「Thinkstock」より

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 ふるさと納税、確定拠出年金……。世の中には会社員でも利用できる、節税につながる制度が存在しています。でも、「聞いたことはあるけれど実際には利用していない」「知っているようで知らないのだけれど今さら聞けない」という方も多いのではないでしょうか。

 そこで、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が今さら聞けないそれらの制度について解説していきます。

●第4回:結婚すると節税に?配偶者控除の話(2)

啓子「亮子さんのご家庭では、亮子さんが納税者でご主人が控除対象配偶者だったりしないのですか?」

亮子「確かに、妻が納税者で夫が控除対象配偶者、という家庭もあるでしょうね。我が家は、経済的にそれぞれ完全に独立した状態だから、配偶者控除は誰も使えない」

啓子「今は共働き世帯が専業主婦世帯を上回っていますし、社会全体でみてもそういう傾向があるのかもしれませんね」

亮子「そういう社会の変化もあってか、配偶者控除は2018年から変わることになっているよね」

啓子「はい。意外と大きく変わるなあ、と感じています。そこで、今回はまず現状の『配偶者特別控除』について説明したうえで、18年以降の改正について触れていきます」

●配偶者控除を受けられなくても、「配偶者特別控除」を受けられる可能性あり

 配偶者の所得が38万円を超えるため、配偶者控除の適用が受けられない場合でも、配偶者の所得金額によって、一定金額の所得控除を受けられる可能性があります。この制度を「配偶者特別控除」といいます。

 この制度を受けるためには、(1)納税者本人(例えば夫)の合計所得(※)金額が1,000万円以下であることと、(2)配偶者(例えば妻)の合計所得金額が38万円超76万円未満であることが条件となります。配偶者特別控除額は最高で38万円ですが、配偶者の合計所得金額が増えると控除額がどんどん少なくなっていきます(次表参考)。

※合計所得とは
所得にはさまざまな種類があります。会社員が勤め先から受け取る給与・賞与は「給与所得」に分類されます。収入が給与のみであれば、合計所得は給与だけ考えればOKです。ちなみに自営業の方の所得は「事業所得」、不動産に関する賃借料等で収入がある方は「不動産所得」といったように、発生した所得の性質によって分類がなされ、これらの所得を合計したものが「合計所得」となります。

●「配偶者特別控除」を受ける方法

 配偶者控除と同様に、配偶者特別控除を受けるためにも申請が必要となります。配偶者控除の際は「扶養控除等(異動)申請書」を利用しましたが、配偶者特別控除を受けるためには、年末調整時に「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」を会社に提出することになります。提出のタイミングは会社によって異なると思いますが、通常この書類も会社から配布されるはずですので、記載して会社に提出するようにしてくださいね。

●「配偶者控除」「配偶者特別控除」の控除結果の見方
 
 必要な資料を提出し、会社の年末調整(税金計算)が終わると会社員の方は「源泉徴収票」を受け取ることになります。源泉徴収票には税金計算の結果が記載されています。そのため、配偶者控除についても確認することができます。配偶者控除が適用される場合は、「控除対象配偶者の有無」の欄の「有」に〇印などの印が記載されます。また、配偶者特別控除が適用される場合は、「配偶者特別控除の金額」の欄に控除された一定金額が記載されます。

●配偶者控除の改正は18年1月以降が対象

 前回の配偶者控除の内容、そして今回のここまでの配偶者特別控除の内容は、17年1月から12月の所得税に関するものでした。実は、18年1月以降の配偶者控除に関しては主に次の点が変わる予定です。

(1)配偶者の収入の上限が150万円に
(2)納税者の所得に応じて配偶者控除の金額が変動

(1)配偶者の収入の上限が150万円に

 まず、配偶者控除の収入上限(給与収入を前提とした場合)が103万円から150万円に引き上げられます。そのため、配偶者の給与収入が103万円を超えても、150万円までであれば配偶者控除を受けることができます。

 また、従来の制度の説明の際に記載した4つの条件に加え、今後は納税者(家計の主な担い手である旦那さん等)の収入や所得に応じて、配偶者控除を受けることができなくなります。表にすると次の通りです。

 納税者の合計所得金額が900万円以下であれば、今までと変わらず38万円の控除を受けることができます。ところが、900万円超からは26万円、950万円超は13万円、1,000万円超は控除額0円と、所得金額が多くなればなるほど、配偶者控除が減少していきます(収入が給与のみの場合、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が「合計所得金額」となります)。

●社会保険の扶養の壁

 ところで、収入の上限が150万円に引き上げられたことで、従来よりも対象者が拡大しお得であるようにも思えますが、社会保険料については従来通りの壁が立ちはだかっていますので、注意が必要です。以下の条件にすべて当てはまる方は、社会保険料を支払うことになります。

(1)勤務時間が週20時間以上
(2)1カ月の賃金が8.8万円以上(年額で約106万円)
(3)勤務時間が1年以上見込まれること
(4)勤務先の従業員が501人以上であること

 上記にあてはまらないケースでも、年収が130万円を超えると、通常は社会保険に加入する必要が生じます。つまり、106万円、あるいは130万円を超えると、社会保険については家計の主な担い手の扶養から外れ、自ら加入しなくてはならないということです。

 しかも、一般的に社会保険の加入に関する判断をする際の収入は、交通費まで含めて計算しますので、所得税の配偶者控除の計算とは、異なる計算をしなくてはなりません。配偶者控除の件とは別に、社会保険の扶養の問題が存在していることに留意しておいてください。

●配偶者の所得税も

 収入が150万円になれば、配偶者自身にも所得税が課せられることになります。仮に配偶者(妻)がパートで150万円の給与収入を得た際の所得税を試算してみます。

・給与所得=給与収入-給与所得控除
     =150万円-65万円
     =85万円
・所得=給与所得-基礎控除-社会保険料
   =85万円 -38万円 -22.5万円
   =24.5万円
・所得税=所得×所得税率(所得195万円以下の税率を適用)
    =24.5万円×5%
    =約1.2万円
 
※社会保険料は給与収入の15%という前提で計算しています。また、社会保険料は所得から全額控除される仕組みとなっています。

 配偶者控除を受けられる条件で働いたとしても、配偶者(妻)の所得に対して約22.5万円の社会保険料と約1.2万円の所得税がかかります。さらに住民税もかかります。そのため、仮に配偶者の収入が103万円から150万円に増えても、その割には手取りが増えないと感じると思います。

 ただ、配偶者の収入が150万円を超えるようであれば、一般的には社会保険の負担が増えたり配偶者控除が使えなくなっても、家計全体の収入は増えるケースが多いと思います。

●配偶者特別控除も改正?

 配偶者控除の改正に合わせて、配偶者特別控除も要件が変わる予定です。配偶者特別控除は2017年分までは、合計所得金額38万円超76万円未満の配偶者が対象となりますが、改正後は配偶者特別控除の対象者が拡大されるとともに、配偶者控除の制度と同様、所得に応じて控除額が変化していくことになります。具体的には以下の表の通りとなります。

 例えば納税者の合計所得金額が900万円以下で、配偶者の合計所得が100万円以下なら26万円控除できるということです。納税者の所得と配偶者の所得によって、控除額が異なります。18年より条件や内容が複雑になる配偶者控除。適用できるはずだったのに適用しそびれた、ということのないよう、しっかりと関係書類を会社に提出してください。

亮子「ますます複雑になるね……」

啓子「はい。サラリーマンの方は、『書類をきちんと提出する』ことが何より重要です」

亮子「一方で、配偶者控除だからとか、扶養だからとか、ということではなく、働けるときは働く、稼ぐときは稼ぐ、家庭を守るときは守る、という選択をしっかりできる世の中になるといいと感じています」

啓子「配偶者控除の細かな損得で働き方を考えるのではなく、家庭全体で家計をどう支えていくのか、という視点を持てるといいですね」

(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)