コンサートで見かけて「あれ、この人どこのイベントにも来ているなあ」と感じる女オタクがいる。
Twitterを見ると「この人、週末の度に舞台やコンサートで全国飛び回っているなあ」と感じる女オタクがいる。
アイドル、声優、俳優、ゲーム、アニメ、舞台……好きなものにお金を使う女たち。でも、チケットをかき集め、古今東西問わず遠征し、CDやレアなグッズやカードを手に入れるそのお金の内訳って、いったいどうなっているんですか?

筆者も女子アイドルオタクを約15年やっているが、女オタク同士であっても他人のお財布事情はなかなか聞くことができない。大っぴらにインターネットでは書けないその話をまとめた同人誌が、2016年12月31日に冬のコミックマーケットで発売された。
その名も『悪友vol.1 浪費』。


サークル・劇団雌猫が発行したこの同人誌は、さまざまなジャンルでオタク活動をしている匿名女性14人が、その浪費の内訳や浪費エピソードを寄稿している。
冬コミでは、販売から約2時間で完売。通販でも入荷と完売を繰り返した。女オタクを中心に「これは面白い!」と広まり、漫画家のひうらさとるが「やばいくらい面白い同人誌」とツイート。ミュージシャンの菊地成孔からも「最近読んだ書籍の中で最も面白かったもの」と絶賛されている。

この同人誌の大ヒットを記念して、2017年5月20日(土)に阿佐ヶ谷ロフトAにてトークイベント「集まれ浪費女!HiGH & 浪費ナイト」が開催された。
登壇したのは、劇団雌猫のもぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケ。そして、同人誌に「地下声優で浪費する女」を寄稿したシャチホコと、「あんスタで浪費する女」を寄稿したウォンバットがゲストとして登場した。


「私だけの推しメン」にお金を払う女たち



ヴィジュアル系、ジャニーズを経て、現在は地下声優に浪費するシャチホコ。
地下声優とは、若手で、アニメ作品のモブを担当することが多く、地下アイドルさながらに数十人規模のイベントに出演する声優のことを指すそうだ。

もぐもぐ「今までで一番印象的だった現場は何ですか?」
シャチホコ「まだまだ知名度もこれから、という若手声優さんたちが起用されたアニメのイベントです。クラウドファンディングという体で2万円払うと、最前席・チェキ会・お渡し会のセットがもらえました。でも、イベントに行ったら『リアルクラウドファンディングです!』と言われ、追加で8,000円払うともう1枚チェキが撮れるという……」
ひらりさ「追加しちゃったんですか?」
シャチホコ「もちろんです!」

女子の地下アイドルの現場では500円〜2000円くらいでツーショットチェキを撮ることができる。8,000円でチェキ1枚は高価過ぎるのではないか。
それでも、目の前に推しがいるとついつい支払ってしまう。めっちゃわかる。

シャチホコ「チェキはこの世に1枚しかない。私しか見られない推しの顔は、1枚でも多く欲しい」
もぐもぐ「アイドルの握手会とかも、最初はバカバカしいと思ってても、ハマっちゃうんだよね」
かん「初めて会うのに、私のことを知っている風に『あー!(手を振る)』って言ってくれるもん。『あれ? 前会ったっけ!』って嬉しい」
もぐもぐ「釣られてるじゃん!」

アイドルや俳優、声優が自分を認知してくれることへの喜びは、どんどん求めて止まらなくなってしまう。
自分だけに見せてくれる表情、自分だけに話してくれる会話の内容にお金を払うのは快感だ。

「お気持ち表明」にお金を払う女たち



アプリゲーム『あんさんぶるスターズ!』の廃課金者であるウォンバット。
プロジェクターに彼女のGmail受信画面が表示されると、客席から大きな悲鳴。「Google Play のご注文明細」という件名が画面いっぱいにぎっしりと並んでいる。メール1通につき5,000円の課金をしているという。

もぐもぐ「最高で、ゲームのイベント1回にいくら課金したことがありますか?」
ウォンバット「1つのイベントに6万円課金したことがあります」
もぐもぐ「ソシャゲの浪費は、課金した瞬間が恍惚?」
ウォンバット「いや、自分の順位が上がっていくとき。脳汁がブワッと出てくる感覚があります」

ウォンバットが過去に獲得した限定カードの画像がプロジェクターに表示されると、客席から「かわいい!」「エロい!」と声があがった。
ソシャゲのカードなんて、ゲームがなくなったら手元に残らないのにお金を払う意味があるの? そんな風に考えていた。でも、限定カードの美麗さとキャラクターの構図や表情へのこだわりを見せつけられ、筆者も帰りにあんスタをダウンロードした。

ウォンバット「こんなに美しくエロいイラストを描いてくれてありがとう! という気持ちになって、運営に感謝の課金をすることもあります」

グッズは買わないと決意してアイドルのコンサートに行っても、内容や推しの姿に感動して「ありがとう!」と感謝の思いが高まる。結局、生写真やタオル、缶バッジなどグッズを買ってしまう。筆者はこれを毎回やってしまっている。
「お気持ち表明」としての浪費。運営や推しに思いが届いていてほしい。

大切なのは自分の幸せのために浪費すること



「芸能人なんて付き合えるわけでもないのになぜお金を使うの?」
「ソシャゲの絵にお金を払う意味あるの?」
後半は、そんな浪費への質問に登壇者たちが答えた。

もぐもぐ「課金して後悔することはないんですか? 正気に戻るというか」
かん「私は、たまにどうしても物欲を抑えられなくて服や化粧品の衝動買いしちゃうんですが、後悔することめっちゃある! 何も買わないで後悔するのが怖いし、でも買っても家に帰って後悔する」
シャチホコ「後悔するけれど、その後悔が気持ち良いっていうところもあるのでは」
ウォンバット「私はない。お金を払って後悔するようになったら、もうそのコンテンツは辞めどきだと思う。お金を払うことが快感じゃないと、やっていけません」

無尽蔵に浪費するのではなく、自分がポジティブにお金を使えなくなったら辞めるなどのボーダーを引く。ハッピーな浪費生活には大切なことだ。

かん「好きな俳優に5〜10万円のプレゼントを贈りたいのですが、友人に『おかしい』『もったいない』と否定されます、どうしたらいいですか? という質問が来ています」
ユッケ「私も俳優にプレゼントを贈っていたことがあるけれど、それは『自分のあげた服を着た俳優の写真をブログなどで見られるのが嬉しかった』から。贈った服を俳優が着なくなった今は、チケットやグッズ購入で貢献しています」
もぐもぐ「でも、質問者はプレゼントをしたいんですよね」
ユッケ「10万円あったときに、それをプレゼントに使うか、手持ちの公演チケットを増やすのに使うか、接触イベントに使うか。自分は何が嬉しいかを考えて浪費するのが良いと思う」

アイドルや俳優、声優、運営など、浪費の先に相手がいると、ついつい「相手のため」と思い込んでお金を使いそうになる。他人のためにお金を使うと、罪悪感が薄れるからかもしれない。

<もぐもぐ:一応今回の同人誌では「浪費」をテーマにしつつも、無駄遣いを批判したいわけじゃなくて「でも私たちの人生それで楽しくなってる!」ということをワイワイ話したかったんですよね。>
(『悪友vol.1 浪費』p.37より)

イベントでは、お金を使い込む先はそれぞれ違うのに「浪費」という共通のテーマで仲間意識が芽生えたように感じた。
どんな風に浪費をしているか話すとき、誰もがとても楽しそうだった。自分のための浪費は、その日や明日を生きる元気をくれる。これからも、楽しくハッピーに浪費していきましょう、カードを止められない程度に。


今後、2017年夏のコミックマーケットでの『悪友vol.2 恋愛』の発売が予定されている。
さらに同時期に『悪友vol.1 浪費』が増補改訂版の商業書籍となって発売されることが発表された。
今後取り上げるテーマは「嫉妬」「修羅場」などを検討中だそうだ。インターネットに書けない話、楽しみにしています。


このイベントで販売された姉妹編の『悪友DX 美意識』は、通販でも販売されたが即完売してしまった(すごい!)。
すでに増刷は決定しているそうなので、通販サイトをチェックしよう。

▼『悪友DX 美意識』通販ページ
https://aku-you.booth.pm/items/524197


▼サークル「劇団雌猫」発行 カルチャー同人誌「悪友」公式アカウント
https://twitter.com/aku__you

(むらたえりか)