平井堅、『小さな巨人』主題歌はなぜ胸を打つのか すぐれたソングライターとしての一面を読む

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 2017年の春ドラマが、クライマックスに向けてさらなる盛り上がりを見せている。今期も物語と主題歌のマッチングが話題を呼ぶ作品が多くある中で、今改めてふれておきたいのが、TBS系日曜劇場『小さな巨人』主題歌である平井堅の「ノンフィクション」だ。

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 『小さな巨人』は、様々な事件解決の過程で浮かび上がる警視庁本庁と所轄の確執、キャリア/ノンキャリアによる出世争い、さらに警察内部に潜む巨大な闇に立ち向かう警察官たちの勇姿を描いた警察エンターテインメントドラマ。「敵は味方のフリをする。」というキャッチコピーのとおり、回を重ねるごとに信頼していた上司の裏切りなどの残酷な現実が明らかに。誰が敵で誰が味方なのか、正義とは、悪とは……という問いが絶えず視聴者に投げかけられる。そして、そういったストーリーを通じて、人を信じること、諦めずに己の道を突き進むことの大切さについて考えさせられる作品でもある。

 ドラマのオフィシャルサイトによると、主題歌の「ノンフィクション」は平井堅がオファーを受け、ドラマの脚本を読んで書き下ろした楽曲だという。同曲は放送の終盤、回のクライマックスを迎えるタイミングでBGMのように流れはじめる。エンディングの幕開けを飾る印象的なファンファーレが鳴ると、平井堅の語りかけるようにやさしい歌声が耳に入る。しかし、出だしから歌われるのは<描いた夢は叶わないことの方が多い/優れた人を羨んでは自分が嫌になる>といった、つい目を背けたくなるような現実を映す言葉だ。その後も、中盤に<優しい隣人が陰で牙を剥いていたり>というドラマとのリンクを感じさせる表現を取り入れながら、サビでは<人生は苦痛ですか? 成功が全てですか?><何のため生きてますか? 誰のため生きれますか?>という、ストレートすぎる問いが次々と並べられる。ドラマの内容と重なりながら、切々と歌われる言葉たちが深く胸を打つ。

 平井堅は「瞳をとじて」のような切ないバラードから、「POP STAR」のような輝かしいポップチューンまで様々なジャンルの代表曲を持ち、なかでも聴く者の心に寄り添ったり、癒したり、楽しませてくれる作品が目立つ。しかし今回の「ノンフィクション」には、その名のとおりフィクションや綺麗ごとではない、現実と向き合い、本能に従って生きることを後押しする力がこめられている。平井堅は同曲について、「僕の楽曲のなかでも今までと違うものにしたいと思いまして、個人的にはハードボイルドな楽曲になったかなと思っています。人生の苦渋や苦難を歌った楽曲なので、生きることの暗部にフォーカスをあてて書いたのですが、でも決して諦めずに生きることを選ぶ、全ての勇者達を歌った曲です。真剣だからこそ悩み、迷い、時に投げ出したくなることが生きることだと思います」とのコメントを寄せており、意図してそのような楽曲が生み出されたことがわかる。

 過去のインタビューを読むと、自身の音楽活動においてもっとも重要なことは“歌うこと”であると度々語っており、楽曲制作を手がけることについてのこだわりはあまり強いようではない。しかし、この「ノンフィクション」を聴けば、平井堅がその素晴らしい歌声に匹敵する、すぐれたソングライティング力の持ち主であること、その曲を通して聴き手の心を動かすことができるシンガーであることを改めて実感することができるだろう。平井堅は本日6月2日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、「ノンフィクション」を披露する。歌声と楽曲を通して、日々を生き抜く多くの視聴者の背中を押してくれるに違いない。(久蔵千恵)