川崎の攻撃をリードした中村もムアントンの異変を感じ取っていた。写真:徳原隆元

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 アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16。タイ王者のムアントン・ユナイテッドは、敵地でのセカンドレグで川崎フロンターレに1-4と敗れ、準々決勝進出の望みを断たれた。まさに完敗だった。
 
 先週火曜日にタイで行なわれたファーストレグから、ムアントン・Uは青山直晃、チャナティップ・ソングラシンを、また川崎は谷口彰悟、森本貴幸、ハイネルをスタメンから外した。
 
 スリパン監督は、彼らを外した理由を「ふたりともにコンディション不良のため」と説明。川崎はファーストレグでの3-1の勝利によって、有利な立場からの余裕のローテンションの意味合いが強いが、ムアントン・Uは明らかに連戦の疲労によるコンディションの低下が指揮官を悩ませている。
 
 試合は31分に小林悠、32分に長谷川竜也、さらに40分にエドゥアルド・ネットがゴールネットを揺らし、前半だけで0-3となる。2戦合計1-6と大差をつけられ、ラウンド8の切符の行方は、前半でほぼ決まってしまった。
 
 この状況をファンはどう感じているのか――。試合後ではなく敢えてハーフタイムに、ムアントン・ファンが陣取るアウェースタンドへ足を向けた。タイからオフィシャルツアーで来日したという男性ファンに話しを聞いたのだが「マイペンラーイカップ!(タイ語で大丈夫の意味)、後半にジェイ(チャナティップの愛称)が出てきて何とかしてくれるよ」と、大差で負けている悲壮感はこれっぽっちもない。楽しむことを忘れないタイ人気質にあっぱれである。
 
 72分に青山とチャナティップを同時投入するが、時すでに遅しである。後半にそれぞれ1点ずつを取り、1-4でタイムアップ。ムアントン・Uのアジアでの挑戦は終わった。
 
 試合を振り返って思うこと、ムアントン・Uは良くも悪くもチャナティップ中心のチームであることが際立つ試合となった。ディフェンスでボールを奪い前線へ付けても、攻撃を操る選手がいない。司令塔の不在はチームの死活問題である。
 チャナティップの札幌への旅立ちが迫るなか、クラブ首脳陣は策を講じている。先週、ウボンUMTユナイテッドからタイ代表若手のホープ、FWシロー・チャットンを、またシーサケットFCからブラジル人FWレアンドロ・アサンプサオの獲得を発表、しかしどちらもタイでの実績はあるものの、チャナティップとはタイプが異なる。補強はどうもしっくり来ない。
 
 試合後の監督会見で、スリパン監督に「チャナティップが居ないチームは、攻撃のエッセンスが乏しい。先週ふたりの大物選手獲得を発表したが、どちらもチャナティップとは異なるタイプの選手。彼の代わりを海外から獲得するようなビッグサプライズの準備はあるのか?」と疑問をぶつけると、こう返事が返ってきた。
「それについては、いまこの場でお答えすることはできません」
 
 邪推すれば、答えられない=準備している、とも受け取れるコメントだった。
 
 試合後の囲み取材、川崎の中村憲剛の言葉も非常に興味深いものだった。
「うーん、向こうの出方が僕らの予想外の出方だったので、向こうは3点必要なのでね、パワー配分とか関係なく、絶対前から来るだろうと皆で予想してたのに、『あれ? 来ねえのかよ?!』みたいな。ちょっと変な空気になって、読めなくて、ここからどうやって3点取ってくるのかなと。ウチが1点取って、今度は来るかなと思ったが来なかった」
 
 これで公式戦6連敗。国内では川崎のようなどこから攻めて来るのか読めない変幻自在のフットボールと対戦することがほぼない彼らからすれば、相手が悪かったということなのか。いや、高みを目指すチームには、それで総括してはいけない問題だろう。
 
 80分過ぎから川崎ファンが気持ち良さそうに歌い出したチャント、西部警察のテーマ曲を引用した「カーニバル」が頭から離れない帰路、帰国後すぐに控えるチェンライ・ユナイテッドとのリーグ戦を思い出し、嫌なイメージを抱いてしまった。タイ王者の負の連鎖はどこまで続くのだろうか。
 
 取材・文:佐々木裕介(フリーライター)