ナイジェリア・マイドゥグリの廃園になった遊園地で、遊具で遊ぶイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」によって親を失った子どもたち(2017年4月27日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ナイジェリア北東部ボルノ(Borno)州の州都マイドゥグリ(Maiduguri)にある既に廃園となった遊園地を訪れる幼い少年たちのグループ──路上で夜を明かした彼らが目指すのは、もう動くことのない園内の乗り物だ。

 靴も履かず、ぼろぼろの服を着た少年たちが向かったのはメリーゴーラウンド。塗装は剥げ落ち、鮮やかだった色はすっかり日焼けしてしまっている。

 もちろん木馬が動くことはない。しかし少年たちは、まるでディズニーランド(Disneyland)を訪れたかのように笑っている。日常の苦しみを忘れることのできる時間なのだろう。

 ボルノ州では、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム(Boko Haram)」によって大勢の子どもたちが親や保護者を失った。彼らは、そのほんの一握りの少年たちだ。

 遊園地の近くで働く人は、「彼らは保護下にない。だからここに来て遊んでいる。本来なら学校にいるべきだが、彼らに学校へのアクセスはない。見ていて本当につらい」と語った。

■「教育機会を与えなければ、すべてを奪うモンスターに」

 当局は、親を失った大勢の子どもたちが保護されない限り、マイドゥグリはイスラム過激派の温床であり続けると危機感を募らせる。

 しかし、当局は現在、厳しい貧困にあえぐ地域で家を失った大勢の子どもたちをどのようにして学校に戻すかという難問に直面している。これまで、こうした貧困地帯で教育は重要視されてこなかったが、教育こそが新たなイスラム過激派の台頭を防ぐ鍵となる。

 カシム・シェッティマ(Kashim Shettima)州知事は「ボルノ州には親を失くした子どもが、公式発表で5万2000人以上いる」「しかしその一方で、こうした子どもたちが10万人以上いるとする非公式のデータもあり、またその半数がマイドゥグリにいる可能性もある。彼らに教育機会を与えなければ、われわれのすべてを奪うモンスターになる。非常に大きな課題だ」と語った。

■容赦ない襲撃

 マイドゥグリの人口は倍増し、既に200万人を超えている。紛争を逃れ避難場所を求めて人々が流入しているためだ。その中には、子どもたちも大勢含まれている。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の児童保護の専門家サミュエル・マニオク(Samuel Manyok)氏は「一度も学校に通ったことがない子どもも大勢いる」「(状況は)ソマリアと南スーダンを合わせたのと同じくらい酷い」と説明している。

■痛ましい現実

 ボコ・ハラムに生活を台無しにされた子どもたちを学校に戻すことは、大勢が心に傷を負った社会に彼らを復帰させるためのハードルの一つに過ぎない。

 そうした子どもたちの一人、アイシャさん(15、仮名)は、元遊園地敷地内のコンクリート製のテーブルに着きAFPの取材に応じた。そして2015年にボコ・ハラムに村を襲撃され、家族で生き残ったのは自分だけだと語った。

 ボコ・ハラム側は、アイシャさんと戦闘員の一人とを結婚させろと迫ったが、両親がこの要求を拒否した。するとその場で父親が射殺され、母親は糞尿まみれの仮設収容所に放り込まれた。そして数日後、飢え果て疲れ果てた母親はとうとう娘を手放してしまったのだという。

 アイシャさんはボルノ(Borno)州のボコ・ハラムの拠点、サンビサ森林地帯(Sambisa Forest)で、ボコ・ハラムの戦闘員と結婚させられ、やむなく夫婦としての生活を送っていた。

 イスラム教徒の女性が使う「ヒジャブ」で頭を覆い、鼻に2つの飾り鋲をした、どこか用心深い目のアイシャさんは、ボコ・ハラムの戦闘員が幼い少年少女に爆発物を取り付けるのを見たという。

 ボコ・ハラムは家族のためと言って少年少女らに5万ナイラ(約1万8000円)を与え、(自爆すれば)天国に行けると話していたことを明らかにし、これを拒否した子どもたちがそのまま殺されてしまうとも述べた。

 アイシャさんは2016年12月、ナイジェリア軍がサンビサ森林地帯に進攻した際に救出された。彼女は今、マイドゥグリの国内避難民キャンプで、同じ村出身の男性と暮らしている。

 アイシャさんは現在、学校には通っていない。将来の夢は何かと問われても、よく分からない様子だった。質問後、しばらく時間をおいてから「服が私を幸せにしてくれる」とようやく答えた。

■「時限爆弾」

 マイドゥグリとボルノ州の一部地域では、2014年に閉鎖された学校が昨年末に再開した。しかし、その一方で、まだ数百校がボコ・ハラムに破壊された校舎の再建を待っている。

 シェッティマ知事は孤児問題の解決を目指し「州全土に大規模校20校」の建設を目標に掲げている。他方で、孤児8000人のための大規模な児童養護施設の建設案も出ている。

 建設計画を実行に移すためには、連邦政府から予算を取る必要があるが、連邦政府はあてにならないことで悪名高い。そのため、世界各国からの支援が大きな意味を持つ。

 ナイジェリア政府が、学校不足問題を早急に解決するのは難しいだろう。しかしこの問題に早急に対応できなければ、新たな暴力へとつながるリスクは増大する。

 ユニセフのマニオク氏は「彼らには人生をやり直すチャンスが必要だ。でなければ彼らは不安定な要因ともなり得る。まさに時限爆弾だ」と指摘している。
【翻訳編集】AFPBB News