ラナ・デル・レイに通じる普遍的なサウンド感覚をたたえた、ザ・ビッグ・ムーン『ラヴ・イン・ザ・フォース・ディメンション』(Album Review)

写真拡大

 ジュリエット、ファーン、ソフ、セイラというロンドンっ子4人で構成されたガールズ・バンドのザ・ビッグ・ムーン。彼女たちは今春、デビュー・アルバム『ラヴ・イン・ザ・フォース・ディメンション』をリリースした。近年ではザ・マッカビーズやザ・アマゾンズといったUKの若手有力グループを世に送り出し、カナダのクリスタル・キャッスルズやオーストラリアのテーム・インパラといった実力派の作品も紹介している名門フィクション・レコーズからのリリースとなっている。

 ザ・ムーンからザ・ビッグ・ムーンに改名し、2015年にシングル「Sucker」でデビューした彼女たちは、翌2016年にフィクション・レコーズと契約。「Cupid」、「Silent Movie Susie」といったシングルを放ちながら注目を集めてゆく。デビュー・アルバムの発表に至ってデビュー曲「Sucker」は再レコーディングされ、新たにMVも制作・公開された。アルバムのプロデューサーを務めたのはキャサリン・マークス。ウルフ・アリスやザ・アマゾンズのプロデュースも担当してきた、気鋭の女性プロデューサーである。

 気だるいトーンの内側から激しい感情表現を迸らせるザ・ビッグ・ムーンのロックは、文芸少女のような一面と、退廃的でワイルドな一面を併せ持っている。ぶっきらぼうなコードストロークと物悲しいフレーズ折り重なって紡がれる「Sucker」は、恋人たちの永遠に続くかのように思われる倦怠感が立ち込めている。また、思い切りの良いディストーション・サウンドが溢れ出す「Silent Movie Susie」は、立ち去った女友達に寄せる思いをバンド一体のコーラスで描き出している。

 西部劇仕立てのドラマとなった「Sucker」のMVからは、インディー・ロック的でありながらもはやロンドン出身という地域の枠組みを越え、ユニバーサルな感情表現を繰り広げるザ・ビッグ・ムーンのスタンスが表れているように思える。2010年代の米サイケ・ポップの甘い倦怠感や、ポスト・グランジの荒々しいサウンドをあっさりと消化してしまうあたり、ラナ・デル・レイのようなメインストリーム・アーティストにも通ずるものがあるだろう。

 印象深く耳に残るコーラスがデザインされた先行シングル曲「Formidable」や、こちらもアルバムのために再レコーディングされた佳曲「The End」など、恋愛における若く等身大の困惑をありのままに、独創性あふれるソングライティングへと落とし込んで見せた。『ラヴ・イン・ザ・フォース・ディメンション』は、バンドのそんな手さばきも素晴らしいアルバムだ。(Text: 小池宏和)


◎リリース情報
アルバム『ラヴ・イン・ザ・フォース・ディメンション』
2017/5/17 RELEASE
HSU-19502 2,100円(tax out.)