50年以内に「火星に一番乗り」実現する企業はどこだ?

写真拡大

今から50年も経てば人類は火星の土を踏めているのだろうか。質問サイトQuoraに寄せられた質問に、この分野のイノベーションの提唱者であるニコラス・ネルソン(Nicolas Nelson)が答えた。

人類が50年以内に火星の土を踏めるかどうかは、5つの機関にかかっていると言える。そのうち3つは政府機関で、NASA、CNSA(中国国家航天局)、そしてESA(欧州宇宙機関)だ。NASAとCNSAには有人飛行の技術があり、ESAも50年のうちには追いつくはずだ。互いに協力する可能性もあるし、ロシアの国営宇宙公社ロスコスモスやインド宇宙研究機関(ISRO)などと共同で計画が進む可能性も考えられる。

残りの2つがスペースXとブルーオリジンで、それぞれイーロン・マスクとジェフ・ベゾスらが率いる民間宇宙開発企業だ。意志と資金さえあれば、政府系の機関よりも早く、人類を火星に送り込むことができるだろう。

資金力ではベゾスの方がマスクよりも上だが、火星への有人飛行の実現競争においては時間を掛けて確実に前進するというスタンスだ。ベゾスはまず月に基地を設置し、それがある程度完成してから初めて火星への有人飛行に本格的に取り組む考えだ。

一方のマスクは火星への移住計画に前向きだが、火星に一番乗りしたいとは思っていない。まずは他の機関が実現するのを待ちたいと述べている。しかも、研究開発やロケットの製造に投じられる資金は潤沢とは言えない。マスクは既存の技術と火星の環境を最大限に利用する「マーズ・ダイレクト」に近い構想を持っており、火星到達後、探索には時間を掛けずに移住計画をすぐに進める考えだ。

マスクが有望だが資金面に課題が

だが、資金面の課題は大きい。テスラのバッテリーの巨大工場のギガファクトリーや、ボーリング・カンパニーのいずれかが失敗すれば、スペースXが道連れになる可能性もある。マスクの火星移住計画の運命は、ある意味テスラの新車の売れ行きにかかっているのかもしれない。

さらに、マスクが志半ばで亡くなっているか破産している可能性もある。その一方でスペースXは、すべてがうまくいけば、10〜12年後には火星に人間を送り込めるかもしれない。しかし、その実現を妨げる要素はたくさんある。

一方で、マスクが失敗したとしても、ベゾスが火星に人を送り込んでいる可能性もある。ただし、実現には30〜40年はかかると見られる。

また、50年のうちにはNASAとボーイングのチームも、2〜3回は火星への有人飛行を成功させているかもしれない。火星に国旗と足跡を残し、地質試料を持ち帰り、ミッションが成功して地球に帰還しているかもしれない。だが、アメリカの議会は宇宙開発に対して気まぐれで、政権が交代すると方針が変わるのがネックだ。NASAとボーイングによる火星への有人飛行は可能だが、結局のところどう転ぶかは分からないのだ。

ESAとCNSAについても同じだ。火星に人間を送り込むという政府の方針が揺らがず、外交ポリシーの一致や科学的努力の協調が実現すれば、いずれの機関にも火星に人間を送り込めない理由はない。だが、現在の政治状況を考えると、妨げとなる要素があまりにも多い。戦争が勃発したりその危険性が高まったりするだけで、計画は簡単に50年程度、棚上げになる。