PLOS ONEで発表された瞑想についての調査報告

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米国で長きに渡り静かなブームが続く「瞑想」をめぐり、これまではブームの陰に隠れて気づかれなかった潜在的影響を報告した調査結果が発表され注目を集めている。

精神療法、プラス思考を引き出せるなどと評価されている瞑想法なのだが、取り組み方しだいで、ものごとに対して過敏になったり、ストレスを抱え込んだりするなど、期待と逆の効果が生まれてしまうという。

不眠症など「副作用」

米国で瞑想は、IT企業アップルの創業者の一人、スティーブ・ジョブズ氏が「禅」に影響を受けたことなどが知られるようになりビジネス界などでも広がるようになったという。いまでは「マインドフルネス」と呼ばれる瞑想法が広まり、その実践人口は約1800万人といわれる。

「マインドフルネス」は、それを実践することで、精神療法としての効果があり、またスポーツやビジネスでは最高のパフォーマンスを引き出せるとされる。

米社会で一大現象になっている瞑想法について多角的な観察を試みたのが今回の研究。ブラウン大学で人文科学を専攻するジャレッド・リンダール客員助教らが、瞑想法の実践者、指導者たち約100人に聞き取り調査をしてまとめ、2017年5月24日に同国の科学誌PLOS ONE(プロスワン)に発表した。

それによると、瞑想法の実践により、音や光に過敏なったり、不眠症やあるいは身体を無意識のうち揺らしているなど「副作用」に悩まされる例がしばしばみられることが報告されている。

米大企業、スポーツ界でも導入

不眠症などの持続期間は「人それぞれ」で、数日で回復するケースもあれば10年も続く場合もあるという。調査報告の共同筆頭執筆者の一人、ウィロービー・ブリットン氏は「他者との一体感などを経験することは悪くはない。だが、それが行き過ぎたケースがあり、それらの場合、侵害された感じや、無防備感にさらされ、混乱におちいる」という。瞑想法実践中に効果を感じた人でも、ふだんの生活に復帰した際につまづきを感じる人がいるという。

共同筆頭執筆者の別の一人であるリンダール客員助教は、同報告について報じた米NBCテレビの番組で、瞑想法そのものについて「調査の目的は、瞑想法をやってみようとしている人たちの気持ちをくじくことではない。多くの人たちは瞑想法から計り知れないほどの果実を得ている」と述べ、さらに「瞑想法のタイプはさまざまあり、指導者や実践法もさまざま。瞑想法を行いたいとする人はその目的を理解し、それに合う指導者ややり方を見つける必要がある」と調査の意義を強調した。

ブリットン氏は、調査について「ネガティブ経験の割合を求めたものではない。潜在的な影響の要因を見つけようとしたもの」と述べた。

瞑想法の「マインドフルネス」は米国では、グーグルやフェイスブック、インテルなどのIT系ほかナイキなどの大企業が研修に採り入れているほか、スポーツ界でも導入が進み拡大が加速しているという。

米国の瞑想の代表的指導者であるシャロン・サルツバーグさんは、NBCの取材に、瞑想の実践で予期しないかあるいは不快な経験をすることを認め、今回の未踏行領域についての調査報告に賛辞を送っている。