エネルギーの「地産地消」は、何をもたらすのか。


「地域新電力」の設立が全国で相次いでいます。地域新電力は、地域の再生可能エネルギーなどを電源として、地域を限定して電気を供給する電力会社のことです。電力全面自由化を受けて全国的に広がり、自治体が出資するなど関与しているものだけでも全国で約20以上に上ります(発表段階のものを含む)。

 エネルギーの地産地消による地域内でのお金の循環、雇用創出、電気料金の引き下げ、再生可能エネルギーの利用促進など、地域新電力を設立・支援する自治体ごとに目的はさまざまですが、地方創生や再生可能エネルギーの利用拡大につながるとして期待されています。

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全国で相次ぐ自治体の地域新電力への出資

 福岡県みやま市が55%出資するみやまスマートエネルギーは、市内の家庭用太陽光発電の余剰電力や、市内のメガソーラーを電源として、みやま市を中心に公共施設や家庭向けに電気供給を行っています。また、電気供給に加え、家電の使用状況が分かるHEMS(Home Energy Management System)を活用した高齢者の見守りや、水道料金とのセット割引、街の商店街活性化のためのワンストップ通販事業など地域の課題解決のための取組を多角的に行っています。

 電力事業を「目的」ではなく、地域振興や雇用創出の「方法」として捉え、多様な行政サービスを付加し展開していることが特徴です。今や、年間約100団体が訪れる自治体関係者、地方議員、まちづくり関係者の一大視察地になっています。

 鳥取県米子市が10%出資するローカルエナジーも、同様に公共施設や家庭向けに電力を供給しています。特徴的なのは、供給電力の実に8割が廃棄物発電や太陽光発電などの地元の電源という点です。電気に地産地消という付加価値を付けて販売することで、電気という生活必需品を通じて地域でお金を循環させようとする取り組みです。

 東日本大震災とそれに伴う計画停電などを経験し、これまで国の専管のように扱われてきたエネルギー政策は、自治体でも大きな課題となりました。多くの自治体でエネルギービジョンなどが策定され、再生可能エネルギーなどの分散型電源が推進されています。

 現在の地域新電力設立の動きを見ると、これまで再生可能エネルギーの導入や地域のエネルギーマネジメントに力を入れてきた自治体が、次のステップとして地域新電力に取り組むというのが全体の流れが多いようです。

意外に多い自治体の所有する発電設備

 実は、自治体が地域新電力に取り組みやすい土壌はあるのです。あまり知られていませんが、既に発電設備を所有している自治体は少なくありません。

 まず、廃棄物発電(ごみ発電)が挙げられます。全国市町村の一般廃棄物焼却施設は1188施設(2012年度末時点)で、このうち発電を行っている施設は全体の26.7%にあたる317施設(合計発電能力は約1750MW)となっています。

 日本では、一般廃棄物処理は基礎自治体の責務とされ、これまで基本的に市町村ごとに焼却施設が整備されてきたため、欧米に比べ小規模な施設が多くなっていました。小規模施設の場合、安定的な発電が難しく、また蒸気タービンなどの発電関係設備は固定費であるため費用対効果で不利になり、発電を行わない(または発電したとしても自家消費のみに留まる)場合が多くありました。

 一方、近年は複数の自治体による廃棄物処理施設の共同設置が進んでおり、施設が大規模化する傾向にあります。ごみの発生量自体は減少しているものの、発電施設数および総発電能力は増加しており、廃棄物発電は自治体所有の電源として一定のポテンシャルがあると考えられます。

廃棄物発電の総発電能力の推移(:環境省)


 次に、自治体所有の発電設備の隠れた主力として挙げられるのは、ダム付帯の水力発電(公営水力)です。公営水力は、戦後の河川総合開発の一環で設置されたものが多く、自治体所有となっています。平成28年4月1日現在で25都道府県1市が公営水力を所有しており、これらの合計設備容量は約2310MWとなっています。

 これら廃棄物発電や公営水力に加え、震災以降、廃棄物処分場跡地などに自治体がメガソーラーを設置するケースも増えました。これら自治体所有の電源を活用した地域新電力が全国に広がっていく可能性があります。

 また、自治体は需要側でも重要な役割を果たすことができます。

 地域新電力に出資などをした自治体は、その地域新電力から公共施設に電気供給を受けることにより、自ら率先してエネルギーの地産地消に取り組む姿勢を示すのが一般的です。地域新電力からすると、最重要事項の1つである需要(顧客)の確保が一定規模達成できることになり、大きい強みとなります。

 なお、このようなケースの場合、ほぼ全ての公共施設の電気料金は、従来の大手電力会社から供給を受けるより数%安価になっていることもポイントです。

今後は、どれだけ市民に選ばれるかが鍵

 家庭部門も含めた電力全面自由化となって1年、自治体の関与する地域新電力が、公共施設への電気供給のみならず、地域の家庭向けに電力販売を開始するケースも出てきました。

 今後は、どれだけの市民が再生可能エネルギーなどの「地域の電気」を選ぶかに注目です。

※本原稿は個人として執筆したもので、所属する団体の見解等を表すものではありません。本原稿へのご意見・お問合せはinagaki_energy@yahoo.co.jpまでお願いいたします(所属は、寄稿時点(平成29年3月)の所属です)。

筆者:稲垣 憲治