「ユアスタで勝利から遠ざかっている」事実はチームにとってプレッシャーに。だからこそ、それを和らげた状態で選手たちをピッチに送り出したかった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第12回。テーマは「コミュニケーション」だ。途中出場したクリスランの2ゴールで逆転勝ちした5月28日の新潟戦、その裏側では何が起こっていたのか。劇的なスーパーゴールを生んだ会話術を明かしてもらった。
 
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[J1リーグ13節]仙台 2-1 新潟/5月28日(日)/ユアスタ
 
 リーグ戦に限れば、ホームでの勝利は1節・札幌戦(1-0)以来。試合終了の笛が鳴った瞬間には、ついガッツポーズも出てしまった。
 
 それくらい「ユアスタで勝利から遠ざかっている」事実はチームのプレッシャーとなっていた。だからこそ、それを和らげて選手たちをピッチに送り出したかった。
 
 ミーティングでは「リーグ戦では勝てていないが、ルヴァンカップでは勝てている」、「今季初の逆転勝ちはユアスタで戦ったルヴァンカップ3節・清水戦だ」、「リーグ戦だろうがルヴァンカップだろうが、その勝利はチームが成し遂げてきた成果。思い切り戦ってこい」と話した。
 
 その効果があったのか、前半の出来は良かった。前節の横浜戦同様に試合開始早々にビッグチャンスを迎え、「この試合も相手陣に押し込んでプレーできるだろう」と。ただ同時に、「またチャンスを逃してしまったか」という気持ちもなかったわけではない。
 
 それでもカウンターを受けてのピンチはほぼゼロ。流れも決して悪くなかった。こちらとしては右サイドアタッカーのホニ選手を警戒していて、彼に勢いを持って前に出て行かれたくなかった。だからこそ、左サイドを使って攻めようとした。
 
 すると、(永戸)勝也の攻め上がりに対して、思っていた以上に下がり切ってくれたので、前半のカウンターに怖さはなかった。完全に押し込んでおり、粘り強くボールを動かしていれば、どこかに綻びが出てくるだろうと思っていた。
 
 ただ、後半になると状況が少し変化してしまう。うちは下がり切った新潟守備陣を攻略するために、最終ラインの立ち位置を修正して、大岩(一貴)が少し前進できるようにした。しかし、相手もホニ選手のポジショニングを高めにしてきており、結果的に62分の失点につながった。
 
 前掛かりとなったこともそうだが、何より細かなミスが増加したのが良くなかった。マイボールの失い方が悪く、鋭いカウンターを受けてしまった。前半と違って攻め残った新潟攻撃陣に、こちらの最終ラインの裏のスペースを突かれてしまったのだ。
 
 ただ、「相手が攻め残っている=前半よりも新潟守備網の堅固さが落ちている」ということ。シャドーに楔のボールが入るシーンは明らかに増加し、「崩せる」と選手たちも実感をしていたとは思う。そんななかでの先制点献上となってしまった。
 実は、62分の失点前から選手交代で流れを変えようという準備はしていた。だが、すぐにこちらが動くと「ベンチが焦れてしまった」と選手に思われてしまう。そのため、選手交代は少し間をおいた(66分に梁勇基に代えて西村拓真、石原直樹に代えてクリスランを投入)。
 
 何かを変える必要があった状況で頭に浮かんだのは、ルヴァンカップでのクリス(クリスラン)、(佐々木)匠、(西村)拓真の良いコンビネーションだった。匠はU-19日本代表としてトゥーロン国際に行っていて不在だったが、クリスと拓真をセットで出場させたら面白いと考えた。
 
 ちなみに74分の3枚目の交代はハチ(蜂須賀孝治)から中野(嘉大)だったが、これには「ドロー狙いじゃない。絶対に逆転するんだ」というメッセージを込めていた。