外資系企業で生き残るための食事法

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オックスフォード大学大学院で修士号を取得、ほかにも英国有名校のMBAを持ち、数々の外資系企業で重職を歴任――。そんな山田美樹さんが、自身の仕事術を『外資系で学んだすごい働き方』(プレジデント社)にまとめました。その内容はずばり「すぐに役立つ」仕事術。今回は著書から「パフォーマンスを上げる食事法」について紹介します。

■基本は自分で作ったものを食べる

体調を整える上で最も大切なのは、何といっても食事です。いい結果を出しているビジネスプロフェッショナルには、食べ物に気を遣う人が多いです。

食事だけでなくおやつにいたるまで身体にいいもの、また脳にいいものを食べるようにしています。

美食家として知られている革命期のフランスの政治家ジャン・アンテルム・ブリヤ= サヴァランの言葉に、「Tell me what you eat, and I will tell you who you are.」というのがあります(もともとはフランス語ですが)。食事が、仕事のパフォーマンスや人生の質に直結しますので、ビジネスプロフェッショナルは、口にするものすべてを良質にすべきです。

私自身は、昔は「作る時間がもったいない」と、毎日外食という生活でした。

朝ご飯も、会社近くで買ってデスクで食べ、お昼も夕方のおやつも夜ご飯もコンビニやお弁当屋さんで買ったものを食べることが多かったのです。野菜サラダをつけ加えて、ヘルシーな食事だと納得させたりして、コンピューターの前で食事をしながら仕事をしていました。

1日15時間くらいコンピューターの前に座って働いていた時もあります。しかし、コンピューターの前で、1人でテイクアウトのお弁当などを食べながら仕事をするというのは、生産性が非常に下がります。

ずっと同じところで仕事も食事も行っていると脳が活性化しないからです。

外に食べに行くというのは、仕事の生産性を上げるうえでも意味のあることだったのです。せめて食事の時くらいは仕事場を離れて、オフィス内でも休憩用の場所に移動して食事を取るべきです。脳を休ませることで、午後の仕事のパフォーマンスも上がるからです。

外食だけで、長時間コンピューターの前に張り付く生活をすると目に見えて肌がぼろぼろになり、体重も増えます。いつも疲れていて、頑張っているけれども仕事のパフォーマンスも悪いような時は、体調を崩して、うつ症状が出たりもしました。

こうした体験を反省し、お昼が外食になった場合でも、野菜とたんぱく質が取れるメニューを選びます。

夜は、自分で食事を作るようになりました。コンディション管理をしっかりしていかないとパフォーマンスも上がらず、精神的にもどんどん落ち込んでいくというのを実感したからです。

■シンプルな料理は身体にもいい

今は朝と夜は基本的に自分で作ったものを食べています。

もともと料理は気分転換の一つとして、趣味でお菓子を作ったりもしていたので、朝食、夕食を自分で作るのは苦になりません(本当に仕事が詰まっている時はちょっと大変ですが)。毎日のご飯は特に凝ったものは作ってはいないため、そんなに手間も時間もかかりません。

旬の食材を使うことにこだわるくらいで、朝はフルーツと葉物野菜のスムージー、夜は旬の食材をさっとシンプルに料理して(ゆでるか焼くだけ)、だしやスパイスなどで薄く味つけしたものを食べるというのを基本にしています。シンプルな料理のほうが、手間もかからないだけでなく、身体にもよいのではないかと思います。

添加物の多い加工食品は、ほとんど使いません。添加物を体外に排出するのに、身体に負担がかかりますので。コーヒー、お酒といったカフェイン、アルコールも平日はほとんど口にしません。飲みものは、ノンカフェインのお茶、ミネラルウオーター、炭酸水が基本です。

忙しく働いているビジネスプロフェッショナルは、買い物に行く時間を捻出するのも一苦労ですが、私はいつでも旬の食材が手に入るように、引っ越しをした際、徒歩1分以内に深夜営業しているスーパーがある物件を条件に家を探しました。

ネットスーパーは、注文と配達に時差があったり、受け取るのに自宅にいなくてはいけないので、かえって時間が制約されるため使いません。

食事をどうするのかは、いい仕事をするためにも最優先の課題なのです。

■砂糖はあまり使わない

朝はフルーツと葉物野菜をどんどん切ってミキサーで30秒で作れるスムージーが中心ですが、自家製のジャムを塗ったトーストや自家製のヨーグルト(どちらも煮込むだけか放置するだけ)に熱い一杯の紅茶といった洋風の朝食をとることもあります。

紅茶にもジャムを少し入れてロシアンティーにしたり、ミルクにはちみつ、しょうが、またはシナモン、クローブ、ナツメグ、カルダモンなどのスパイスを加えることもあります(ちなみに紅茶は、朝はタンニンが多めで目が覚めるくらい濃く淹れたモーニングティー、午後は夜の睡眠の質に影響しないよう低カフェインのアフターヌーンティーを選んでいます)。

ジャムを自分で作るようになったのは、うつ症状が出て太り始め、白砂糖をできるだけとらないように心がけるようになったからです。使用するのは、ラズベリー、ブルーベリー、イチゴ、マンゴー、ルバーブ、ブドウ、リンゴ、ゆずなど季節の果物です。

作り方は非常に簡単で、お鍋に黒砂糖と皮やへたを取った果物、レモン汁を入れ、とろ火にかけて放置しています。時折かきまぜ、あくをすくう程度。

小麦も精製されたものでなく全粒粉を使ったり、あるいはそば粉にしたりしています。

健康マニアというわけではありませんが、自分のできる範囲でコントロールするようにしています。お菓子も、砂糖はあまり使いません。マクロビオティックスイーツ風のものを作って食べています。

そういうものを作る余裕がない時は、無塩のナッツ類かドライフルーツです。コンビニやスーパーで買って、小さなタッパーに詰めて持ち歩いています。血糖値が急激にあがらない低GI値のものを食することで、眠くなったりせずに集中力が維持でき、仕事の生産性が上がります。

■「だしの素セット」を作っておく

忙しい時のための「時短料理」レシピも数多く開発しました。「時間がない」時は、鍋やスープ系、オーブンに放り込んだままにできるメニューとなります。

前もって簡単な準備をしておくと、毎日ご飯を作るのは、仕事が忙しい時でもそれほど重荷にはなりません。

たとえば暇な時にテレビを見ながら、鰹節や昆布をはさみで切り、いりこの細かくしたものと混ぜた「だしの素セット」を作ってストックしてあります。

出勤前にだしの素セットを水につけたまま出かければ、帰宅時にはだしが取れていて、味噌汁や煮物、スープなどにそのまま使えます。大根などそのあたりにある野菜や油揚げを入れて温めて味噌を溶かせば、わずか10分でそれなりに充実したお味噌汁ができてしまいます。

■調味料もあまり使わない

ご飯も出かける前に吸水させて、帰宅後、土鍋で炊いています。土鍋だとわりと時間もかからずに炊きあがります。余った分は、すぐにラップで包んで急速冷凍し、忙しい時はそれを解凍して食べるというふうにすると、そんなに時間はかからないのです。

調味料はあまり使いません。醤油はほとんど使わず、基本的には瓶詰めされているだしとレモン汁やお酢、ドライハーブ、スパイスなどで調味しています。

塩分や添加物を多く取ると、排出するために身体に負担がかかり、仕事の集中力も途切れがちになるように感じます。

これはロンドンにMBA留学していた時の影響からきています。自費留学だったため、お金に余裕がない上に、当時のイギリスにはまだ和食用の食材があまりなく、醤油も高かった。そのため、仕方なくレモンやビネガーで味つけすることが多かったのですが、それでも十分おいしいことに気がついたのです。

また当時、実家からたくさん送られてきた乾物を使った料理のレパートリーも広がりました。今の私のシンプル料理の土台はロンドンでの窮乏生活(?)中に作られています。

■ご飯と納豆、生卵でもいい

一見、大変そうな煮込み料理やグリル料理も実は、手間がかかりません。野菜などの素材を適当に切って、鍋に入れてとろ火で煮込むか、オーブンに入れて焼けばいいのです。

野菜は、根菜類が中心ですが皮をむきません。端だけ切り落として、食べやすい大きさに切るだけです。

本当に忙しくて余裕がない時は、ご飯と納豆、生卵だけでも食べるようにしています。

キムチ、ネギ、のり、ごま、ごま油などを加えることもあります(ちなみに、ねぎとのりは調理バサミで切ります。めんつゆを少量足すとおいしいです)。

さらに仕事が切迫して時間に余裕のない特に朝は、果物や野菜を切ったりなどしていられないので、必要な栄養素がすべて入ったプロテインシェイクを飲んでいます。30秒で朝食は終わり。

煮込みや具だくさんスープは、手間はかからないけれど、ちょっとしたご馳走のように見えるだけでなく、実際食べると美味しい。

毎日、料理することはそんなにハードルが高くないのです。

エキストラバージンオリーブオイル、亜麻仁油などの良質の油も、バルサミコ酢や赤ワインビネガーと合わせてサラダのドレッシングに使い(小瓶に材料を入れて振るだけ、10秒)、積極的に摂取しています。

カロリーよりも、野菜とたんぱく質、糖質のバランスに気を使い、満ち足りた食事になるようにしています。

良質の食事をすることで、質の高い、満ち溢れるようなエネルギーを維持し、パフォーマンスを高めることは、ビジネスプロフェッショナルにとって不可欠と言えましょう。

※本連載は『外資系で学んだすごい働き方』からの抜粋です。

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山田美樹(やまだ・みき)
外資系企業社員
1975年埼玉県行田市生まれ、行田市育ち。上智大学比較文化学部卒業後、オックスフォード大学大学院社会人類学修士(M.Phil)を経て、欧州系戦略コンサルティングファームCVA、グローバル会計事務所Deloitteに勤務。その後、ロンドンビジネススクールにてMBAを取得し、組織・人事領域を専門とするコンサルティングファーム、ワトソンワイアット(現Willis Towers Watson)に入社。これまで、大手企業を中心に15年以上、100社以上の経営戦略を実現する組織と、個人のミッションを実現するキャリアの構築を支援し、ハイパフォーマンス人材の発掘・評価も手がける。現在は、大手外資系ヘルスケア企業にて、社内の人事戦略立案、人事課題の解決に従事。共著に、『攻めと守りのブランド経営戦略』(税務経理協会)。GCDFキャリアカウンセラー(Global Career Development Facilitator)、認定レジリエンストレーニング講師。寄稿、講演多数。本書が初の単著。

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(山田 美樹)