5月23日にこの世を去った、3代目ジェームズ・ボンドことロジャー・ムーア卿。ユニセフの親善大使としても25年以上活動していた彼のために、ひとりのファンが呼びかけた募金活動が心温まる結末を迎えた。

ジェームズ・ボンドにサインをもらったはずが…

寄付を呼び掛けたのは、現在ライターとして活躍しているマーク・ヘインズ氏(41)。ジェームズ・ボンド作品を映画で見て、大ファンになった7歳のころ、彼はジェームズ・ボンドとある秘密を共有した。

祖父とニースを訪れた時のこと、彼はニース空港の出発ゲートで新聞を読んでいるジェームズ・ボンドを発見して、サインをもらった。

しかし、そのサインには“ジェームズ・ボンド”ではなく、見知らぬ名前“ロジャー・ムーア”と書かれていたのだ。

ジェームズ・ボンドもロジャー・ムーアも全く知らない祖父は、「違う名前を書いていますよ。孫はあなたを“ジェームズ・ボンド”さんだって言っていたんですが」とロジャー・ムーア卿に確認したという。

ボンドと秘密を共有

するとジェームズ・ボンドはヘインズ氏を手招きし、辺りを見渡した後でこう言ったのだ。

「ロジャー・ムーアってサインをしなくちゃいけなかったんだ。そうじゃないと、ブロフェルド(ボンドが戦っている相手。世界征服を狙う悪者)に居場所がばれてしまうからね。このことは誰にも言うんじゃないよ」

こうして7歳のヘインズ少年は、ジェームズ・ボンドと秘密を共有し、ロジャー・ムーアと書かれたサインを手に入れたのだった。

「寄付してくれたら、彼のサインを見せるよ」

ロジャー・ムーア卿が亡くなったあと、ヘインズ氏はこのエピソードをtalkRADIOで紹介。すると「いい話だ」とTwitterで拡散された。

この反響を受けて5月25日、ヘインズ氏はこんなツイートを投稿した。

▼「古いサイン帳を見つけたんだ。1983年におじいちゃんの航空券にもらった、ロジャー・ムーアのサインも入ってる」

そして「もしみんながユニセフに寄付してくれて、合計1,000ポンド(約14万2,857円)になったら、そのサインを公開するよ」と続け、寄付先のURLを掲載した。

5時間ほどで1,000ポンド達成

するとたった5時間ほどで目標金額の1,000ポンドに到達。サインが公開された。

さらにその翌日には目標金額の2倍にあたる2,100ポンド(約30万円)が100人以上から集まり、ユニセフに寄付されることとなった。

ユニセフでの思い出

実はこのサインには、後日談がある。大きくなって脚本家として活動していた30歳のころ、ヘインズ氏はユニセフの仕事で、ロジャー・ムーア卿と再会を果たしたのだ。

当時の話をすると「覚えていない」と言われたものの、とても喜んでくれたという。

そして撮影後、廊下でヘインズ氏に会ったムーア卿は、眉毛を吊り上げるとこうささやいた。

「もちろんニースでの話し合いは覚えているよ。でもみんながいる場所では言えなかったんだ。あそこにいた誰がブロフェルドの手下かわからないじゃないか」

このセリフには思わず7歳のころのように喜んだそうだ。

感謝の言葉が届いた

想定の2倍以上の寄付金が集まって喜んだヘインズ氏。そして彼の行動をある人々を喜ばせた。

▼「ありがとう。ムーアの家族より」

ロジャー・ムーア卿のオフィシャルアカウントから、ヘインズさんに向けて感謝の言葉が寄せられた。ツイートしているのは、ムーア卿のエージェントを務めていたガレス・オーウェン氏だ。

▼「マーク、これはすばらしいよ! 思い出を分けてくれて、そして危機に面した子どもたちを救うために、これほどの金額を集めてくれてありがとう」

ユニセフ UKからもメッセージが寄せられた。

亡くなった後でも、ファンを動かし続けるロジャー・ムーア卿。彼はジェームズ・ボンドに匹敵するヒーローなのかもしれない。