今大会で久保は1アシストに終わったものの、決して小さくないインパクトを与えた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 久保建英にとってのU-20ワールドカップは、ほろ苦くも貴重な経験を積めた場になった。
 
 5月30日、チームメイトとともに羽田空港に到着すると、多くの報道陣の前にもかかわらず、相変わらずの落ち着いた口調で一つひとつの質問に丁寧に答えた。
 
「最初は『なんで俺なんだろう?』とびっくりした」と語ったように、U-17日本代表の中心選手であった久保が、昨年末のアルゼンチン遠征でU-19日本代表に抜擢されたことに、当初は本人も驚きを隠せなかった。
 
 しかし、そのアルゼンチン遠征で「十分に戦えるレベルにある」と内山篤監督の信頼を掴むと、以降はチームに定着し、今大会では1アシストをマーク。「このチームで1試合でも多くやりたかった。でも、自分が想像していた以上に、経験値をもらえたかなと思います」と、最後はすっかりチームの一員として馴染んでいたことを窺わせた。
 
 だが、今大会最年少で臨んだとはいえ、久保にとって圧倒的に悔しさが勝る経験となった。南アフリカ戦では貴重な決勝弾をアシストし、日本でも大きなニュースとなった。しかし、ウルグアイ戦でFW小川航基の大怪我のアクシデントを受け、20分に緊急出場をすると、「ファーストタッチがうまくいかなかった」と、上手く試合に入り込めず、久保自身まったく納得のいかない出来に終わった。続く第3戦のイタリア戦では出場なし。
 
「フレッシュな状態で臨めると思います」と挑んだベネズエラ戦では、62分に投入され、ワンタッチで前を向いたり、抜群のポジショニングでボールを受けたりと、才能の片鱗を見せたが、結果を残せぬまま敗戦の時を迎えた。
 
 試合後のミックスゾーンでは終始うつむき、最初の質問から答えに至るまでしばらくの沈黙があった。それは15歳の彼にとって、酷な時間のように映った。それでも彼は、「正直今はあまり、いろいろ考えられないです…。チームとして出てるんで、自分の経験になろうがなるまいが、しっかり1試合1試合を大切にしていきたいと思ってました。今日はあまり収穫もなく、もう(日本に)帰るしかないですけど、本当に残念です」と、しっかりと言葉を発した。
 そして、一夜明けた羽田空港。冒頭で述べたように、試合後とは違い、顔を上げ、彼は毅然とした態度でメディアからの質問に答えた。
「昨日の夜はゆっくりといろんなことを考えましたし、ビデオを見たりはしましたが、いろいろな課題が見えてきたし、それはさらに時間が経つにつれ、より見えて来ると思う。でもこの強度のなかで3週間やれたことは、自分のレベルアップに間違いなくつながっていくと思うので、その上でまたいろいろ考えていきたいです」
 
 自分と向き合えた濃密な3週間を、久保は過ごすことができた。手応えも悔しさも、そしてピッチ内外での立ち居振る舞いも、すべて大きな財産となった。
 
 そして、ベネズエラ戦後に西野朗技術委員長が明言したように、久保は10月に開催されるU-17ワールドカップにも出場する見通しだ。
 
「(U-20ワールドカップで)悔しい思いをしている分、もし(U-17ワールドカップで)招集されたら出たいと思います。でもまだ先のことなので、そこではなく、自チームに帰って一生懸命やれば結果はついて来ると思います」
 
 10月の大会に出場となれば、今度は絶対的エースとして君臨することになる。年代は違えども、ワールドカップのピッチで今大会の成果を示すべく『日本の宝』の新たなチャレンジが始まる。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)