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使われなくなったページは誰にも構われずにネットを漂う……



持ち主が飽きたり亡くなったりして、使われなくなったSNSページやブログ、ショッピングサイトのマイページなどは、放置しておくとどうなるのだろう?

ほとんどの場合、その後の進路を決める担い手がいないので、どうにもならない。持ち主が手を出さないとなると、担い手はサービスの運営側となるが、何万何十万とアカウントを抱えるなか、非アクティブなものから再利用の可能性がないものを探して抹消するといった割りにあわない作業をする会社はまずない。1アカウントのデータをサーバーに保持し続けるコストのほうが、人件費より遙かに低いためだ。

結果として、持ち主にも運営側にも捨てられたページは、該当サービスのサーバーが消滅するまでネットを漂うことになる。その間に運悪く荒らされるものもあるが、大抵はただただ見向きもされずに放置されるだけになる。

……というのが、いままでのネットの常識だった。しかし、今後数年で大きく変わるかもしれない。

ネット与信サービスの進化とプロファイリング規制の動き



台風の目はAIだ――。

近年、SNSでの発言や人間関係、ネットショップでの購入履歴から、「いいね!」を押したニュースの内容まで、同一人物がネットに残したアクションをAIで総合的に分析し、その人の属性や信用度を推測する「ネット与信」サービスが広がりをみせている。

独のベンチャー・クレディテックは、2012年から2万項目を超えるオンラインデータを与信材料として金融会社に販売するクレジットビューロー(個人信用情報機関)サービスを展開しており、世界中で話題を集めている。日本国内でも2016年12月にフィンテック会社d.a.t.がSNSやショッピングサイトの履歴を与信に使うシステムを開発したほか、岡三オンラインは不特定多数のSNS等の投稿から、個別銘柄の株価の動きや最適な売買のタイミングなどを分析するサービスを開発中だと報じられている。

これはつまり、不特定多数の人がネットに放りっぱなしにしている雑多な情報が、別の誰かにとって金銭的な価値のある情報になっているということだ。



▲独クレディテック社のサイト。2万項目のデータを分析する仕組みを解説している。フィンテックの有力企業として注目を集めている。

お金の匂いがするようになると、逆にAIを使った情報分析を規制する動きが出てくるのも当然の成り行きといえる。プロファイリング規制と呼ばれるものだ。

ここでいうプロファイリングは、警察が捜査の過程で犯人像などを絞り込む行為ではなく、AIを使って自然人の経済状況や健康、嗜好などの個人的な情報を分析・予測する行為を指す。

規制の先鞭をつけたのは米国で、すでに2000年頃から連邦議会で論議が重ねられており、2012年には、SNSや電話帳、公的機関の記録などオンラインとオフラインをあわせた数百項目を分析して、雇用の判断材料として企業に販売していた会社が連邦取引委員会から制裁を受けたりもしている。また、EUでもプロファイリング行為に対する規制を法律に盛り込む動きがある。日本ではまだ規制の動きは活発化していないが、今後欧米にならった風が吹く公算は大きい。



▲米国連邦取引委員会(FTC)の公式サイトには、プロファイリング行為によって企業が制裁された詳報が現在も公開されている。公正信用報告法違反で80万ドルの課徴金が科されたとのこと。

放置リスクと管理コスト増の流れ。野放図ページには厳しい時代に



使われなくなって放置されていたページは、誰からも無視されていた。それが最近は、突然分析対象にされたり保護対象にされたりする可能性を大きくはらむようになっている。

この流れで確実に言えるのは、持ち主も運営側もページを放置するリスクが上がっているということだ。勝手に与信される持ち主はもちろん、運営側もトラブルの種になりえるものは野放しにしづらくなる。すると管理に今まで以上のコストがかかるようになる。それでも個別に動静を調べる人件費を超えることはないだろうが、一定期間更新のないアカウントにメッセージを自動で送り、猶予期間を超えたのちに公開を停止するといった低コストな措置はとられるかもしれない。

いずれにしろ、ノーコントロールな放置が許された牧歌的な時代はもう終わるのではないかと思う。

亡くなった人のページも、何十年も遺族に知られずに漂っているというのはレアケースになりそうだ。それでも、遺族や友人が故人を悼みながら何十年も大切にするサイトは無関係に残り続けるだろう。

放置されたお墓の処理に頭を悩ませる地方自治体が多いなかで、手入れが行き届いたお墓は無関係に永続性を保ち続けている。そんな日本のお墓事情とよく似ている。前回と似た締めになってしまった。

文/古田雄介

古田雄介/利用者没後のインターネットの動きや、社会におけるデジタル遺品の扱われ方などを追うライター。著書に『故人サイト』(社会評論社)などがある。デジタル遺品研究会ルクシー(LxxE)理事。

※『デジモノステーション』2017年7月号より抜粋

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