カリフォルニア滞在中、ほぼウーバーだけで街を回ったという古賀茂明

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日本では「白タク」行為に当たるとして中止に追い込まれたライドシェアサービス「ウーバー」。

そんな日本の状況に、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、サンフランシスコでウーバーを利用しながら覚えた危機感とは?

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アメリカの大学院を卒業する息子の卒業式に出席するついでに、10日間ほど休暇を取って、カリフォルニア州を回った。

目を見張ったのはサンフランシスコの活況ぶりだ。アップル、グーグルといったグローバル企業が集積し、日々新たなベンチャー企業が産声を上げる。ベンチャーキャピタルなどから大量の資金が流入し、それが労働者への賃金となる。

サンフランシスコの最低賃金は2016年夏に13ドル(約1450円)に引き上げられた。金が回るところには人材も集まる。金と人が集まるから市内の住宅価格も高騰する。統計では、この3年ほどで2倍にもなっている。

サンフランシスコはライドシェアサービス(配車アプリで自家用車を持つ一般ドライバーと乗客をマッチングさせる)を生んだ「ウーバー」の創業地でもある。それだけに市内では配車アプリで人々が移動する光景が当たり前のものとなっている。

サンフランシスコだと、料金は通常のタクシーの半額ほど。金額は乗車時点で決まっていて、事前登録したカードで自動決済。領収書も降車直後にメール発行される。アプリで乗車、降車位置を指定すれば、5分も待たないうちに迎えに来てくれる。とても便利だ。

面白かったのはドライバーの顔ぶれだ。アメリカ人は少なく、エチオピア、中国、フィリピン、ヒスパニック系など、人種、国籍はさまざま。なかにはアメリカに来たばかりで英語もできないというドライバーさえいた。

また、あるロシア人ドライバーは「俺はスマホが嫌いだ。スマホがなければ人生は終わり。完全なスマホ支配社会だ」と嘆いていた。そのスマホのおかげでウーバーが成立しているのだが、とにかく、ウーバーはさまざまな言語と考え方を持つ移民たちの新たな就業の器となっていることだけは確かだ。

ウーバーのドライバーには仕事が次々と入る。帰国時にホテルから空港まで、ウーバーを利用したときのこと。ドライバーが急に車を止めて草むらに駆け込んだ。忙しすぎて小用を足すヒマもなかったということだった。

ウーバーは現在、世界70ヵ国450以上の都市でサービスを展開中だ。利用客もうなぎ上りで、昨年の配車実績は前半期の6ヵ月間だけで10億回に達した。

アメリカの大都市ではライドシェアサービスに続き、買い物代行や出前をアプリでマッチングさせるビジネスもごく当たり前のものとなっている。次々と新ビジネスが立ち上がり、収益と雇用を生み出すアメリカのエネルギーにはやはり驚かされる。

翻(ひるがえ)って日本はどうだろうか? 東京都内で2014年に始まったウーバーのライドシェアサービスは国土交通省の横やりで中止に追い込まれた。タクシー業界の反対で「白タク」営業を禁じる道路運送法の抜本見直しの見通しは立たない。安倍政権の成長戦略がいかに小手先でまやかしであるかのひとつの証左だ。

もちろん、アメリカのやり方をただまねろというのではない。国によって残すべき規制、守るべき産業はある。大切なのは何を残し、何を革新するかだ。今の日本は口先だけの改革を唱えてその選択をせず、立ちすくんでいるだけではないか?

サンフランシスコでウーバーを利用しながら、そんな危機感を覚えずにはいられなかった。

●古賀茂明(こが・しげあき)

1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。近著に『国家の暴走』(角川oneテーマ21)。インターネットサイト『Synapse』にて「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中