映画「パパのお弁当は世界一」ワンシーン。父を演じたTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美(右)と娘を演じた武田玲奈(C)2017「パパのお弁当は世界一」製作委員会

 先日、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美が初主演した映画『パパのお弁当は世界一』(6月10日)を試写した。渡辺の味のある演技に心を掴ままれ、娘を演じた武田玲奈の表情にグッときた。

 高校に通う娘のために、在学三年間、父親が弁当を作り続けた実話がもと。腕を振るった最後の弁当に感謝の手紙を添えた父。その娘もまた、空の弁当箱に手紙を添えて父への感謝を送った。

 娘はこのやりとりをツイッターに投稿した。瞬く間に話題の輪を広げ、8万リツイート、28万件の「いいね!」を記録した。その反響を受けて映画化されたのがこの作品だ。

 父を演じるのは、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺。娘は、いまをときめく若手女優の武田。そして、主題歌は片平里菜の「なまえ」。3人とも同郷の福島県出身だ。

 約75分間の物語。淡々と進む描写はごくある日常を映し出していた。訛りが残る渡辺の語り口もリアルさを与えていた。場面は家、学校、会社、通学路、商店街と限られたものだったが、弁当を紡ぐ親子の絆や成長を的確に捉えていた。

 渡辺もインタビューで「親が偉いのではなく、娘が偉い」と語っていたが、不味くてもしっかりと食べる娘の姿に心を摘ままれた。一方、父の姿や思いには頭が下がる思いだった。

 渡辺は前記の取材で「食育」が大事とも語っていた。その真心を込めた弁当はその時は感じなくても何年か後に有り難みとして込み上げてくる。

 記者も、高校時代の母が作った弁当を思い返した。学内の購買所で購入した“お洒落な”パンを頬張る友人の姿に憧れることもあった。当たり前にあった弁当。実はどれだけ時間を割いて作っていたのだろうと、渡辺演じる父の姿をみて思うのであった。胸が痛い。

 ところで、今回監督を務めたのは多くのミュージックビデオ(MV)を手掛けるフカツマサカズ氏。物語映画は初めてだという。MVの面影は所々の描写に出ていた。そして、それは音楽にも。

 主題歌を歌う片平は、曲に込めた思いを伝えるために、大事なアコギは使っていない。そのアコギを使ったBGMを、映画の前編に持ってきているのはやはり音楽監督のはからいか。

 そして、エンドロールで流れるその歌は、あれ以来、耳から離れない。<おぼえたての〜♪>から始まる歌はノスタルジックさを感じさせ、彼女の歌声とメロディは、木々や夕陽などの香り、人のぬくもりを運んでくる。歌詞だけでなく、歌声、曲そのものもこの映画に繋がっている。片平が語っていた「伝えるために歌っている」という真意が、エンドロールからも感じられた。

 改めて、親子の繋がりを考えさせられた作品だった。『パパのお弁当は世界一』(配給=ポニーキャニオン)は6月10日にヒューマントラストシネマ渋谷で公開される。なお、渡辺俊美のインタビューは後日掲載予定。(文・木村陽仁)