模での環境保全の動きが出てきた。

 この条約は、「締結国が30ヵ国以上、その船腹量の合計が世界の海を航行する商船全体の35%に達すること」などが発効の条件だった。

 しかし、船舶会社からすれば、設備の導入には高額なコストがかかる上に、貨物の積載スペースが減ることになる。さらに、なかなか具体的な規制の中身が見えてこなかったことも影響し、10年以上にわたって条件が満たされなかったのだ。

 今年9月、条約がようやく発効の運びとなり、既存の船にも、今後に建造される船にも、ユニット当たり3000万円以上かかる設備の導入が義務付けられることになった。それがないと、海に出ること自体ができなくなってしまうほど強制力がある。

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