イギリスを拠点に展開するメトロバンク。そこかしこに親しみやすく楽しめる工夫がある。https://www.metrobankonline.co.uk/

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戦略の要諦は、差別化である。差別化とは、ライバルとの違いを出すことではなく、“圧倒的にズバ抜けて”、“顧客に一目置かれること”である。シリコンバレーでなくとも、そんな例はたくさんある。人手不足の清掃業界が大化け! さびれた町が駐車場で復活! 銀行なのに顧客に愛される! 米有名ビジネス誌の凄腕エディターが取材しまくって見つけたユニークな事例の一部を、『圧倒的な強さを築く オンリーワン差別化戦略』から無料公開する。

メトロバンク成功の秘訣は、
「斬新さ」ではない

 ロンドンから北西約80キロ、オックスフォードとケンブリッジのほぼ中間に位置するミルトン・キーンズを訪れたのは、とある金曜日だった。オフィスビルやショッピングモール、集合住宅が並ぶ「ニュータウン」は、企業誘致のための経済戦略や都市計画の手本として1960年代に作られた。失業率は低く、安定した成長を維持しているが、おしゃれな街ではない。

 オークグローブ地区にもこれと言った特徴はない。私が訪れたときは、好奇心旺盛な人たちが歩道で騒いでいた。DJは、流行のダンス音楽に合わせて身体を揺する。高くなった側路を歩きながら誰とでもハイタッチを交わす道化に、子どもたちは大はしゃぎ。フェイスペイントをした人がいれば、ポップコーンやアイスクリームを手にした人もいる。中世風に胸に勲章をさげた市長、前回の選挙で市長に勝った保守党議員など政治家の顔も見える(かつてのライバルも仲良くやっているようだ)。誰より注目を集めたのは、12歳のヨークシャテリア「ダフィールド卿」だろう。通行人が目を留め、手を伸ばす。

 こんなに賑やかなのはなぜだろう。シルク・ドゥ・ソレイユのショーでも始まるのか。ハリウッド映画の公開日なのか。

 実はこの日は、メトロバンクの支店オープンを祝う、2日間の記念行事の初日だった。

 メトロバンクは、2010年7月にロンドン中央部のホルボーンで最初の店舗を開業。以後急成長を続け、ロンドンの繁華街(アールズ・コート、ケンジントン、シティ)や北東のケンブリッジ、南のブライトン、西のリーディングほか、イギリス全土で店舗を展開している。新しい支店はミルトン・キーンズでは2店目、イギリスでは27店目だ。

 そして現在、2020年までに200店舗の開設、100万人の顧客との契約成立、従業員5000人の雇用、400億ドルの預金獲得を目指すという大胆な計画を推進中だ。世界の著名投資家から14億ドル以上を集め、イギリスで最も活気ある金融サービスブランドを築いている。

 新しくオープンした支店も、他の支店同様、明るく賑やかで遊び心にあふれている。これまでの陰気なイギリスの銀行と比べると、まるでアップルストアのようだ。ガラス張りの店舗に入ると、赤と黒を基調としたインテリアや高い天井、銀の支柱が目に入る。ロビーやATMのスクリーンにはスローガンが表示されている。「ついに愛される銀行が登場! 子どもたちは大はしゃぎ。愛犬も歓迎。ばかげた規則は一切なし」。

 鮮やかな色の硬貨計数機「マジックマネー・マシン」の画面には、メトロバンクのMをかたどった「メトロマン」が浮かぶ。女性スタッフは赤いドレスに黒のブレザーか黒いドレスに赤のブレザー、男性スタッフは白いシャツに赤いネクタイのスーツ姿だ。ヨークシャテリアのダフィールド卿まで、メトロバンクのスカーフを首に巻いている。

 同社の店舗空間から顧客体験、社風に至るまで最終責任を負うシャーリー・ヒル(共同創業者バーノン・ヒルの妻)は「私たちは、新規出店のためだけにここに来たわけではありません」と語る。「世界最高の銀行を作るためにイギリスにやって来ました。ほかの銀行よりもましな銀行を作るだけなら簡単ですが、それが目的ではありません」。

 だとしたら、世界最高の銀行になるためには何が必要なのだろう

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