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梶原由景の「間違いだらけのアプリde飲食店選び」



食にも精通するクリエイティブディレクター梶原由景が、足で見つけた”間違いない名店”を毎月紹介する。

梶原由景の「間違いだらけのアプリde飲食店選び」連載一覧ページ

 

今月の間違いない名店

Bonfiglio & Bread

アメリカ/ハドソン

住所:748 Warren St, Hudson, NY 12534

電話:+1 518-822-0277

営業時間:8:00〜16:00(火曜~木曜定休日)

かつて単なる倉庫街だったニューヨークのSOHO。アーティストが集い、ギャラリーやレストランが出来、結果一大トレンド発信地となりハイエンド・ショッピングエリアとなるに至った。当然アトリエが維持できなくなった彼らは安い家賃を求めて散って行くわけだが、一部はイーストリバーを超えブルックリンに落ちついた。

ちょっとした昔話だが時を経て1999年、アンドリュー・ターロウはブルックリンのサウス・ウィリアムズバーグに「DINER」をオープンさせる。メニューはなく、紙のテーブルクロスにホールスタッフが、ペンでその日のおすすめを書きなぐる。提供される料理はいわゆる従来のアメリカの食事ではない。素材の味を活かした、そっけない振りをしつつも丁寧な一皿。いわばニューアメリカン。これがブルックリンの食文化を花開かせることとなる端緒だった。のちに旗艦店となる「Marlow & Sons」も至近にオープン。さらに系列店で使う食材の仕入れの延長上にあるかのように食料品店「Marlow & Daughters」が出来、肉を取った後の皮革を使用する「Marlow Goods」なるアポイントメント制のショップにまで発展する。なんとも心地よいエコシステム。そしてあの「Brooklyn Lager」の工場の真ん前、20世紀初頭に建てられた縫製工場をリノベーションしたブルックリンの新名所「Wythe Hotel」が出来る。





かくも賑やかなブルックリンだからこそ、かつてのSOHOのような状況に至るに時間はかからなかった。いまやアップルストアや「Whole Foods Market」まで出店した。ザ・ニューヨーク!当然何もなかった頃から住み続けているブルックリンの住民たちは、この地を離れざるを得なくなる。選んだその先がハドソンではないか、というのが最近のニューヨーカーの話題なのだ。

ペンステーションからアムトラックで2時間超。この地こそがかつてのブルックリンのようなトレンドの萌芽を感じ取れる場所なのだという。わざわざここに泊るためにハドソンを訪れる人も多いという「RIVER TOWN LODGE」。エクスペディアなど大手宿泊予約サイトはおろか、あらゆる旅行代理店にその予約権を渡していないインディペンデントなホテル。ここに泊るためには彼らのサイトに行くしかない。今時のアメリカでそんなことがあるんだ、と逆に期待は膨らむ。そしてその期待は裏切られなかった。かつての「Wythe Hotel」を彷彿とさせる街を象徴する存在感。おしゃれだけど嫌味じゃない。



ハドソンの街自体はまだ閑散としているし、シャッター商店街の趣すらある。しかし、何故だろう、居心地がいい。世界の都会たるニューヨークの緊張感がまるでない。さて、「RIVER TOWN LODGE」の斜向かいにベーカリー「Bonfiglio & Bread」がある。おそらくこの街のレストランのパンはほとんどがここで焼かれているんだろう。朝食メニューも充実。一杯のコーヒーとパンを求める人が絶えない。素性の確かな素材で作られたパン。もちろん美味い。いい街にはいいパン屋がある。ハドソン、これから目が離せない。







文/梶原由景

梶原由景:幅広い業界にクライアントを持つクリエイティブ・コンサルティングファームLOWERCASE代表。Webマガジン『honeyee.com』、デジタルメディア『Ring of Colour』などでオリジナルな情報を発信中。

※『デジモノステーション』2017年7月号より抜粋