2011年3月11日の起きた東日本大震災から、すでに6年以上の月日が流れた。伝わる情報を見聞きする限りは着実に復興が進んでいるように見えるが、街を復興していくうえで大きなカギとなる公共交通機関の復旧は、はたして順調に進んでいるのだろうか? 前回に引き続き、公共機関を中心とした東北地方の現状についてお伝えしていこう。

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気仙沼線・大船渡線は新たにBRT路線として復旧

一方で宮城県の南三陸沿岸を通る、気仙沼線と大船渡線も津波の大きな被害を受けた。こちらは、仙石線や石巻線とは異なり、BRT(バス・ラピット・トランジット)システムにより暫定的に復旧されることに。

 

BRTの路線はJR東日本の中では鉄道と同じ扱いで、市販の時刻表にも運転時間が掲載される。とはいえ、走るのは鉄道車両なくバス。被害が少なかった区間は路盤のレールを剥がし、バスの専用道路に変更。被害が大きかった地域では、路盤を専用道にすることは諦め、その区間は一般道へ出て走行する。

↑線路跡を舗装して専用道路とした気仙沼線BRT。一般車は入れないように工夫されている

 

地元では鉄路復旧を望む声も大きかったが、南三陸沿岸の路線は赤字体質で、たとえ復旧しても費用対効果が見込めないこともあり、JR東日本は復旧を断念。BRTによる営業を続けていきたいということを地元自治体に伝えた。

 

結局のところ、2016年3月に地元自治体も受け入れを表明。最終的に鉄路復旧を断念した。気仙沼線の柳津駅〜気仙沼駅間、大船渡線の気仙沼駅〜盛(さかり)駅間は、今後もBRT路線として営業が続けられる。

 

BRT導入によるメリットとデメリットは?

ここからは、気仙沼線・大船渡線BRTのメリットとデメリットを見ていこう。現地で実際に目にしたことや気付いたことも合わせて紹介したい。

 

<気仙沼線・大船渡線BRTのメリット>

1)通常のバスに比べて早着が可能

BRT専用の区間ではスピードを出すことが可能で、一般道を走るバス便に比べてスピードの面でも有利。

 

2)駐車場など元駅の施設が利用できる

気仙沼線の陸前戸倉駅の場合、専用の上下線ホームが設けられている。駅前には駐車できるスペースもあり、送り迎えの車などに利用されていた。つまり、元駅の敷地がある所では、色々な設備を設けることができるのだ。一般道沿いのバス停ではそこまで施設は充実できない。

↑気仙沼線の陸前戸倉駅には、BRT専用の“ホーム”と待合室などが設けられる。また、駅前には駐車スペースも完備

 

3)増発がしやすい

バス便のため、列車に比べて増発や減便、台数を増やすなど、フレキシブルな対応が可能。実際に気仙沼線では、列車運転時に1日に10往復程度の運転だったが、現在は倍以上(一部区間の運転も含む)の便数に増発されている。

 

4)駅数なども増やしやすい

列車は線路の上しか走ることはできないが、BRTなら道さえあれば住宅地に立ち寄れる。新駅などを造ることもたやすい。実際に大船渡線の気仙沼駅〜盛駅間には6駅ほど新しい駅が設けられた。

 

↑陸前戸倉駅は南三陸町にある。南三陸町といえば防災対策庁舎の悲劇。補修工事後の河川改修中で、現在は近寄ることができない

 

<気仙沼線・大船渡線BRTのデメリット>

1)列車よりBRTの方が時間がかかる

列車が通っていた時期と現在の到達時間を比べてみると、気仙沼線の柳津駅〜気仙沼駅間の場合、列車運行時は90分前後で結ばれていた。ところがBRTになると、110分以上の時間がかかる。また、大船渡線の気仙沼駅〜盛駅の場合、列車なら60分前後だが、BRTは80分以上かかってしまう。

↑大船渡線盛駅近くの専用道路の様子。道路上には踏切もあり、バスは60km/h以上のスピードで走る

 

2)一般道では交通渋滞に巻き込まれる

現状のBRT路線専用道路の割合を見ると気仙沼線の場合は41%、大船渡線の場合は37%となっている。なるべく専用道路を多く走った方が早いわけだが、橋の崩落などもあって全区間を専用道にすることができずにいる。それ以外は国道45号などを通るが、地元の車も利用する生活道路ということもあって、朝夕はどうしても通行車両が多くなる。そのため、街中では交通渋滞に巻き込まれることも少なくない。

 

3)地図に駅の記載がない

最新のカーナビの地図には元の陸前高田駅の記載は残っている。だが、その駅付近はかさ上げ工事が真っ盛りで近寄ることができない。実際に現状の陸前高田駅は、以前の駅から約2.5kmはなれた高台に移転しており、いまもまだ旧線路が入った地図が多い。様子を知らない地元以外の人たちにどうやって駅の場所を示して行くか、今後の課題といえるだろう。

↑現在の大船渡線BRT陸前高田駅。最新のカーナビ地図にはその位置の記載はなかった

 

お手本とすべき路線が名古屋市を走行中

地元の人たちにとっては便利になった節もあるBRT路線。とはいえ、地図に出ていないなど街を初めて訪れた人たちにとっては不便な部分も多い。さらに鉄道路線ならば、観光客が乗りに訪れ得る可能性もあるだろうが、BRT路線となると、旅行中の人がわざわざ乗りに来るとは考えにくく、鉄道よりも認知度が低くなる可能性は否めない。では、BRT路線として生き延び、また活発に使ってもらえるようになる方法は具体的にないのだろうか。

↑名古屋ガイドウェイバスゆとりーとライン。新システムとして参考になることが多い

 

上記は名古屋市を走る「名古屋ガイドウェイバス ゆとりーとライン」である。このゆとりーとラインは、高架の専用路線を専用のバスが走る新交通システム。法律上は無軌条電車に含まれており、鉄道の一員とされている。高架上に作られた専用施設を専用バスが走行。ガイド用の小さな車輪(案内装置)が着いているため、高架上をよりスムーズに走行できる。また、一般道でも普通のバスとして走ることも可能だ。

↑バスの側面には案内装置が付き、狭い専用道でもスムーズに走ることができる

 

名古屋市は、こういった新しい公共交通機関の導入に積極的で、市内ではBRT路線の導入も進められている。JR東日本のホームページによると、「BRT専用道の整備を進めていきます。専用道は、津波対策である堤防かさ上げと整合を図った橋りょうにするなど、自治体と協力し計画を進めていきます」とのことだ。

 

現状、気仙沼線ち大船渡線沿線ではかさ上げ工事などが続いており、新しい街の姿がまだ先というところも多い。地区が確定したら、ぜひとも専用道を充実させて少しでも早く走れるようにしてもらいたいものだ。また、名古屋市のゆとりーとラインは、より快適で早く走れるBRTシステムのバスの方向性を示しているように思える。

 

地図にBRT路線の駅を入れるように働きかけを!

筆者は沿線自治体からデジタル地図を作る会社への働きかけも必要ではないかと感じている。東北地方を訪れるまで気付かなかったが、気仙沼線も大船渡線も前の路線跡が地図の中に残っていた。いまだに6年も前の路線情報を引きずっていて不通のままにされている。少なくともいまでは、稜線はBRT路線で行くことになっている。

↑旧陸前高田駅方面を望む。現在、かさ上げ工事中で元の駅付近へは入ることができない

 

鉄道が消えることは寂しいことだが、BRT路線で行くという方針が決まっているのも事実で、地図上に鉄道路線が残ったままというのは少し具合が悪いようにも感じる。さらに、BRT路線の駅が地図上にないというのは、訪れた人が迷う原因にもなってしまう(google mapなど、一部のデジタル地図では検索可能な駅もある)。

 

鉄道に比べて注目度に劣るBRTシステム。とはいえ、地元には大切な公共交通機関であることに代わりがない。今後、どのように進化して地元と共存していくのか、見守っていきたいと思う。