韓国に文在寅政権が誕生してから3週間あまり。支持率は就任直後の74.8パーセントから、82.3パーセントに上昇(リアルメーター、5月22日発表)し、好調なスタートを切った。一方、就任5ヶ月目の米国トランプ大統領の支持率は38パーセント(ロイター/イプソス、5月19日発表)で、就任後最低を記録した。

北朝鮮の人々も、2人の大統領に対して概ね同じような見方をしている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、最近市場では文在寅氏とトランプ氏の話で持ちきりだという。

文在寅氏の評判は上々だ。

「新しい大統領は朴槿恵よりもわれわれ(北朝鮮)と良い関係を結ぼうという人だ」
「肥料やコメを支援してもらっていた頃のように、南北関係がよくなれば暮らし向きが少しは良くなる」

このように、多くの人々は南北関係の改善に期待している。韓国が経済的に豊かであることをほとんどの人が知っているため、南北関係が良くなれば何か支援を得られるのではないかと思っているのだ。

国際社会の経済制裁と春窮期(春の食糧不足)が重なっていることに加え、朝から午後4時までの農村支援への動員で市場の景気も雰囲気も悪く、人々の表情から笑顔が消えているという。そんな中での文在寅氏の登場は、明るいニュースとして受け止められているようだ。

一方で、トランプ氏の評価は散々だ。

朝鮮労働党の機関紙、労働新聞は先月29日、「米国を襲っているトランプ弾劾の機運」と題した解説記事で、トランプ氏のことを次のように評している。

トランプは孤立主義、一方主義、保護貿易主義などを政策に反映、強行している。彼はそれが米国のためだと宣伝している。しかし、その脆弱性があらわになった。ある歴史学者は、トランプが米国に高利子海外信用貸付による金融危機、メキシコとの国境地域での障壁建設と、すでに発表された移民追放による社会的危機などをもたらしたと語った。

定まらないトランプの言動は経済分野にも影響を及ぼしている。税金と規制を下げて経済成長を成し遂げ、企業の利潤を増大させるとした選挙公約により、就任当初は上昇傾向にあった米ドルの価値と米国政府債券などは、トランプによる政治的不安定により下降線を描いている。

記事は、米国の状況を概ね正しく伝えているが、市場の商人たちも、労働新聞と同じ見方をしている。

「南北関係が良くなるには、米国がちゃんとしてくれなければならないのに、トランプは邪魔をするかもしれない」

一方で、韓国の新政権への期待に、疑問を呈する声も聞かれる。

「米国の言いなりになっている韓国だから、大統領が替わったぐらいでわれわれとの関係改善に乗り出せるだろうか」

さて、自国の最高指導者、金正恩党委員長に対する市場の商人の評価はどうだろうか。

「高級マンションを建てて何の役に立つのか。食べ物の心配がなくなってこそ、豊かと言えるのではないか」

(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

金正恩氏は、平壌市内に相次いで高級タワーマンション団地を建設しているが、地方に対してはほとんど何も出来ていないことを商人たちは鼻で笑っていると、情報筋は伝えている。