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 2013年のボストンマラソンで起きた爆弾テロを題材にした映画「パトリオット・デイ」公開を控えた5月29日、日本大学危機管理学部で、本作の上映と映画に沿って“日本のテロ対策の方法と課題”をテーマにした特別講義とパネルディスカッションが開催された。

 映画では事件発生後わずか102時間で犯人逮捕に至るまでの劇的な展開が、捜査班や被害者、犯人の目線で描かれていく。特別講義には同大学の福田充教授、河本志朗教授に加え、公安、警備局を歴任した元警察官で小説家の濱嘉之氏、実際にボストンマラソンにランナーとして参加し、爆弾事件に遭遇した梅松瞳氏が出席した。

 濱氏は事件発生から102時間後のスピード逮捕だった点について「奇跡ではあるが、それを生む必然が備わっていた。そのための訓練があった」と指摘し、3年後にオリンピック開催を控える日本も対策及び訓練を「考えなくては」と語る。河本教授は逮捕までの早さに加え、死者が3人にとどまり状況次第で死の危険性もあった重傷者全員が、迅速な搬送と治療により命を取り留めたことに触れ「ボストンでは10年以上前から、手製爆弾テロが起こるかもしれないと準備をし、警察、消防、自治体、ボランティアが訓練を繰り返していた。(迅速な対応は)決して偶然ではない」と語った。

 事件発生時、ランナーとして走行中だったという梅松氏は、その後、突然コースが閉鎖され、理由を知らされずにレースの中止が通告され、携帯電話のメールで事件の発生を知ったと述懐。ランナーへの対応や解放後の移動などで「ボランティアの方々に助けられた部分がすごく大きかった」と証言する。一方、日本では医師免許を持っていても、責任問題などからボランティアによる医療行為が止められている現状があることなどに触れ、市民やボランティアの果たす役割の大きさ、その必要性を訴えた。

 パネルディスカッションでは、学生からも映画や事件に対する活発な意見や感想が飛び出した。特に爆弾事件、および警察側の視点で描かれたこの映画をきっかけに、イスラム教徒への偏見や憎悪の増加、彼らを“悪”ととらえがちな風潮を懸念する声が相次いだ。河本教授は、テロリストがテロを起こすに至る要点として「今の社会への矛盾を感じること。解決する方法が暴力しか存在しないこと。実行したその先に望んだ社会がやってくるはずというビジョンがあること」の3点を挙げ、IS(イスラム国)やアルカイダなど過激組織が「十字軍を討伐する聖戦(ジハード)」を掲げ、言葉巧みに人々をテロへと導いていると指摘。濱氏は「宗教を学び、理解すること」がリスクコミュニケーションの上でも重要であると、危機管理を学ぶ学生たちに呼びかけた。

 「パトリオット・デイ」は、「ローン・サバイバー」「バーニング・オーシャン」のピーター・バーグ監督と主演マーク・ウォールバーグの最新タッグ作。6月9日から全国公開。