シニア層の間ではすっかり人気が定着したようで、ウチの近所のカラオケ喫茶(老人たちの憩いの場!)では、放送時間になるとカラオケを中断してみんなで観ているらしい倉本聰・脚本のシルバータイムドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日・月〜金曜12:30〜)。

主人公・菊村栄(石坂浩二)と共同生活を送り、振り回しまくっていた「秀サン」こと高井秀次(藤竜也)だったが、遂にふたりの共同生活が終了する。


「なーんだ、いたじゃん」じゃないだろう!


女たちから逃げてきた秀サンをかくまってあげた菊村栄だったが、秀サンは感謝するどころか、我が物顔でベッドを占拠し、居座ってしまった(さすが大スター!)。

秀サン失踪騒ぎは大ごとになっちゃったし、「姫」こと九条摂子(八千草薫)たちに秀サンをかくまっていることを気づかれてしまったしで、いい加減どうにかしなきゃいけない。

そこで姫から提案されたのが、「メガネがないないと探し回っていたのに、数日経ったら急に見つかることがあるでしょ」作戦。

川添夕子(松本ふみか)「いなくなっていた秀サンが、ある朝気づいたらちゃんとベッドの中にいるんです。アレ、なーんだいたじゃん」

姫「いたのにみんな見えなかったのね。それが突然、ある朝見えるのね。なーんだ、いたじゃん!」

穴ボッコボコの案を、嬉々としながら説明する姫……ああ、なんてカワイイ老女なんだ!

この大ざっぱにも程がある作戦を支えているのは、

・第一発見者はメガネをしている(視力が弱い)から秀サンを見落とした。

・理事長夫婦は65〜6歳と54〜5歳……だから、ボケがはじまるお年頃。

・秀サンは無口だから、呼ばれても返事しなかった。

という、これまた大ざっぱな理屈なのだ。ザ・無茶!

それでも、この案に乗ることにした菊村は、職員たちとともに、秀サンの元に。

あれだけ堂々と居座っている秀サンを、自分のヴィラに戻れと説得するのは大変だろうな……と思いきや、半ば力尽くで車椅子に乗っけて運んでしまうというゴーインな手段をとる。

ギックリ腰で寝込んでいた人になんてことを……。

他の人たちに気づかれないよう、口を押さえられながらも「イターイ! イターイ!」と大絶叫する秀サン。

いくら無口だという設定にしても、もうちょいボキャブラリーないんかいとは思うが、BGMに中島みゆきの歌うテーマソング「慕情」のインストバージョンが悲しげに流れる中、高見山の「ニバーイ! ニバーイ!」風に「イターイ! イターイ!」と叫びまくる秀サンに笑わされてしまった。

翌日、無礼をわびに行った菊村だったが、秀サンは天井を見つめたまま、まったくしゃべらない。

メチャクチャ怒っているのかな……と思ったら、秀サンは、天井板の色が一部変色しているのを気にしていただけだった(20分以上も無言で見つめてるなよ!)。

その変色した天井板を調べてみると、ゲームにありがちな「周りとちょっと色が違っていて、押すと動く壁」のようにパカッと開いて、中には、以前このヴィラに住んでいた超大御所俳優・大村柳次郎の遺言と遺品が残っていたのだ。

納得できない話を納得させる姫のトーク力


今週も、相変わらず秀サン中心にストーリーが展開していたのだが、秀サンはホントに中心でドーンと寝っ転がっているだけで、あれこれ動き回るのは周囲の人たち。

一方、能動的にストーリーを動かしていたのが姫だった。

「なくしたメガネのように秀サンが突然見つかった」作戦を菊村たちに授けて実行させ、秀サンが見つかったはいいけど、明らかにゴーイン過ぎる説明を怪しむ老女優たちを、口先八丁で言いくるめてしまった。

菊村たちに授けた段階では、どう考えてもゴーイン過ぎる、納得度2%くらいのテキトーな作戦だったのだが、「天井から遺品が見つかった」という新情報を巧みに取り入れて、納得度をアップさせてしまうトーク力は圧巻だ。

それでも、「老女優たちからしつこく迫られて耐えきれなくなった秀サンは天井に逃げ込んだ」「そこで電線に触って感電して、ずっと気絶していた」「秀サンは不死身だから死ななかった」という、やっぱりゴーインな説明だったけど。

……うん、やっぱり納得度30%くらいだな。

人を傷付けるようなことは書いちゃいけないって言ってたよね!?


そして、久々に出てきた大村柳次郎の遺品の話題(第3週以来!)。

発見された遺言の内容は、「祇園の女に産ませた柳矢、新橋の女に産ませた柳蔵に、それぞれ横山大観のスケッチと、刀を一振り残す」という内容。

隠し子、いたんかーい!

しかも、認知していないくせに、自分の名前から一字取って名づけているという、昭和芸能人ならではのゴーカイさよ……(ちなみに孫の名前は「柳次」だった)。

大村の孫から姫に遺品分けされた横山大観のスケッチ、そういう遺言があったわけじゃなくて、孫の独断であげちゃっただけだったんですね。

そしてもうひとつの遺品である刀もいわくつきの品。徳川の時代から、呪われた刀として知られる妖刀・村正。懐かしのゲーム『Wizardry』にも登場する、ムラマサ・ブレード!

かつて、大村柳次郎が時代劇の殺陣に真剣を使って、斬られ役を本当に斬ってしまったという噂があるのだが(必死にもみ消したからセーフだったとか)、その時に使われた真剣が、この妖刀・村正ではないかというのだ……。

このエピソード、明らかに勝新太郎の息子・奥村雄大(現在の芸名は鴈龍)が映画『座頭市』(1989年)の撮影中に真剣を使って斬られ役を殺しちゃった例の事件のこと!

出演者たちの黒歴史だけじゃなく、ドラマと関係ない人たちの黒歴史にまで噛みついちゃったよ。

濃野佐志美騒動の時には、菊村に「100万人を感動させられても、ひとりを傷付けちゃいけないってことさ」という、物書きとして守らなきゃいけない鉄則を語らせていたのに……。

このドラマ見たら、明らかに奥村雄大は傷付くと思うよ、倉本センセー!

日本国にも、テレビ局にも怒りをぶつける男・倉本聰


ここから、「あの横山大観のスケッチは誰の物になるんだ!?」とか「妖刀・村正の呪いがどうのこうの!」とストーリーが進んで行くのかと思いきや、突然、自分たちの遺産が心配になった老人たちの遺産相続相談タイムに突入。

ドラマを中断して、「Eテレの番組?」というくらい詳細に相続税の説明がはじまっちゃったよ。

制作側が想定しているメイン視聴者層がシニア世代ってことで、ドラマも楽しみつつ、その世代が一番気になっている情報も教えてあげようという優しさなんだろうか?

しかし、倉本センセーはそんな中でも、知的財産権の話に絡めて、テレビ局に昭和48、9年以前のテレビ作品を全部消去されてしまった恨みをぶっ込むことを忘れない。

「だから我々の著作物は、昭和48、9年以前の物は、全部ないんです! 失われたんです! これは一種の、大きな犯罪です! まったく許せないテレビ界の所行です!」

これはもう、そのまんま倉本聰の魂の叫びだろう。ガッツリ相続税を持っていく日本に対しても、昔のテレビ作品を消去しちゃったテレビ局に対しても怒りまくりなのだ。

テレビ界に長年貢献してきた人は無料で入所することができ(でもテレビ局の人間はダメ!)、過去のテレビ番組の資料も大量にアーカイブしているという「やすらぎの郷」は、倉本聰が妄想する最強老人ホームなのだろう。

というか、倉本センセー自身がテレビ業界の超大物なんだから、これからシニアに突入していく後輩たちのために、リアル「やすらぎの郷」を作ってあげればいいのに! ……富良野あたりに。