イケメンのゴリラに惹かれた人がいたのかも

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人間ではほぼ陰毛にしか生息していないシラミの一種「ケジラミ」はもともとゴリラの体毛に生息していたが、人間とゴリラの「密接な接触」によって人間の陰毛に移ってきた――2017年5月30日ごろツイッター上で話題となった話だ。

人から人へのケジラミの感染は性行為時であるとされており、この感染ルートとゴリラから移ったという話が事実だとすれば......なかなか恐ろしい想像をしてしまう。

チンパンジーとゴリラ、それぞれのシラミが人に

発端は、あるユーザーが書き込んだツイッター上で微生物を取り扱ったドキュメンタリー番組を見ていたというツイートだ。番組では

「髪の毛に付くアタマジラミと、下半身に付くケジラミは、昔は近縁種だと思われていたが、まったく別の種類の生き物という謎がある」

というテーマが紹介され、その結論として登場した科学者たちが「ゴリラの毛はとても固く人間の陰毛に似ている」「ゴリラの祖先と人の祖先がシラミが移るほど接近したのだろう」とコメント。一部の科学者は「性行為だったのでは」とまで答えたとしツイッターでは「古代にゴリラと人間は性行為をしていたのか」「昔から性的嗜好はいろいろ」と話題になった。

これだけでは単なるジョークかと考えてしまうが、実は2007年に医学・生物学系のオンライン学術雑誌「Bio Med Central」に「Pair of lice lost or parasites regained: the evolutionary history of anthropoid primate lice.」という論文として掲載された、れっきとした研究結果に基づく話なのだ。論文発表後この説は広く受け入れられており、ナショナルジオグラフィック誌なども人のケジラミの起源として取り上げている。

 

この論文によると、人に寄生するシラミのうち頭髪に生息する「アタマジラミ」はチンパンジーに寄生するシラミと近い種なのに対し、陰毛にのみ生息するケジラミはゴリラに寄生するシラミと近い種で、なぜ異なる種類のシラミが人に生息しているのかが謎だったのだという。

分析によってアタマジラミの祖先はもともと人とチンパンジーの共通の祖先に生息しており、600万年前に両者が別の種になったときアタマジラミも別種に分かれたことが確認された。しかし、ケジラミを分析したところ、ゴリラと人のケジラミが別種になったのは3〜400万年前と推定されるのに対し、ゴリラと人間が共通の祖先から分かれたのは700万年前と、別れた時期が一致しない。つまり、ゴリラと人がわかれた後に何らかの形で両者が接触し、ゴリラからケジラミが人間に移った可能性が高いということだ。

性的接触の可能性は低い

ゴリラとチンパンジー、人に共通の祖先にはもともと2種類のシラミが存在しており、人にのみ2種類が残ったのではないかとの仮説も成り立つのではないだろうか。分析によるとゴリラと人のケジラミは「共通の祖先から分かれた」のではなく、「ゴリラのケジラミから人のケジラミに分かれた」ことが示唆されており、この仮説の可能性は低いようだ。

では、ゴリラと人の間にどのような接触があったのだろうか。シラミは強固に毛にしがみついているため体毛に触れた程度では移るとは思われにくい。とすれば性行為かとも想像してしまうが、前述の論文ではそう結論付けられておらず「ゴリラの死体などを片付けた際に陰毛と体毛が接触した」「ゴリラが放棄した巣穴を寝床として利用していたため、その場に残っていたケジラミが移った」などの可能性を挙げている。

今後動物園でゴリラを見るときは、少し違った視点で観察することができるかもしれない。