取引額も情熱も「桁違い」 世界のトップ・アートコレクターたち

写真拡大 (全4枚)

アート界でフォーブスの富豪ランキング「Forbes 400」に匹敵するのが、ARTNEWS誌が毎年秋に発表する「Top 200 Collectors」だ。Forbes 400と違って、トップ10圏外の190人にはランキングがない。リスト入りすると画廊の対応は明らかに変わってくる。
 
顔ぶれの中心は欧米だが、近年はロシア、アジア、中近東勢の台頭もめざましい。ロシアでは資源王が多く、その中でも筆頭格はプレミアリーグ・チェルシーFCのオーナーでもある石油王ロマン・アブラモビッチとその3番目の夫人ダーシャ・ズューコヴァだ。20世紀絵画の巨匠フランシス・ベーコンのコレクターとして知られる。


アブラモビッチ夫妻

アジアでは、中国、台湾、香港が目立つ。台湾のコレクターには、ヤゲオ財団のピエール・チェンはじめ電子部品オーナーが多い。
 
ランキングの常連、アート界で「タクシードライバー」の通称で知られる中国の劉益謙(リュウイーチュエン)も健在だ(劉は元タクシー運転手の投資家)。2015年に、当時美術史上2番目に高額な210億円でモディリアーニの傑作を落札し、その名をとどろかせた。劉は落札後に記者会見を開き、その場でアメックスのカードを切るパフォーマンスでおなじみとなった。

欧米のコレクター層は、Forbes 400の顔ぶれとある程度重なる。最近目立つのは、ファンドのオーナーだ。

ハーバード在学中に18歳でファンドを立ち上げたケネス・グリフィンは、15年、現代美術の巨匠ポロックとデ・クーニングの傑作2点を約500億円で購入した。その他にも、SEC(米証券取引委員会)に提訴され、13年に当局に2000億円の和解金を支払ったにもかかわらず、同年150億円を超えるピカソの名作を購入したSAC創業者スティーヴン・コーエン、RJRナビスコの買収で名を馳せたヘンリー・クラヴィス等々……。


ショウビズ界からはレオナルド・ディカプリオがランクイン。実はフランク・ステラから村上隆まで幅広い現代美術コレクター。

2代続けてリストに登場する富豪もいる。GAP創業者故ドナルド・フィッシャー夫妻は、ウォーホルなどの現代美術を所有しトップ10コレクターの常連だった。その息子ロバート&ランディ・フィッシャー夫妻は、ダイアン・アルバースをはじめとする写真コレクションで昨年リストに初登場した。

一方、2代目が突如アートに目覚めるケースもある。ウォルマートの創業者サム・ウォルトンの娘アリス・ウォルトンはアメリカ美術のトップクラスの美術館を建てた。そのクリスタル・ブリッジズ・アメリカ美術館はウォルマート本社があるアーカンソー州北西の町にある。筆者も一度は足を運びたいと思いつつ、ニューヨークから飛行機で片道3時間半の距離が悩ましい。

ビジネスでのライバルの構図がアート界でもあてはまるのがLVMHグループの総帥ベルナール・アルノーと、グッチなどを擁するケリングの総帥フランソワ・ピノーだ。

Forbes 400ではアルノーが11位で、63位のピノーを凌駕する。しかし、アートの側面からは、世界最大のオークション会社クリスティーズのオーナーであり、最高峰の現代美術コレクションを持ち、ヴェニスに安藤忠雄が改装を手掛けた個人美術館2館を構えるピノーに軍配があがる。


フランソワ・ピノー(左)は現代美術の最もパワフルなコレクター。

一方のアルノーは、一時業界3位のオークション会社フィリップスをグループ傘下に収めたが数年で手放し、ピノーほどの存在感はなかった。ところが、パリ・ブローニュの森にフランク・ゲーリー設計のLVMH美術館を構えたことで風向きが変わってきた。

実は、パリに美術館を構えることはピノーの長年の悲願だったが、個人美術館の新設を歓迎しないフランス政府がなかなか許可しないことに業を煮やしてヴェニスに美術館を設けたといういきさつがあったからだ。最近マスコミに頻繁に登場するLVMH美術館の話題に、ピノーの心中推して知るべし。

日本からは、ZOZOTOWN社長・前澤友作、大林組会長・大林剛郎、大和プレス代表・佐藤辰美、「ユニクロ」のファーストリテイリング会長兼社長・柳井正の4氏が登場している。

異彩を放つのが前澤氏だ。昨年5月のサザビーズ、クリスティーズでバスキア作品60億円をはじめ2日間で約100億円強を落札した。国内コレクターの多くが目立つことを恐れる中、自分の名前を公表した。世界中が度肝を抜かし、ニュースで報じられた。──二晩にして「世界の前澤」になったのだ。
 
Top 200 Collectorsリストには200通りのストーリーが存在するので、話題は尽きない。