福島東との県決勝、自信1点目を決める加野(15番)。さらに1点を加え、大事な一戦で本領を発揮した。写真:小林健志

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 今夏、宮城県で開催されるインターハイの地区予選が佳境を迎えている。6月3日、福島県予選の決勝、尚志-福島東の一戦が21世紀の森公園いわきグリーンフィールドで行なわれ、尚志が6-0で勝利。8年連続10回目のインターハイ出場を決めた。
 
 昨年と同じカードとなったが、立ち上がりから攻勢に出たのはやはり尚志。開始2分、この日は左サイドバックに入ったMF松本雄真がキャプテンFW中井崇仁とのワンツーからDFライン背後に抜け出し、落ち着いてゴールを決め、幸先良く先制した。
 
 そして直後の4分、試合の流れを大きく決定づけるゴールが生まれた。ゴール前での混戦から左サイドに展開し、中井がクロスボールを供給。ボールを受けたのは、MF加野赳瑠。冷静に右足を振り抜き、相手GKの股を抜くシュートをゴールへ流し込んだ。開始早々の2点目で、福島東に大きなダメージを与えた。
 
 25分にボランチのMF石井龍平がミドルシュートを決め、30分にはMF宗方司のクロスボールがこぼれ、右サイドからカットインしていた加野の元へ。「良いミートができて、相手に当たってコースが変わりました」というボレーシュートがゴール右へと突き刺さり、この日2点目。前半だけで4-0とし、試合を決めてしまった。
 
 後半にもMF染野唯月のゴールをアシストするなど、加野の勢いは止まらない。前日の準決勝から臀部の傷みがあったため、52分でピッチを後にしたが、尚志のエースは大きなインパクトを残した。
 
 昨年度は2年生ながら背番号10を担い、攻撃の核として活躍した加野だったが、新チームにとって初めての公式戦となる東北高校新人サッカー選手権大会は右足首を傷めて欠場。2月末にはチームに戻れたが、「最初はうまく身体が動きませんでした。身体をもっと強くしたいと思い、ウエイト(トレーニング)を多めにやったら、身体が重くなってしまいました」と、なかなかコンディションを戻せずにいた。
 
 プリンスリーグ東北が開幕すると、用意された背番号は10ではなく15。エースナンバーはキャプテンの中井がつけることになった。「ショックだった」。悔しさを胸にプリンスリーグを戦う加野だったが、やはり思うような結果は得られず、インターハイ予選でも背番号は15のままだった。そしてここでも、準決勝までは得点が取れていなかった。
 
「そろそろ決めないとスタメンも落ちるかな、と思っていました。絶対決めてやろうと思って臨みました」
 
 ゴールに飢えていたエースはようやく結果を残し、安堵の表情を浮かべた。
 加野の背番号を10に戻さない決断を下した仲村浩二監督は、「今大会はコンスタントに違いを作っていくれていましたが、ゴールに関してはこの決勝が初めて。去年から試合に出ているのに、1得点しか決められない。そこが彼のぬるさ」と厳しい評価を下した。そしてこう付け加えた。
 
「得点を決めなければやばいという気持ちが出て来ているはずで、チーム内の争いが大事です。次のことを考えて、競わせていきたいですね」
 
 今シーズンはポジション争いがより激しくなっており、加野に代わってナンバー10を背負った中井も準決勝でハットトリックと結果を出している。インターハイ本番で10番を取り戻せる保証は、まったくない。
 
 厳しい競争の渦中にいる加野はインターハイ本大会での飛躍を誓い、気を引き締める。
 
「これから強いチームと当たるので、周りともっとプレーを共有して突き詰めていきたいです。できるだけ点を取ってもっと注目されたいです。行ければプロを目指したいですし、大学に行くにしても大事になってきますので、アピールできたら良いと思います」
 
 どんな状況でもチームを救えるゴールやアシストを決めるほうが、インターハイ本番で何番を背負うかよるもはるかに重要だ。真のエースになるため、試練の時を迎えた加野。この日の2ゴールをエース復活の序章としたい。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)