プレーリーハタネズミの雄と雌。米アトランタの研究所で(2017年5月30日提供)。(c)AFP=時事/AFPBB News

写真拡大

【AFP=時事】好きな人に出会い、一緒に時間を過ごし、体の関係を結び、その相手と添い遂げる──。これは、哺乳類の中では珍しい一雄一雌制の動物で、救いようもなくロマンチックなプレーリーハタネズミの話だ。

 今回、神経科学者チームがこのげっ歯類の小さな脳を調べ、神経生物学的見地からカップル成立の科学を垣間見ることができたという。

 プレーリーハタネズミが生涯のパートナーを選ぶ際、脳の意思決定をつかさどる前頭前皮質が、快楽や報酬を得る仕組みを制御する別の部位を活性化するとした研究報告書が5月31日、発表された。

 前頭前皮質は、側坐核(そくざかく)と呼ばれる報酬中枢を活性化するだけでなく、側坐核がどのくらい活動的になるかを制御する。これにより、プレーリーハタネズミがどれだけ早く「恋に落ちる」かが決まる。

 実験用プレーリーハタネズミの一雌一雄関係の形成は、新しいパートナーに体をすり寄せ始めるのがどのくらい早いかで判断される。ハタネズミはこの相手と生涯を添い遂げる可能性が最も高い。

 研究報告の共同執筆者で、米エモリー大学(Emory University)のロバート・リュー(Robert Liu)氏によると、この新発見のメカニズムは、新パートナーのにおいや鳴き声などの特徴を「(脳の)報酬系に刻み込んで、パートナー自体が報酬になるようにする」ことで作用するという。

 そして、このプロセス全体は、生殖行動によって加速される。

 リュー氏は、AFPの取材に「初回の交尾前後の(脳)活動の変化は、ハタネズミが体を寄せ合い始めるまでの早さと相関関係にあることが、今回の研究で明らかになった」と語った。

 研究チームは、雌のハタネズミと雄のパートナー候補とを交尾をさせないように注意しながら一緒に置き、雌の皮質ニューロンを光で活性化させてこの作用の再現を試みた。

 この試みは見事成功した。

■遠隔操作

 この翌日、光で活性化された雌のハタネズミは、見知らぬ雄よりもパートナー候補の雄に対して、交尾をした場合と同程度の明らかな親近感を示した。

 リュー氏は、AFPの取材に応じた電子メールで「雌が雄の近くにいる際に、前頭前皮質による報酬部位の制御を再現するだけで、雌がその雄に対してどれほど親しげに行動するかに影響を与えることができた」と説明している。「これは、つがいの形成に影響を及ぼす脳回路を遠隔操作するようなものだ」

 今回の研究は、人の社会的行動に関する研究に示唆を与えるとともに、自閉症や統合失調症といった、社会的なつながりの形成に難しさを示す患者の治療に役立つ可能性もあると、研究チームは指摘している。これには、恋人と一緒の時間を過ごすことで得られる楽しみといった感情を、2つの脳部位間の情報伝達を活性化することで経験することが可能になるといった例も含まれるという。

 研究の結果を受け、「ハタネズミにおけるつがいの絆の形成と、人が恋に落ちることは、その根底において神経機構の多くを共有している可能性が高い」と、リュー氏は説明している。

 人の場合でも、恋人の写真を見たり、においを嗅いだり声を聞いたりすると、ハタネズミで調査された脳の報酬系の同じ部位が活性化されることが、これまでの研究で知られている。

 共同研究者のエリザベス・アマデイ(Elizabeth Amadei)氏は、「だがこれまでは、この種の感情を引き起こすために脳の報酬系がどのように作用しているかについては分かっていなかった」と話した。
【翻訳編集】AFPBB News