中国中央電視台(CCTV)は28日、公式サイトに同国が国家海底科学観測ネットを建設すると紹介する記事を掲載した。観測ネット建設の主たる目的は日米などの潜水艦の駆逐との見方が出ている。写真は南シナ海。

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中国中央電視台(CCTV)は28日、公式サイトに「わが国が国家海底科学観測ネットを建設へ同投資額は20億元以上」と題する記事を掲載した。同記事は観測ネット建設の主たる目的を科学研究としているが、「国防安全や国家権益」などのニーズにも対応すると説明したため、真の目的は日米などの潜水艦の駆逐と主張する報道が相次いだ。

中国中央電視台は、「わが国の海底科学観測ネットの設置が、最近になり許可された」と紹介。設置されるのは「わが国の東シナ海南シナ海それぞれ」であり、目的については「海洋環境について長期的に連続した観測データを提供」などと説明した。

さらに、「入手したデータによりわが国の地球システム科学と全地球の温暖化の変化について最先端の科学研究が推進される。同時に海洋環境観測、災害予報、国防安全、国家権益などの総合的ニーズに役立てることができる」と説明した。同記事によると、観測ネット設立への総投資額は20億元(325億円)で、建設期間は5年間だという。

5月31日ごろになり、台湾・香港・中国など多くの中華系メディアが同記事に注目し、軍事を絡めた解説記事を掲載し始めた。台湾メディアの自由時報は同日付で、CCTVの説明をおおむね踏襲しながらも、海底から外国船の動向を監視できることになり、専門家からは東シナ海や南シナ海での主権争いを再び激化させる可能性があるとの声が出ていると紹介した。

中国メディアの新浪網はさらに踏み込んで、海底観測ネットの設立目的は科学観測よりもさらに重要な他国の潜水艦の動向を探ることと主張する記事を掲載。「防空識別圏の設立に劣らぬ、真の意味での海防識別圏の設立だ」と論評した。

同記事は、海底観測ネットの機能について「外国の潜水艦、あるいは水上船が観測区域に進入すれば、データを司令部に送信。米国、日本、ロシアの潜水艦であれば対潜軍事力を現場に派遣して駆逐する」との見方を示した。

同記事はさらに、南シナ海と東シナ海の現状を分析。南シナ海については、島や岩礁の領有権や周辺海域の権益で中国と対立する国は反発し、米国は「自由航行」を標榜する行動を取るだろうと予測。しかし東南アジアの関係国は「最も鍵となる問題について中国との協力を求めている」と主張。具体的には書かなかったが、南シナ海の問題で中国と対立するベトナムやフィリピンも、経済面における中国との関係構築を必要としているとの見方だ。

一方、海底観測ネットの設立で「最も怒る国は日本だ」と主張。「日本は中国の島を侵略占領しているだけでなく、近年は一貫して中国に非友好的な政策を実施し続けており、中国にしばしば困難な状況をもたらしている」と論じた。

同記事は、海底観測ネットの設立に対しての日本と東南アジア諸国の反応が異なるはずと主張。海底観測ネット設立が、日本と東南アジア諸国の軍事的連携を断ち切る効果をもたらすとの見方を示した。

海中からの情報で、軍事的に最も重要なのは音響の収集だ。特に潜水艦に対しては視覚情報などを得ることが困難なので、動向を探るためには音響情報などの収集が決定的に重要となる。米軍は1950年代から、全世界規模で海底における音響情報の収集網の設置を手掛けている。具体的には海底にパッシブソナーと呼ばれるセンサーを多数敷設し、ケーブルなどを通じて情報を収集する。パッシブソナー上方の船舶通過を察知する仕組みだ。

中国についてもすでに、南シナ海、東シナ海、黄海における音響情報の収集網設置を手掛けているとの見方があった。(翻訳・編集/如月隼人)