耳元での爆音には要注意(画像は英ガーディアン紙の当該記事)

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ベルギーのシャルル・ミシェル首相が2017年5月28日(現地時間)にブリュッセルで開催されたマラソン大会で難聴になり、治療のため2日間の休養を取っている――。5月30日ごろからCNNやワシントンポスト、ガーディアンなど複数の海外メディアが変わったニュースを報じている。

マラソン大会で難聴になるほどの轟音が響き渡ることはそうそうないようにも思えるが、なぜこのような事態になったのだろうか。

耳元で王女のスターターピストルが

5月30日付の英ガーディアン紙電子版によると、ミシェル首相の難聴の原因となったのはマラソン開始時に鳴らされるスターターピストル(号砲)だったという。同紙によると、マラソン大会でスターターピストルを鳴らしたのはベルギー国王の妹であるアストリッド王女だったが、首相は王女の真横に立っていたため耳のすぐそばで爆発音を聞いてしまった。この時の写真が各国のメディアに掲載されているが、両目を閉じて体を除ける首相の姿を見ると、突然の爆音に驚いたようだ。

当初は突然の出来事にミシェル首相も笑っていたようだが、その後も耳鳴りや耳の痛みが治まらず医師の診察を受けたところ「急性音響外傷」による難聴と診断されたという。「音響外傷」とは突発的に大きな音に晒されたことで耳の中にある内耳が損傷してしまった状態。ロック難聴などとも言われ、コンサート会場などで大音量の音楽を聞き続けていると発症することもある。耳鼻科のウェブサイトでもコンサートやライブの翌日に耳の痛みや耳鳴り、聞こえにくいといった症状が続いている場合は音響外傷の可能性があるとしているところが多い。しかし、スターターピストルの音はそこまで大きいのだろうか。

米国言語聴覚学会のウェブサイトに掲載されている「Recreational Firearm Noise Exposure」によると、ほぼすべての銃器や火薬を利用した銃器型の道具は140デシベル以上の騒音を発生させるとされており、「音響外傷を発症する多くは戦場にいる兵士」だという。全国環境研協議会が公開している「騒音の目安」によると日常生活の中で大きいレベルの騒音は「飛行機のエンジン音」で120デシベル、「直近のクラクション」で110デシベルなので140はかなりの爆音だ。

スターターピストルから銃器と同じ騒音がするとは限らないが、ランニングが趣味でマラソン大会にも参加するという60代の男性はJ-CASTヘルスケアの取材に「かなりうるさいと思う」と答えた。

「最近はランナーの数も多いのでピストルの音も大きくしているのではないでしょうか。スターターピストルが鳴る直前は付近にいる人がかなり離れていますよ」

ミシェル首相は災難だったが重症ではないようで、ガーディアン紙の取材に対しベルギー政府広報官は「回復しつつある」とコメントしている。原因となってしまったアストリッド王女やベルギー王室から特にコメントは出ていないという。

地下鉄の駅も100デシベル以上

爆音が鳴りそうなときには耳をふさぐ、大きな騒音が予想されるイベントなどには耳栓を持っていくなどの対策が必要になるが、それほど大きくない騒音や日常生活の思わぬ音も難聴の要因となる可能性があるので注意が必要だ。

世界保健機構が2015年に発表した難聴リスクの目安は「85デシベルで8時間、100デシベルで15分」とされており、これを下回るほどリスクは低下するとしている。前述の「騒音の目安」では「鉄道高架橋の下」「地下鉄の駅構内」が100デシベル、「カラオケ店個室内」や「パチンコ店内」「走行中の電車内」が80〜90デシベルなので、難聴リスクは案外身近に存在していることがわかる。その騒音そのものは聞いていなくてもスマートフォンやオーディオプレイヤーで再生音量を大きくしてイヤホンで聞いていればやはり危険だ。