中堅世代といわれる原口元気【写真:Getty Images】

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W杯最終予選、全ゴールの半分以上は“中堅世代”

 来年のロシアW杯に向けて強化を続けている日本代表だが、いまだに主力は2010年の南アフリカW杯や2014年のブラジルW杯を知るベテランたち。真の意味で世代交代を果たし、世界の舞台で戦える強さを身につけるには、1990年代前半生まれの「中堅世代」の自立だ。(取材・文:元川悦子)

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 今月シリア戦(7日=東京)とイラク戦(13日=テヘラン)の2連戦に挑む日本代表の欧州組合宿が5月31日に4日目を迎えた。選手たちのフィジカルコンディションを上げ、それぞれのバラつきをなくすため、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は連日午前と午後の2部練習を行っているが、この日は初日から参加している川島永嗣(メス)や岡崎慎司(レスター)ら9人と2日目に合流した大迫勇也(ケルン)の合計10人が午前のみで終了。31日昼に合宿入りした原口元気(ヘルタ)だけが単独で午後のトレーニングに臨んだ。

 指揮官を筆頭に11人のスタッフが見守る中、ランニングやインターバル走を消化した原口は「(スタッフが)豪華というか、なんか申し訳ない感じ。これくらいだったら自分でやれって言われたらできちゃうからね」と苦笑しつつも、いい汗をかいた充実感をにじませていた。

 2018年ロシアW杯アジア最終予選がスタートしてから、原口を筆頭に25歳前後の中堅世代の台頭が目立つ。昨年9月1日のUAE戦(埼玉)から7試合を終えているが、ここまでの得点者を見てみると、原口が4点、久保裕也(ヘント)が2点、本田圭佑(ミラン)、浅野拓磨(シュトゥットガルト)、山口蛍、清武弘嗣(ともにC大阪)、今野泰幸(G大阪)、香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(レスター)、吉田麻也(サウサンプトン)がそれぞれ1点ずつを挙げている。全ゴールの半分以上を90年代前半生まれの選手が占めるようになった。

 本田・岡崎・香川の3枚看板に依存していた2014年ブラジルW杯アジア最終予選、あるいは2015年アジアカップ(オーストラリア)の頃に比べると世代交代が急ピッチで進んでいるのは確かだ。さらに今回は井手口陽介や三浦弦太(ともにG大阪)、中村航輔(柏)といった90年代後半生まれのメンバーも加わってくる。それだけに、原口ら中堅世代がさらなる勢いを見せる必要があるはずだ。

年長者依存のメンタリティ。原口らに求められる仕事

 とはいえ原口は「若くても若くなくても僕は別にいいと思うし、日本代表が勝てばいいと思ってるので。ただ、自分は出てなきゃ嫌だし、出続けるにはやっぱり結果を出さなきゃいけない。世代交代だとかっていうのは僕はどっちでもいいですね」と淡々と語り、久保も「僕はチャンスをもらえた時に自分のプレーをするだけ。それがチームの結果に出れば一番いいので、特に意識することなく自分のプレーをやりたいと思います」と自らのパフォーマンスに集中する意向を示しているように、彼らの中では「自分たちがチームをけん引していく」という意識がまだまだ薄いようだ。

 原口や久保、大迫などは代表の主力に上り詰めたのが最近で、そういう考えにならないのも理解できる部分はある。今回、乾貴士(エイバル)という絶好調のサイドアタッカーが加わり、熾烈な競争を強いられそうな原口にしてみれば、自分が結果を出すことで精一杯という心境かもしれない。

 しかしながら、前回のW杯最終予選からチームに帯同している酒井宏樹(マルセイユ)が「(本田)圭佑くんは絶対的存在だし、あそこにボールが集まる。みんなそこに信頼を寄せている」としみじみ話したように、ロンドン・リオデジャネイロ両五輪世代には心のどこかで本田ら30代の年長者に頼っているところがある。それは紛れもない事実だろう。

 年長者依存のメンタリティから脱して、自分たちがどんどん前に出ていく意識を持ち、それをピッチ内外で表現できるようになってこそ、日本代表の真の世代交代が進んでいく。負けん気の強さを表に出せる原口、所属するハンブルガーSVで日本人初のキャプテンという重責を背負ってドイツ1部残留に貢献した酒井高徳などは、もっと率先して日本代表をけん引する仕事をしてもいいはずだ。

「(HSVで)キャプテンをやって『周りは悪くても自分は常によくなきゃいけない』と思いながらずっと戦っていたし、最低限いいプレーを見せて味方を勢いづけられるようにしたいと思って取り組んできました。チームが沈むようなシチュエーションでも『ポジティブに、ポジティブに』と考え、チームが自信を持てるように仕向けてきたつもりです」と酒井高徳はコメントしていたが、そういう発信力を多くの選手が持つべきだろう。

ベテラン陣の言葉の力。“中堅世代”の変貌が代表の起爆剤に

 長谷部誠(フランクフルト)や川島、本田ら日本代表のリーダー格の選手に共通するのは、全員の心を動かせる「影響力」と「存在感」を備えている点だ。

 例えば、川島であれば、苦しい時の心の持ちようを的確にアドバイスしてくれる。今回は落選の憂き目に遭った清武が「永嗣さんと話す機会がありましたけど、目の前の試合1試合を全力ですることが一番大事だと。いろいろ考えても結局、いいプレーができないし、どれだけ目の前の試合に集中してできるかがすごい重要だという話を聞けて、やっぱり頼もしい先輩だなと強く思いました」と語っていたことがあったが、迷いや戸惑いを抱えた若手を前向きにさせ、要所でプレーに集中させるような声かけができる。それが川島の強みである。

 本田にしても同様だ。2016年6月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(大阪・吹田)で初キャップを飾り、11月のオマーン戦(カシマ)で代表初ゴールを挙げた小林祐希(ヘーレンフェーン)が「『失敗した数が自分の自慢だ』って本田さんが言ってるけど、ホントにその通りだと思う」と語気を強めていたが、国を背負った経験の少ない選手には、その一言が大きな安心材料になるのだ。

 ピッチ上でいいパフォーマンスを見せて勝利に貢献することはサッカー選手にとっての最重要テーマだが、チームのために何をすべきかを瞬時に察知して動ける力を養うことも重要な要素。そういった器や懐の大きさを20代半ばのメンバーが体得してくれれば、日本代表はより強いパーソナリティの集合体になれる。原口、大迫、久保という伸び盛りのアタッカー陣にはその自覚をより強く持ってほしい。

「チーム全体としてやるべきことは少しずつ整理されてきているかなと。ただ、もっともっと結果がついてくれば、個人個人がもっと自信を持ってプレーできる。今はまず結果を出すことが一番大事じゃないかなと思います」と大迫は自らに言い聞かせるように話したが、ゴール数を増やして精神面の余裕が生まれ、周りを動かすアプローチもできるようになれれば、まさに理想的な循環だ。

 今回の6月2連戦で、日本代表の中堅世代がポジティブな方向に変貌できるかどうか。大きな期待を込めて見守りたい。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子