画像提供:マイナビニュース

写真拡大

●実際の支払いをシミュレーションしてみる

NTTドコモが発表した「docomo with」は、特定の端末を月々サポートなしで購入した場合、一定の条件を満たすならば、毎月の利用料金から永続的に1,500円を引くというサービスだ。一体、どのようなユーザーをターゲットとし、何を目的としたサービスなのだろうか? 改めて考えてみたい。

○SIMフリー端末に乗り換えもOK

「docomo with」の適用条件は、「同サービスの対象となる端末を選択し、月々サポートなしで購入して、指定の通話プランおよびパケットパックを選択する」ことだ(というか、対応端末ではそもそも月々サポートを選択できない)。端末は一括購入だけでなく、これまでと同じく月々の支払いに含める形で24回の分割購入も可能だ。

対象料金プランは、カケホーダイプラン(スマホ/タブ)、カケホーダイライトプラン(スマホ/タブ)、シンプルプラン(スマホ)。

必須パケットパックは、データパック(S/M/L)、ウルトラデータパック(L/LL)、シェアパック(5/10/15/20/30)、ウルトラシェアパック(30/50/100)、ビジネスシェアパック(5〜3,000)・ウルトラビジネスシェアパック(30/50/100)となっている。

○「arrows Be」で実際の支払いをシミュレート

実際の支払いをシミュレートしてみよう。最安パターンということで、富士通の「arrows Be」(24回分割時1,188円/月、総額28,512円。ドコモオンラインショップ価格、税込)を選択した上で、通話プランに「カケホーダイライト」(2年縛りあり:1,700円/月。税別)、パケットパックに「データSパック」(2GB:3,500円/月。税別)を選択してみた。

月々の支払額は「端末代(消費税込)1,188円+通話プラン1,700円(税別)+パケットパック3,500円(税別)+spモード300円(税別)+消費税440円-docomo with1,500円(税別)=5,508円(税込)」となる。これがひとまずの最安値だ。

24回の分割支払いが終わった、あるいは一括購入してしまえば端末代がなくなるので、その後の月々の支払いは、端末代1,188円を引いた4,320円となる。もし「ずっとドコモ割」が適用できる場合は、契約期間に応じた割引も適用される(データSパックの場合、15年以上で-600円)。

新しい端末に機種変更する場合、月々サポートを適用するならdocomo withの割引は終了するが、再びdocomo with対応端末を選べば1,500円の割引は継続する。また、もしSIMフリー端末や中古の端末を購入して自分でSIMを入れ替えた場合でも、割引は継続して利用できる。たとえばarrows Beは中古端末として売り払ってしまい、SIMフリーまたはドコモ契約のiPhoneを代わりに使い続けることもできるわけだ。

もっともSIMフリー端末の場合、ドコモが販売した端末に紐づけられているドコモ特有のサービスが利用できない可能性もあるが、そこは割り切って使うことになるだろう。

●価格だけみればMVNOの方が圧倒的に安いが……

初年度から1,500円という割引が受けられる「docomo with」だが、料金を単純に比較すれば、MVNOのほうが圧倒的に安い。

多くの人が選ぶであろう「カケホーダイライト」プランと比較するため、MVNO側で同等の定額通話オプションを追加したケースを計算してみると、2GB容量のデータ通信を含む場合、たとえばDMM mobileでは1,380円(「通話対応SIMプラン 2GB」税別)+850円(「5分かけ放題」税別)=2,230円(税込2,408円)で済んでしまう。「docomo with」のほぼ半額だ。

また、auやソフトバンクはサブブランドとしてUQ mobileやY!mobileという低価格路線のブランドを持っており、月額1,980円、2,980円といった格安プランを武器に、MVNOに流れるユーザーを一定の割合で自社サービスに食い止めている。

ドコモはこうしたサブブランドを持っていないため、実質サブブランドとして「docomo with」を使いたいのかとも思われたが、発表会場で記者の質問に答えたドコモの吉澤社長によれば、そういった意図はないという。

○「docomo with」のターゲットは?

単純な安さではMVNOに敵わず、サブブランドとしての展開も考えていない。では「docomo with」はどういったユーザーがターゲットになっているのだろうか?

これは筆者の想像の域を出ないのだが、ドコモユーザー、特に長期間契約を続けているユーザーは、単純な安さや新技術への興味よりも、「通話できればいい」という割り切りや、サポート体制やブランドといった安心感の重視、あるいは自分で設定する手間を惜しんでいる人が多いと推測される。

こうしたユーザーは、ドコモにとっては(未だにドコモが4Gに完全移行できない足枷でもあるのだが)長期間使い続けてくれて、今後もMNPなどで転出する可能性が低い、いわば「上客」だ。こうしたユーザーに対して、スマートフォンへの移行を促すとともに、長期利用への見返りとしても永年値引きを用意した、こんな筋書きだったのではないかと予想している。

また、前述したようにSIMフリーや中古端末を利用しても値引き自体は変わらないので、自分で設定やSIMの差し替えができる、ある程度知識があるユーザーにとってもお得なプランになる。加えて、従来ドコモが推進してきた、(家族などの)複数ユーザーだけを対象とした割引ではなく、1回線のみ使っているユーザーも公平に割り引かれるのもポイントだろう。メールアドレスの問題などでMVNOなどにMNPする気はないが、すこしでもお得に使いたいという層にとっては面白い選択肢になるのではないだろうか。