アイドルにヒット曲が必要なくなる日……

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 国民的アイドルにとって、誰もが知っているようなヒット曲というものは絶対必要というのは、これまでの鉄則であったが、ここに来て、その大前提が揺らぎつつあるようだ。

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 例えば『ヘビーローテーション』や『恋するフォーチュンクッキー』といった、誰もが知っている楽曲を誇るAKBだが、CDの売り上げ数だけを見たら、あまり浸透していない最近の楽曲のほうが多いというのは一目瞭然であるし、乃木坂などは、『君の名は希望』を代表曲だというファンは多いが、紅白でも歌われたこの曲が浸透しているかというと、やはりファンの中だけの話題になることがほとんどというのが現状だ。

 こうなると、握手会商法だとか、非常識なまとめ買いだとか、選挙券商法だとかいった、いわゆる秋元商法がやり玉にあがることが多いが、実は男性アイドルにも、この波は確実に訪れている。

 SMAPが解散し、今や、ジャニーズ事務所の屋台骨を支えるグループといえば嵐ということになるのだが、では嵐の代表曲は?と聞かれて、すぐに答えられるファン以外の人はどれぐらいいるだろうか?

 いや、嵐のファンに聞いてみても、帰ってくる答えは『Love so sweet』や『Happiness』といった数年前の曲になってしまうだろうし、その曲だって『世界にひとつだけの花』(SMAP)や『宙船』(TOKIO)などに比べると弱くなってしまう。

 これは、何も楽曲の質とか、メンバーの魅力の優劣を示すものではなく、ビジネスモデルの変化がなせる現象であろう。

 つまり、誰もが知るヒット曲を歌っているグループのメンバーということを名刺代わりに、グループ活動以外の仕事に呼ばれていくようになるSMAPや(過去の)AKBに対し、嵐や乃木坂といったグループは、個々のメンバーの魅力、あるいは集客力、注目度といったものが高いので、個人のファンから、グループを知るようになるケースが多く、結果としてシングルよりも、アルバムやライブに金が集まるのである。

 事実、嵐はどのグループよりも、アルバムの評価が高いし、ライブはプラチナチケット化する。乃木坂も最新アルバムが初動で30万を超えるほどの大ヒットをしているわけだ。

 つまり、ヒット曲によって、知名度を集め、そこからメンバーの魅力を知ってもらうというパターンが廃り、曲はグループの『核』としてファンのために存在しつつ、メンバー個人個人のタレントパワーで知名度を広げていくという、従来とは逆パターンの売り出し方が、もう少なくともアイドル業界では定番化しているといっていいのではないだろうか?

 このことがいいことなのかどうなのかというのは、一個人である筆者には判断できないが、ビジネスモデルの多様化の代表的事象として、考えてみたいケースだと思われる。