NBAプレーオフ2017 ファイナル展望

「クリーブランド・キャバリアーズvs.ゴールデンステート・ウォリアーズ」。NBAファイナルは3年連続の同カードとなった。両チームの対戦は、もはや6月の風物詩と呼んでもいい。2015年はウォリアーズ、2016年はキャブス、2017年の勝者はどっちだ?


ファイナルで激突必至のレブロン・ジェームズ(左)とケビン・デュラント(右) 既視感、デジャヴ――。3年連続と言うべきか、それとも7年連続と言うべきか……。

 2016-2017シーズンのNBAファイナルは、3度目となるキャブスvs.ウォリアーズ。同じチーム同士の3シーズン連続のファイナルは、NBA史上初の出来事である。

 さらに言えば、レブロン・ジェームズ(キャブス/SF)にとっては7年連続のファイナル進出。レブロン以外でこの偉業を成し遂げた選手は、1960年代に前人未到の8連覇を達成し、黄金期のボストン・セルティックスに所属したビル・ラッセルを含む6選手しかいない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 4月中旬から始まったNBAプレーオフ。両チームの戦いぶりは圧倒的だった。

 ウォリアーズはプレーオフ史上初となる、ファーストラウンドから12連勝でウェスタン・カンファレンスを制圧。対するキャブスもボストン・セルティックスとのカンファレンス・ファイナル第3戦を落としただけの12勝1敗で、イースタン・カンファレンスの頂点に立った。キャブスが落とした1戦というのも、終始キャブス楽勝ムードのなかでセルティックスのスリーポイント(3P)攻勢が功を奏し、残り0.1秒でエイブリー・ブラッドリー(SG)に3Pを沈められたミラクルな展開だった。

 しかし、彼らの強さは魅力的だが、強すぎるというのは退屈だ。全米のメディアも「2チームが強すぎることでファン離れが起きるのでは?」と危惧する。そんななか、オクラホマシティ・サンダーからライバルのウォリアーズに移籍し、完全にヒールキャラとなったケビン・デュラント(ウォリアーズ/SF)は、今季のプレーオフに関してこう言及した。

「ファンはすべての試合でブザービーターを見たがる。第7戦までもつれるシリーズがいくつもある素晴らしいプレーオフもあれば、今年のようなプレーオフもある。選手としては常に勝ちにいくし、できる限りのプレーをするだけ。見たくないなら見るな」

 ただし、このファイナルだけは、バスケファンなら見るべきだ。

 2015年のファイナルは、4勝2敗でウォリアーズが40年ぶりの優勝。2016年のファイナルは、1勝3敗と追い込まれた崖っぷちのキャブスが3連勝で逆転して優勝。つまり現在、1勝1敗――。今年勝ったチームは、因縁のライバルに少なくとも1年間は勝ち越すことができる。

 振り返れば、今シーズンは開幕直後から火花が散っていた。ドレイモンド・グリーン(ウォリアーズ/SF)は王者キャブスへの敵意を隠そうとはしない。

「もし今季もクリーブランドがファイナルに勝ち上がるなら、破壊したいね。俺たちがファイナルまでたどり着けば、彼らを絶滅させたい」

 しかし、どちらのチームも負ける姿が想像できず、勝敗を予想するのは難しい。そこで、イギリスのブックメーカーのオッズをのぞいてみると、ウォリアーズが1.36倍、キャブスが3.20倍と、ウォリアーズの圧倒的有利となっていた。昨季のファイナルではほぼ互角なら、デュラント加入でウォリアーズの戦力が頭ひとつ抜けた、という計算だろうか。

 さらに、昨季の雪辱に燃えるウォリアーズの選手のモチベーションは軒並み高い。クレイ・トンプソン(SG)が「昨年の敗戦を毎日考えている。いつも考えている」とメディアに語れば、エースのステファン・カリー(PG)は決戦を前に「12勝0敗は素晴らしいことだが、次のシリーズに臨むにあたって何の意味も持たない。みんなそれを理解しているよ」と兜(かぶと)の緒を締める。そして、カリーはこうも語る。

「今年は、去年とはまったく違うシーズン、違う集団、違う旅だ」

 もちろん、キャブスの面々も黙ってはいない。ケビン・ラブ(PF)はウォリアーズ有利の下馬評を鼻で笑う。

「俺たちが格下に思われているのは滑稽(こっけい)でしかない。なぜなら、俺たちは挑戦者ではなく、タイトルを守る側だからだ」

 カリー、トンプソン、そしてデュラント……。どこからでも大量得点が可能なウォリアーズの攻撃陣をどう抑えるか? ウェスタン・カンファレンスのすべてのチームが回答できなかった問いだ。だが、イースタン・カンファレンスの全チームが解けなかった問いもある。

「レブロン・ジェームズを、どう止めるか?」

 今プレーオフでのレブロンの活躍を往年のスター、シャキール・オニールは偉大なレジェンドたちの名前を挙げて、こう例えた。

「いつでも点を獲れるマイケル・ジョーダン、大きくて強いシャック、他の選手を巻き込む仕事をするマジック・ジョンソン。今のレブロンは、3人のミックスだ」

 そして、こう続ける。

「そんな選手を、俺はもうひとり知っている。コービー・ブライアントだ」

 レブロンの成績を数字で見れば、シャックの言葉があながち大袈裟ではないことがわかる。レギュラーシーズンは平均37.8分の出場で、26.4得点・8.6リバウンド・8.7アシスト・フィールドゴール(FG)成功率54.8%、3P成功率36.3%を記録。一方、今プレーオフでも平均40.9分の出場で、32.5得点・8.0リバウンド・7.0アシスト・FG成功率56.6%・3P成功率42.1%と、すべての項目で安定した成績を残している。

 キャブスがプレーオフで多用しているアイソレーション(※)からの「レブロンの1on1」をウォリアーズはどう止めるのか? デュラント、アンドレ・イグダーラ(SF)、グリーンなどが交互にマッチアップするだろうが、なかでもグリーンとレブロンのマッチアップは必見だ。

※アイソレーション=1対1を仕掛けやすいように企図されたフォーメーション。

 昨年のファイナル第4戦、グリーンはレブロンの股間を叩き、1試合の出場停止処分を食らっている。ウォリアーズはグリーンが欠場となった第5戦を落とし、一気に流れをキャブスに持っていかれて優勝を逃した。因縁深い両者のマッチアップは、きっと今年も何かが起こるはずだ。

 キャブスはレブロン、ラブ、カイリー・アービング(PG)の3選手、ウォリアーズはカリー、デュラント、トンプソン、グリーンの4選手――両チーム合わせて7人もの選手が今季のオールスターゲームに選出されている。ファイナルでありながら、もはやオールスターゲームといっても過言ではない。

 現地時間6月1日(日本時間6月2日)、口笛を吹くようにファイナルまで駆け上がった東西の王者が、初めて必死の形相で勝利を求めてコートを駆ける。果たして、今季のNBA覇者はどっちだ?

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