Official White House Photo Shealah Craighead(Public Domain)

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 トランプ大統領の中東から始めた初外遊は、アラブ圏における米国の存在感を少しは取り戻すことになったようだ。

 オバマ前大統領は中東におけるスンニ派とシーア派の均衡を求めようとして、イランとの核合意を結んだ。しかし、それは逆にスンニ派の米国への不信を生むことになった。一方のイランも核合意以降も米国への敵対意識は衰えない状態が続いている。

 その結果、オバマ外交が得たものは中東における米国の存在感の喪失であった。このオバマ外交によって、中東で最も強い絆で結ばれいるべきはずのイスラエルからもオバマ外交は無視されるようになった。

 また、、アラブのリーダー国サウジも、オバマを裏切り者と見做すほどに両国の間は冷めた関係になっていた。しかも、米国人が外国政府をテロ行為で訴えることを可能にする通称「9・11法案」が成立し、ニューヨークテロで犠牲者の家族がサウジ政府に損害賠償請求ができるようになって、サウジはオバマ政権への信頼を完全に失うことになっていた。

 その様な状況の中で、トランプ大統領が誕生したのである。

 トランプの中東外交はイランを敵と見做すのと同時に、テロ組織イスラム国の撲滅である。この2つの敵を意識しての外交の展開である。しかし、米国はこれまでのようにその為の軍事負担は出来ない。その代りにアラブ諸国の間でNATOのような軍事機構を創設して(参照:「HBO:サウジが推進役となって「イスラムNATO」の創設に向かっているとの噂が浮上」)、参加国でその維持費を負担。米国はその背後から軍事支援を行なうという展開に変化した。また、イランというアラブ諸国と共通の敵を抱えているイスラエルは情報部門や軍事技術の提供をアラブ諸国に行うとした。

◆イスラムNATOの目的

 イスラムNATOには次のような目的があるとされている。

 加盟国の平和と安全の維持から始まって、加盟国の災害などによる復興支援や紛争解決に協力するといった事や、陸上、海上、空においてテロや海賊など敵の攻撃からの防衛といったことを提唱している。それは、北大西洋条約機構(NATO)の機能をそのまま模写したようなものである。NATOにおけるかつての敵ソ連が、イスラムNATOではイランという位置づけになる。

 今回、トランプ大統領はサウジ訪問で、イスラムNATOの構築を鮮明に提唱したのであった。米国が考えているこの組織の核となる国はサウジ、アラブ首長国連邦、ヨルダン、エジプトである。ヨルダンは小国ではあるが、エジプトのムバラク大統領の崩壊の後、中東における米国のアラブにおける代理人という役目を担っているのがヨルダンのアブドゥッラ2世である。

 サウジの首都リヤドでは、トランプ大統領は集まった54か国の代表を前にイスラム国などテロ組織との戦いで結束を求めたのであった。また、これまでのように米国からの支援は期待できないということも明言したのである。即ち、アラブ諸国同士で自主的結束を促したのである。

 集まったアラブ諸国の代表にとって、米国と共に敵が誰であるのかということをトランプ大統領は明確にし、その為の米国からの協力は惜しまないと伝えたのであった。トランプのこの姿勢を前にして、アラブ諸国はオバマ前大統領の時に欠けていた米国の指導力の復活を確認したのである。

◆それぞれの「メリットと思惑」

 その見返りとでもいうべく、サウジは軍事力の強化として<1000億ドル(11兆円)の武器調達>を決め、<10年先には3000億ドル(33兆円)にまで及ぶ>という意向まで提示したのである。これは、米国で<100万人の雇用を生む>とされている。また、<400億ドル(4兆4000億円)を米国に投じて、サウジのインフラの改善>を要請した。(参照:「Publico」)