読書会+プロレスという異種コラボイベントが盛り上がりを見せているという!?(写真はスポルティーバ所属・石田慎也)

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 出版不況や本離れが叫ばれる中、各地で人気を博している「読書会」という催しがある。読書好きが集まり、事前に読み終えた課題図書についての感想や内容に関する情報を伝え合う交流会だ。

 課題図書は同一のものだったり、テーマに即していれば何でもよかったりと読書会によって異なるが、参加者全員が同一の本を読む形式が主流だ。

 愛知県名古屋市には、日本最大級の読書会コミュニティ「猫町倶楽部」があり定期的に読書会を開催している。今年の5月20日、同会の参加者が個人でスピンオフ企画『プロレス読書会』を開催した。

 筆者は読書とプロレスがタッグを組んだこのイベントに参加したので、当日のようすを伝えよう。

◆たったひとつのルールが熱を呼ぶ

 会場は以前の記事でも紹介した、名古屋のローカルプロレス団体・スポルティーバエンターテイメントの道場でもある常設会場「スポルティーバアリーナ」だ。

 バーとして営業しており、毎週水曜日夜にカレーライスとプロレス観戦をセットにした興行「水曜カレープロレス(仮)」を開催している。

 参加者は受付を済ませたら割り当てられたテーブルにつき、名札を作り体の見やすい位置に貼る。また各テーブルには司会進行役を務める「ファシリテーター」がひとりずつ配置される。

◆平成プロレス史をみんなで学ぶ!

 この日の課題図書は三田佐代子著『プロレスという生き方 平成のリングの主役たち』(中公新書ラクレ)だ。

 90年代以前のプロレスを扱った書籍が多く刊行される中、平成のプロレスラーたちに焦点を当て、それぞれの歩みや関係者による証言などを紹介し、「今のプロレス」の魅力を伝える本だ。

 紹介されている選手は、メジャー団体の選手から、独自路線を進むインディペンデント系やローカル団体まで幅広い。

 前者は新日本プロレスの中邑真輔(現:WWE)や棚橋弘至、後者はレスラーとしてのみでなく経営者としても評価されるDDTプロレスリングの高木三四郎、日本初のローカル女子プロレス団体「センダイガールズプロレスリング」を旗揚げした里村明衣子、タイ王国で現地採用から「我闘雲舞(ガトームーブ)」を設立したさくらえみなどだ。

 読書会「第1ラウンド」の開始だ。まず参加者が順番に自己紹介から課題図書について感想や意見を述べていく。このイベントはプロレスファンの集いではなく読書会なので、現在のプロレスを知らない、そもそもプロレスを観たことがない参加者もいた。

 進行はファシリテーターに従うが、ルールはたったひとつ「他者を否定しない」のみ。これを守れば、他者の意見に乗って膨らませたり補足したりするのも自由だ。

 名古屋市内でバーを経営する参加者は、高木三四郎に興味をもったという。DDTはプロレス興行以外にも飲食店やストレッチ専門店など、選手がスタッフも兼ねる多角経営を行っている団体だ。そのバー経営者は同書で高木が述べていた「日銭が入ってくることの大きさ」に共感し、キャッシュフローの価値について語った。

 またある男性は本の中で紹介されていた、飯伏幸太 vs ヨシヒコの試合を見て衝撃を受けたと述べた。

 ヨシヒコとは端的に言えば「人形」レスラーだ。文字通り人間離れした闘いを見せる選手だ。DDTの公式YouTubeチャンネルで試合のダイジェストが公開されているので一度観て欲しい。

 一般的な読書会であれば、語ることに注力してしまうが、この日の会場はスポーツバー。動画をすぐ観ることができるため、全参加者がヨシヒコの衝撃的な試合を観てその凄まじさに驚きの声をあげていた。

 トークは自然と「第2ラウンド」に入る。テーマはほぼフリー。プロレスに対する疑問が挙げられると他の参加者が答えたり、プロレス観戦時のエピソードを述べたりと自然と語らいは熱を帯びていく。