「自分には向いてなかった」という会社員を辞めて、フリーランスのテーブルコーディネーターとなった菅野有希子(すがの・ゆきこ)さん。「やり遂げなきゃ」という“情熱大陸病”に陥らずにゆるやかに働き続けるコツを話していただいた前回に引き続き、今回はフリーで仕事をする時のポイントを聞きました。

「フリーで仕事を続ける上で、最大のポイントは“協力者”です」と話す菅野さん。フリーランスは働く時間や場所が選べるという自由がある反面、基本的には一人で仕事を進めていくので孤独に陥りがち。「誰に相談したらいいのかわからない」「もっと大きな仕事がしたいのに手が回らない……」といった悩みもあるようです。

菅野さんは、どうやって協力者を見つけたのでしょうか?

友達が増えるだけの人脈作りはいらない

--現在、「TABLE MANIA」には「SPECIALIST(スペシャリスト)」として一時的に記事作成に参加してくれる専門家がいるそうですが、どのように集まったのですか?

菅野有希子さん(以下、菅野):はあちゅうさんと村上萌さんが運営しているオンラインサロンに入会していて、そこで私と同じアラサー世代の女性と交流ができました。「TABLE MANIA」の協力者たちとの出会いもオンラインサロンです。趣味や興味も似ている人が多くて、友達も作りやすかったです。

でも、「人脈作り」が目的では友達が増えるだけ。仕事には結局つながらなかったですね。友達を作るにも、自分がまず何か持っていないと、相手も興味を持ってくれません。先に、自分のやっていることを形にしておくことが大事だと思います。今は、いくらでも自分で何かを発信できるし、参入ハードルも低くなっています。文章ならnote、ハンドメイドならminneとか、アピールできるツールはたくさんあります。協力者を見つけたいなら、自分で何かをやることによって、興味の合う人と出会いが広がっていきます。私の場合は、ブログが名刺代わりになりました。

--SPECIALISTと組んで記事を作ろうと思ったきっかけは?

菅野:一人で淡々と記事を作り続けるのって、大変なんです。そこで、自分と違う専門性を持っている人を集めて、私はスタイリングに集中したいなと考えました。「TABLE MANIA」の協力者は、撮影ができる子や、フラワーアレンジメントができる子、プロジェクト管理ができる子など、それぞれ得意領域が違っているんです。だからスペシャリストとして掲載しています。

--一緒に組んで動くことで可能性・やれることは広がりましたか?

菅野:スペシャリストと一緒に作るようになってからは、複数人で作品作りをすることが増えました。活動しているうちに、媒体の方から連絡をもらうなど、それぞれに仕事依頼がくるようにもなりました。

--コミュニケーションや仕事の分担で気をつけていることはありますか?

菅野:スペシャリストは、みんな同世代・アラサー女性ですが、会社員とフリーランスの混合チームですし、既婚・未婚・子持ちなど、ライフステージもバラバラです。打ち合わせで時間を拘束することは極力避けて、撮影当日までLINEグループで連携しています。

「女性同士だから」ということで特別に気をつけていることはありませんが、それぞれの相性があるので、初対面同士の人が組む場合は、小規模で短期間の比較的小さなプロジェクトから始めるようにしています。また、ゴールや目的、どれくらいのコストをかけられるかはじめに確認します。

画像提供/菅野さん

--ゴールや目的とは?

菅野:例えばそのプロジェクトに対して、経験として参加したいのか、実績として残したいのか、ギャラが発生する仕事として取り組みたいかということ。コストというのは、かけられる時間や労力、予算などですね。

未経験でも物怖じしない

--最後に、「TABLE MANIA」を運営してよかったなと思うことや、好きなことを仕事にしたいと思っている人たちに向けてアドバイスをお願いします。

菅野:「TABLE MANIA」をメディア化したことで、スタイリング以外のお問い合わせも増えました。「文章も書いてみませんか?」と、いきなり企業案件を頂いたんです。自分が好きな世界を、ビジュアル化していたことが大きかったんだと思います。不安も大きかったんですが、未経験だからこそ「できるならやっちゃおう!」と、どんどん受けていきました。

画像提供/菅野さん

そうしているうちに口コミで広がっていって、テーブルスタイリング以外にも、生活雑貨やインテリアのスタイリングの仕事など、他の領域のお仕事にも繋がっています。何かやりたいことがある人は、未経験だからとか、しっかり準備しないとダメだって物怖じせず、まずはやってみることが大事です。発信することで、応援してくれる人や支えてくれる人も現れるはずなので、思い切って飛び込んでみるのがいいのではないでしょうか。「なんだ、案外自分にもできるじゃないか」という経験が自信を持たせてくれると思います。

<前編はこちら>「情熱大陸病」にならないゆるやかフリーランス生活

(撮影:池田真理)

小沢あや