理想のパパになれない父親たち

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著:Kevin Shafer(ブリガムヤング大学 Associate Professor of Sociology; Faculty Affiliate in Social Work)

 どこの家庭の父親も母親も頑張っている。ピュー研究所の最近の調査によると、有給の労働時間を家事や育児の時間と合わせると、アメリカの母親と父親の労働時間はほぼ同じだという。

 また、同調査によると、父親は以前より家庭での時間を増やすようになっているという。しかし、多くの社会科学者が育児における不平等は根強く残っていると主張している。この不平等の原因は、父権制に基づくジェンダー・イデオロギー(両親の子どもたちへの接し方や家庭において男性と女性が担う役割に影響を与える力の原動力)だと、一部の研究者と評論家は主張している。

 父親であることと男性の健康に注目する研究者として、自分の研究がより複雑な実態を示していると私は考える。従来のジェンダーに対する姿勢や考え方はこの話題の重要な要素ではあるが、父親と母親の間の不平等は意見や夫婦間のコミュニケーションだけが原因で起こるのではない。

 もっと育児に関わりたいと、父親たちはしきりに研究者に話すが、公共政策や社会制度が望む父親像から彼らを遠ざけている。――そして、母親、父親、子どもたちを傷つけている。

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◆「マジック・モーメント」を逃すな
 出生前診断に父親を参加させることは、父親を積極的な育児の軌道に乗せる助けとなる強力な手段として期待できる。私は最近、人生におけるこの「マジック・モーメント」(魔法の瞬間)に父親を関わらせることの重要性を強調したソーシャルワーク研究者のシンポジウムに参加した。

 出生前診断に積極的に参加する父親は、より強い「父親としての」アイデンティティを自分のために形成する、誰の目から見てもいい親だ。事実、出生前期の影響は、既に子育てに参加する可能性が低い父親たちにより強く見られる傾向がある。

 しかし、父親たちは出生前診断から積極的に締め出される傾向がある。父親が生まれてくるわが子に関われるように医師と看護師が手助けする仕組みが備わっている産婦人科はほとんどない。例えば、超音波室には、父親が初めてわが子の姿を見られるスペースが設けられていないことが多い。一般に、産婦人科医は母親と子どもの健康を強調する。――家族という制度の他のメンバーを除外して。

 出産準備講座も同様に、協力してくださいねと父親たちに言うものの、父親の役割について話すことはほとんどない。

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◆子どもが生まれてから
 子どもが生まれてからも、家族の健康と幸せは重要だ。父親も、母親と同様、産後うつを経験する可能性がある。そして、親になろうと必死で努力する。最近では、小児科医が母親の産後うつに対処する上でより実質的な役割を果たしているが、父親が同じように注目されることはほとんどない。

 このような医療関係者からのサポート不足は、いずれ家庭崩壊につながる可能性がある。私の研究で、親になることで母親と父親のメンタルヘルスに同様の悪影響があることが示唆されている。事実、場合によっては、父親の方が母親よりうつを経験しやすいことがわかっている。

 父親のメンタルヘルスに目を向けないのは問題だ。母親のうつと同様、父親のうつは幼児期やその先に悪影響を及ぼす。

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◆職場が最も重要である理由
 父親が子育てに関わることへの障害は医療だけにとどまらない。家庭と仕事を両立するために多くの母親と父親が奮闘している。どちらかを優先するよう強制する社会や個人の方針が、しばしばこの問題の原因となっている。

 アメリカは、有給の産前産後休暇を保証していない世界で唯一の先進工業国だ。さらに、父親の有給育児休暇を実施しているのはアメリカの雇用主の20パーセント以下で、父親と母親のどちらが家にいるかを選択できる家庭はほとんどない。一方、ヨーロッパには、父親の育児休暇を義務付けている(フランスやイギリスなどの)国もある。

 寛大な家族休暇制度は、家族の健康、父親と母親の幸せ、職場での男女平等にプラスの影響を与えることが調査でわかっている。

 しかし、このような福利厚生だけでは十分ではない。例えば、仕事や評判へのダメージを考えて休暇やフレックスタイムを利用しない男性は多い。ブリガムヤング大学の同僚と共同で行った私の研究は、父親にとっての職場文化とその重要性に注目している。2歳から17歳までの子どもを持つ父親から集めたデータによると、家族との関わりを奨励する文化や方針がある企業で働いている場合、育児に消極的な父親でも子育てをし、献身的なよい親であることがわかっている。

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◆構造的な壁が家族全員を傷つける
 父親は、母親同様、子どもの成長と学習をサポートできる。父親がいる家庭の子どもたちが、献身的でやさしいイクメンのパパから恩恵を受けるのは明らかだ。また、母親も、家庭と仕事の両方で子育ての負担を共有してくれるパパから恩恵を受ける。

 明確で一貫した強力なサポートを父親に提供しなければ、より公平な子育てへの道は開けない。私の研究でも、他の多くの研究でも、父親が家庭でもっと子どもの世話を引き受けるためには、家族と深く関わるためのツールが提供されなければならないことがわかっている。これが実現すれば、親に求められる期待が均等に分散されるだけでなく、男性を制限する上に女性を軽視する、制限だらけの性別の垣根が取り除かれる。

 今まで以上に子育てに関われるよう父親をサポートしてきた変化は評価する。しかし、それでは不十分だ。家庭における父親の重要性、そして、職場において女性が果たす重要な役割を重んじる文化的政治的変化が必要なのだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Naoko Nozawa