5月30日からセ・パ交流戦が始まる。毎年、交流戦ならではの対決がファンを興奮させ、これまで数々のドラマを生んできた。2005年から始まり13年目を迎える交流戦。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。そこで今年行なわれる交流戦の見どころを集めてみた。


高校時代は山岡泰輔との投げ合いに敗れただけに、雪辱を果たしたい巨人・田口麗斗田口麗斗×山岡泰輔「伝説の投手戦」再び!

 6月4日の日曜日に組まれている巨人×オリックス戦で、因縁の投手があいまみえる可能性がある。

 巨人の先発ローテーションに定着した左腕・田口麗斗と、オリックスのドラフト1位ルーキー・山岡泰輔のことだ。今から4年前の夏、高校3年生だった2人は広島大会決勝戦で”伝説の投手戦”を演じている。

 広島新庄・田口と瀬戸内・山岡のともに身長170センチ前半の小柄な両投手は、小気味いい投球でスコアボードに「0」を並べ続けた。試合は延長15回を終えても決着がつかず、0対0のスコアレスドロー。田口は15回を投げて13安打を浴びたものの、19奪三振を記録。一方、山岡は15回をわずか1安打に抑える完璧な投球だった。

 当時の話を山岡に聞いたことがある。山岡は試合中、「いつまでも投げ合っていたい」と思ったそうだ。中1日置いての再試合では、試合前のキャッチボール中、田口に向かって「またこの前の試合みたいになるといいね」と話しかけると、田口からは「いや、勝たせてよ」というツッコミが入ったという。試合は再び投手戦となり、1対0で山岡の瀬戸内が勝利を収めた。

 あれから4年の時を経て、ローテーションの再編がない限りは両投手の再戦が実現しそうだ。5月28日現在、田口は4勝1敗、防御率1.73と絶好調なのに対し、山岡はこれまで好投しながら打線の援護に恵まれず苦しい戦いが続いていたが、5月28日のロッテ戦でようやくプロ初勝利。両者の現状は対照的だが、観客が「いつまでも2人の投げ合いを見ていたい」と思うような名勝負を期待したい。

球界のエース・菅野智之、交流戦での奮投は20勝につながる!?

 いまや球界のエースに君臨した巨人・菅野智之。WBCでの活躍も記憶に新しいが、シーズンに入っても好調を維持。ここまで8試合に登板して、6勝(リーグ1位タイ)、防御率1.58(リーグ1位)と、圧巻の数字を残している。

 その菅野が、パ・リーグ相手にどんなピッチングを見せるのかに注目が集まるが、自身は「パ・リーグにはいい打者がたくさんいる。そのなかで、自分がどれだけのピッチングをできるのか楽しみにしている」と自信をのぞかせている。

 しかし、菅野はこれまで交流戦に15試合登板しているが、5勝6敗と負け越している。打線の援護に恵まれない試合もあったが、結果として”根負け”した印象も強く、菅野にとっては決して楽な戦いではない。

 今から4年前、ちょうどWBCイヤーだった2013年、日本代表で活躍した当時・楽天の田中将大(ヤンキース)が交流戦でも負けなしの4勝を挙げ、優秀選手賞を獲得。結局、この年、田中はシーズン24連勝という前人未踏の大記録を残したが、WBCの疲れを感じさせない見事なピッチングを披露した。

 強打者が居並ぶパ・リーグ相手に結果を残せば、チームに勢いをもたらすのはもちろん、2013年の田中以来となるシーズン20勝も視界に入ってくるだろう。

新天地で躍動。大田泰示×石川慎吾「トレード対決」の行方は?

 2月上旬、巨人の春季キャンプで若手野手陣の打撃練習を見ていて、不安を抱いたことがある。

 巨人はチームの方針として、「逆方向」を意識して打撃練習に取り組んでいる。春先の時期はしっかりとボールを呼び込み、バットを内側から出して逆方向へ強い打球を打つ。その意図はわかるのだが、逆方向への意識が強すぎるのか、有望株の岡本和真をはじめスイングと打球から迫力を感じる打者が少なかった。

 そんななか、移籍1年目である石川慎吾のヘッドを効かせた打撃は目を引いた。石川に「逆方向」を意識づける巨人の打撃練習について聞くと、あっけらかんと「ファイターズの方が、もっと逆に打てと言われていましたよ!」と言い放った。言葉を交わしたのはわずかだったが、その明るさも巨人にとって貴重な戦力になる予感がした。

 石川は吉川光夫とともに、大田泰示、公文克彦との2対2のトレードで日本ハムからやってきた。一方、トレード相手の大田泰示も、新天地で自己最多の5本塁打をマークするなど、開花の兆しを見せている。

 右の強打者としてチームに新風を吹かせる石川と大田の激突。それは巨人ファンにとっても日本ハムファンにとっても、感慨深い戦いになるに違いない。

中日・荒木雅博、交流戦での快挙達成なるか?

 交流戦期間中に大記録達成の期待がかかる選手がいる。通算2000本安打まであと8本に迫っている中日の荒木雅博だ。

 荒木は1995年のドラフトで中日から1位指名を受け入団。井端弘和(現・巨人コーチ)と鉄壁の二遊間”アライバ”コンビで人気を博した。不動のレギュラーとして長く中日黄金期を支えたが、”守備の人”のイメージが強く、実際、3割を記録したのは昨年までの21年のプロ野球人生で一度だけ。それでもコツコツと安打を積み重ね、近年は出場機会も限られてきたが、ようやく快挙まで目前に迫った。

 当然、1日も早く記録を達成したいだろうが、荒木にとって交流戦はまさに鬼門とも言える存在。2005年から始まった交流戦で、荒木は毎年のように出場を果たしているが、通算打率.260とパ・リーグの投手に抑え込まれており、昨年にいたっては53打数6安打(打率.113)と、規定打席に到達した選手でワーストの記録だった。

 ちなみに、交流戦の期間中で通算2000本安打を達成したのは、中日の和田一浩(2015年に達成)ただひとりで、荒木が記録すれば史上2人目となる。はたして、快挙達成となるのか、それともパ・リーグ投手陣が交流戦での達成を阻止するのか。荒木の1打席から目が離せない。

ヤクルト大松尚逸が古巣ファンに誓う「全力プレー」

 交流戦で「古巣相手に恩返しをしたい」と思っている選手は多いが、なかでも今季、テスト生としてヤクルト入団を果たした大松尚逸は、かつて在籍したロッテとの戦いを誰よりも楽しみにしている。

「マリン(ZOZOマリンスタジアム)で12年間プレーしていましたからね。しかも、ケガ(アキレス腱断裂)をして以降は、姿すら見せられないまま、ああいう形(戦力外による退団)になってしまったので……。そのことが心残りでした。でも、ユニフォームは違っても、元気に野球をしている姿を見せられるチャンスができた。本当に幸せなことだと思います。いろんな人が、マリンで交流戦が行なわれることを教えてくれて、それは僕にとってすごく励みになりましたし、モチベーションのひとつでした」

 そして大松はしみじみとこう続けた。

「ずっと一緒にやってきた選手たちを違うベンチから見る。ビジターとして試合するのは初めてですし、どういう感覚になるのか……。今は1日、1打席、1球……その積み重ねで『あー、今日も無事に1日が終わった』という繰り返しです。なんとかマリンで、元気な姿を見ていただけるようにやるしかないですね」

 ZOZOマリンスタジアムでのロッテ対ヤクルトの3連戦は、6月9日(金)から開催される。

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