イラクのモスル南方の町ハマム・アルアリルで、AFPの取材に応じるアマチュア画家のムスタファ・タイさん(2017年5月23日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】イラクのアーティスト、ムスタファ・タイ(Mustafa al-Ta'i)さん(58)は夜ひそかに作業する。イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」による残虐な支配下にある地域などで日中に目撃した暴力を、絵筆と鉛筆を使って記録するのだ。

 逆さづりにされた血まみれの男性の遺体、血だまりの中に倒れ、背中に切断された頭部が載った状態の男性の遺体、酸で顔を焼かれた女性――これらはタイさんが捉えてきた場面のほんの一部に過ぎない。

 タイさんは故郷のモスル(Mosul)南方の町ハマム・アルアリル(Hammam al-Alil)で、2014年に町がISに支配されてから2016年に政府軍が町を奪還するまで、恐怖を表す絵やスケッチ240点を描いてきた。

 タイさんは「ISは芸術の敵だ、生命の敵だ。だから私は彼らの犯罪や彼らがしてきたことを目にするたびに自分に言い聞かせた。私が語るんだと」と話した。

 タイさんは「ジャーナリストは一人もいなかったし写真を撮ることも許されなかった。だから私は場面を頭で記憶して、夜に家で描いたんだ」と語った。タイさんはオーブンやボイラーを修理する仕事をしているが、子どもの頃から絵を描くことに熱中してきたという。

 自宅のリビングで足を組んで座り膝に画板を載せたタイさんは「軍隊は武器で(ISと)戦う。私は自分の絵筆や絵の具、自作のスケッチや絵で戦う」と語った。

 7人の孫がいるタイさんはこれまで自分の作品のために身柄を拘束されたり、2回のむち打ち刑に処されたりしたが、それでも絵を描き続けた。

 タイさんは「私は描くことを諦めない。描くことに夢中だし、描いていると落ち着くんだ」と話した。
【翻訳編集】AFPBB News