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■どんなクルマ?

荒っぽい商売に思えなくもない

BMW M4 CS。BMWのモータースポーツ部門が、4シリーズ・クーペに施した極めつけの仕事がおそらくこれ。ベース・モデルとDTMチャンピオン・エディションを含めれば、第5のM4である。

希少性で購買意欲を煽ったぼったくりぶりは、ポルシェが991世代のGT3でやらかしているほどではないかもしれないが、派生モデルは何でもありな状態となっているのは事実。

なにしろ、より高価でスペシャルな仕様のM4 GTSの発売から1年ほどで、今回のM4 CSを投入したのだ。およそ2年間の生産が予定されており、限定車扱いではないとされている。

Mいわく、その期間に可能な限り多くの台数を生産するとのことで、年産1000台程度になる見込み。フランク・ファン・ミールCEOによれば、グローバルに見れば、その台数を売り切るだけの需要はあるという。

「M4 GTS」と、どう違う?

おそらく最も興味を惹かれるのは、M4 CSが、Mディビジョンの新たな、そしておもしろい何かのキッカケになりそうな点だ。

すなわち、この「CS」というのがM4にとどまらず、Mモデルの高性能グレードとして広く設定されるだろうということで、それについては関係者の証言も得ている。それを考えれば、ミュンヘン的に、この第1弾での失敗は許されない。

前回のGTSを考えれば、CSにリスクはない。M4 GTSは確かに驚くべきクルマだったが、使い勝手を主として、あらゆる部分でMモデルといっても許容できる範囲を超えるクルマだった。

価格は£120,000とべらぼうで、メンテナンスに通常より手間のかかる冷却水インジェクションを備え、コイルオーバーは手動調節式で、リアシートは排除。

英国の一般道を走るには脚が硬すぎて、昨年のベストドライバーズカー選手権では最下位に沈んだ。生産台数は700台だが、英国のショールームではいまだ新車が展示されているのも見かける。まだ新車で手に入ると喜ぶべきか、ヒット作にはならなかったと憐れむべきか。

ポルシェ911GT3 RSのような達成度と価格は、M4には少しばかりやりすぎだ。それにBMWが気づいて、走りは磨きつつも、GTSの不便な要素を取り除き、日常使いにも堪えるように仕立て、価格も多少下げたらどうなるか。

まさに、その回答がM4 CSである。

GTSにあったようなサーキット志向の香りを漂わせつつ、エンジン内部に噴射する冷却水の補充も、ガレージでジャッキアップしてのサスペンション調整も必要ないクルマが、ここに登場したのだ。

■どんな感じ?

数字で見る、M4 CS

カーボンFRPが多用されているのは、他のM4と同様だ。ベースモデルでも採用されるルーフはもちろん、GTSに投入されたボンネットとリアディフューザー、そしてCS用にあつらえられた固定式のフロント・スプリッターとリアのガーニー・フラップが、この軽量素材で造られる。

内装では、GTSと同じく軽量化を図ったドアトリムやセンターコンソール、簡素化したオーディオを備えるが、リアシートは残されている。

GTSと異なるのは、カーボンのバケットシートやカーボンセラミックのブレーキディスクが標準装備ではないこと。

また、調整が面倒な足回りは、コンペティション用をチューンし直したアダプティブ・サスペンションに変更されている。新デザインの鍛造ホイールには、ミシュランのパイロットスポーツ・カップ2を履く。

ブレーキディスクがスチールのままでも、CSはM4コンペティションより35kg軽い。このアドバンテージはGTSに比べれば半分ほどだが、そのメリットは小さくない。

しかし、M4 CSの改良点はそれに留まらない。最高出力は460ps、最大トルクはGTSと同等の61.1kg-mまで強化されるのだ。

もちろん、手間の掛かる冷却装置は抜きで。エンジン内部はコンペティションのものと変わらず、ソフトウェアを更新し、2基のモノスクロール・ターボを中回転域で積極的に使って、この性能向上を実現した。

軽量化とエンジンの強化、そしてカップ・タイヤのコンビネーションは、3.9秒での0-100km/h加速を可能にする。GTSに対し、コンマ1秒遅いのみだ。

明らかになった、ふたつのこと

前席はコンペティションと同形状の、厚いクッションを採用した快適なスポーツシートが据え付けられる。ただし、背もたれにはイルミネーション付きのロゴが入り、調整は電動ではなく手動となっている。

ドアの内張とセンターコンソールがGTS同様の軽量仕様であることは前述したが、ダッシュボード前面やセンタートンネル、ルーフやドアコンソールを覆うのはアルカンターラ。

シングルゾーンのマニュアル・エアコンや、音質は物足りないが十分にハイファイの利いたオーディオ、「プロフェッショナル・メディア」インフォテインメント・システムは、ハードコアさと現実的な実用性の適切なバランスをもたらしている。

モダンな高性能ドイツ車に求める便利さや豪華さはありながら、十分に軽いクルマで、日常的に乗っても楽しめる。

気になるサウンド

音に関して、ノーマルのM4に負けるのはオーディオだけ。4本出しエグゾーストはコンペティションと同じアイテムだが、遮音材の削減や、レッドラインを7600rpmまで引き上げたエンジン・マネジメントと相まって、力強くリアルなサウンドがキャビンに響く。

チタンパイプのGTSほどアグレッシブではないが、なかなかにアピールの強い音質となっている。軽量ドアパネルにはスピーカーが備わらず、合わせて人工のエンジン音を添加するシステムも取り払われているのがなおいい。

ノーマルのM4では、低中回転域のエンジン音やロードノイズが電子的に完璧な調律を施されるが、それよりとげとげしく、精細で、リアルな音を聞かせてくれるM4 CSの方が、ついついスロットル・ペダルを踏み込みたくなるに違いない。

試乗できたのはほんの2時間ほどで、場所はニュルブルクリンク北コース周辺。折しも24時間耐久レースの開催が迫っており、集まった観衆で混み合っていた。

そんな状況下では限界性能を試す機会には恵まれなかったが、それでもふたつのことがはっきりとわかった。まず、エンジンの性能向上はBMWのアナウンス以上に効果的。

そして、グリップとボディコントロールの改善はノーマル以上に精確でバランスの取れたハンドリングだけでなく、公道でのリラックスした走りももたらしてくれる。

AMG C63Sやアルファ・ジュリアを引き合いに

これまでのM4の各バージョンと同じく、このCSもコンフォート/スポーツ/スポーツ+の3モードが選択できる。これはアダプティブ・ダンパーやパワーステアリング、エンジン特性に影響する。

7速M-DCTの変速モードも3段階設定で、ダイナミック・スタビリティ・コントロールはありがたいことにDSCオフが可能だ。

ステアリング越しに伝わる路面のフィールや、センターから45°ほど切った際の初期レスポンスの鋭さは、どのモードを選んでも、わずかながら確実に、これまでより改善されている。

おそらく、ステアリングのフィードバックやボディコントロールの向上は、前後の径が1インチ違う新型ホイールと、リアが太いカップ・タイヤの恩恵がある。

これに、制御を見直したダンパーやパワーステアリング、アクティブ・デフも利いている。スプリングやダンパー、スタビライザーのハード面は、コンペティションと同じだ。

しかし両車を比較すると、CSの方がターンインは素速く、ハードなコーナリング時にもボディの挙動が安定している。上下動がうまくコントロールされ、凹凸を越える際にも浮き上がりが抑えられているのだ。それでいて乗り心地の粗さやしなやかさの不足、バンプステアの兆候は見られない。

ハンドリング・バランスはベース車と同様の傾向。中回転域の増強されたトルクはステアリングを切らずに、スロットルでコーナーの脱出アングルを加減しやすくなっており、グレードアップしたタイヤはグリップとトラクション、スタビリティを高めるのにひと役買っている。

コーナーへはより高い速度でフラットに進入でき、脱出の速さと安定性もコンペティションでさえ到達できないレベルだ。タイヤやホイール、ダンパー制御のプログラミングだけでここまで変わるとは、にわかには信じがたい。

メルセデス-AMGのC63Sやアルファ・ロメオのジュリア・クアドリフォリオの方が、ハンドリングのアジャスト性は高いと思う。それでも、公道上でさえ針の穴を通すような精確さは、CSの方が一枚上手だろう。

また、CSとコンペティションとで3.0ℓ直6のトルクカーブを比較するのも興味深い。CSの方が、中回転域ではるかに力強く感じられるのだ。

これはおそらくM4のもっとも注意を払うべきポイントだ。標準車はライバルたちよりやや物足りなさを感じ、5000rpmを過ぎないとそれを忘れることはできない。

その点、CSではひ弱さが払拭されている。3000〜5000rpmでのトルクは太く、その回転域での追い越し加速は衝撃的で、コーナーの脱出時やドリフトにも十分なほどだ。

■「買い」か?

たしかに良い でもライバルも良い

M4 CSの性能を振り返ると、これがよりパワフルなGTSを含めたラインナップ中でも、より洗練された完璧なM4だと結論を下したくなるだろう。

ハンドリングよし、サウンドよし、ハードでありながら公道での走りにも十分堪えうる。

とはいえ、運動性やハンドリングのバランスはM4ファミリーに共通する特徴が変わらず息づいていて、コンペティション・パッケージ・プラスもしくはミニGTSとでも呼びたいキャラクターに仕上がっている。

M4の標準車がお好みならそれはグッドニュースだが、そうでなければ標準車+£28,000(398万円)の出費が妥当だと決めつけるのは早計だ。£89,000(1,264万円)も出せば、クラス最高水準のスポーツ・クーペが手に入る。

このCSバージョンは、M4を高性能車のニッチなグループにおいてトップに押し上げるかもしれないクルマだ。われわれの評価でも、そこは絶対的に君臨する王者が存在しない流動的なポジションである。

しかし、AMGとアルファも、その座を狙う資格を備えたモデルを用意している。どれを買ったらいいか、申し訳ないが聞かれても困る。どれがいいと決めるには、その差はあまりに小さい。

BMW M4 CS

■価格 £89,130(1,266万円) 
■最高速度 280km/h 
■0-100km/h加速 3.9秒 
■燃費 11.9km/ℓ 
■CO2排出量 197g/km 
■乾燥重量 1580kg 
■エンジン 直列6気筒2979ccツイン・ターボ 
■最高出力 460ps/6250rpm 
■最大トルク 61.1kg-m/4000-5380rpm 
■ギアボックス 7速デュアル・クラッチ