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産業技術総合研究所(以下、産総研)は、インフラ構造物の打音検査を人工知能でアシストし、異常度マップを自動生成するAI打検システムを開発した。

同システムは、点検ハンマーによる打音の違いを機械学習し、構造物の異常箇所と異常の度合いを自動検知するもの。産総研 人工知能応用研究チームの村川正宏研究チーム長、人間情報研究部門の大隈隆史主任研究員らと、首都高技術、東日本高速道路東北支社、テクニーとの共同研究によって開発された。

今回開発されたAI打検システムは、計測ユニット、AI を搭載する制御・記録・解析用のタブレット端末、異常を通知する携帯デバイスから構成され、計測ユニットを構造物の壁面など平らな面(平面構造)に立てかける形で使用する。同システムは、ハンマーで叩いた箇所の異常の有無を自動的に判定し、異常箇所を検出すると点検者にリアルタイムで提示する機能と、作業終了後すぐに、異常度マップを自動的に生成して点検者に提示する機能を備えている。

異常箇所のリアルタイム提示については、計測ユニットに搭載された音響センサーと、打撃位置取得のための測域センサーにより、点検ハンマーの打音の波形と、平面上のどこを打撃したかの位置情報を合わせて取得できる。ユニットの設置位置から半径4m程度以内の打撃を検知可能。打撃した箇所はタブレットに随時表示され、異音が検知されると、即時に点検者が持つ携帯デバイスに通信し、LEDの点灯とブザー音によって通知されるようになっている。

機械学習による異音解析技術を適用する際には、データが十分に集まっているかが課題となるため、同システムでは機械がその場で学習していくオンライン学習手法を導入している。まず、点検作業前に、明らかに正常と思われる箇所を打撃し(10秒程度)、正常な打音のモデルを構成する。その後検査モードを開始し、正常な打音モデルから逸脱した打音は異常として検出、逸脱しなかった打音は正常であると仮定して、正常モデルを逐次更新していく。打音検査を進めると同時に機械が学習していくため、十分なデータが集まっていない段階でも検査が可能になるという。

異常箇所マップは、学習した正常な打音からどの程度異なる音かを定量的に解析し、色付けして可視化してある。検査終了直後にマップ化するため、打撃漏れなどもその場で確認し、追加点検できる。また、異常箇所の補修・補強設計には、詳細な損傷図を作成する作業工程があったが、その工数を削減することがて可能という。

なお、同システムでは、計測ユニット内に音響センサーと測域センサーを搭載しているため、両センサーの情報を統合的に解析することで、異常度判定に用いた打音と、その打撃位置を正確に対応づけることを可能にしているとのこと。また、同システムを移動させ検査を続行する場合は、再設置作業が必要になるが、簡単に測域センサーの位置合わせができる機構を導入しており、設置時間を1分程度におさめてある。

同システムにより、非熟練者であっても点検箇所を漏らさず社会インフラの打音検査が行うことできる。また、一般の点検ハンマーを対象としているので、これまでの打音検査の手順を大きく変えずに、このシステムを導入でき、図面化を含めた工数短縮につながると期待される。今後は実証試験を重ね、2018年以降の社会実装を目指して製品開発体制を2017年度中に構築するという。また、現在、検査対象は平面構造であるが、RC床版を桁下から検査できるような冶具を開発し、検査対象の範囲を広げていく予定となっている。さらに、点検データと構造物の三次元設計データや測量データとの統合管理を可能にするため、計測ユニット自体の絶対位置情報の取得法なども検討されているということだ。

なお、今回試作されたAI打検システムの実機は、6月7日〜8日に夢メッセみやぎで開催される「建設技術公開 EE東北’17」と、7月19日〜21日に東京ビッグサイトで開催される「メンテナンス・レジリエンス TOKYO2017」にて展示される予定となっている。