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 シャープは5月26日、中期経営計画を発表し、前期(2017年3月期)からの構造改革路線に区切りをつけ、今期(2018年3月期)から事業拡大へ大きく舵を切った。

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 前期売上高2兆506億円、営業利益624億円に対し、中期計画では3年後の最終年度(2020年3月期)に売上高3兆2,500億円、営業利益1,500億円と2007年度以来となる過去2番目の高水準を目指す。シャープの前期までの構造改革と今期からの中期経営計画について検討してみよう。

■前期までの構造改革

 経営危機により2016年8月に世界最大の電子機器受託製造会社鴻海精密工業の子会社になり、契約の全面見直し、責任ある事業推進体制の構築など4つの構造改革方針が打ち出された。

 社長決済金額を億単位から300万円まで引き下げ、投資の中味を厳しくチェックし、全事業部に細かな採算意識を徹底した。併せて鴻海の規模を生かした調達コストの削減を推進した。

 こうした構造改革の結果、5月30日の日経新聞によるとシャープは僅か半年で前期売上高原価率の改善が9.2ポイント改善の好数値を記録し、全事業部が黒字化、売上減(前年比83%)の中でも営業利益624億円のV字回復を成し遂げた。

■中期経営計画で事業拡大

 中期計画では全社戦略として「グローバルでの事業拡大」「ビジネスモデルの変革」「経営基盤の強化」を掲げ、それを推進する事業部門を4事業ドメインに分割した。各ドメインの中にAIoT・8Kエコシステム戦略推進室を共通に設け、「One SHARP」として全社一体で戦略推進に取り組む。以下各ドメイン別に中期計画期間の事業拡大計画と進め方を見てみる。

・スマートホーム 前期売上5,500億円 最終年度1兆円以上AI(人工知能)とIoT(物とのインターネット)を駆使したAIoTにより、快適な暮らしのスマートホームを野村不動産と作り、このビジネスモデルを拡大する。

・スマートビジネスソリューション 前期売上3,177億円 最終年度4,500億円以上オフィスや工場などビジネス現場でAIoTにより生産性を高めるソリューションを提供

・アドバンスディスプレイシステム 前期売上8,420億円 最終年度1兆円以上8Kディスプレイを家庭、車載機器、医療分野へ浸透させる。グーグルと仮想現実(VR)向けの液晶を共同で開発中

・IoTエレクトロデヴァイス 前期売上4,130億円 最終年度8,000億円以上AIoTや8Kを活用した事業を支える半導体などの電子部品の開発・販売を進める

 世界のIT業界に詳しい鴻海の人材を取締役に迎えて、世界に向けて事業拡大する基盤が整ってきた。今後のシャープの中期計画の進捗状況が楽しみである。