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およそ半年にわたるLINEをつづけ、
待ちに待ったMくんの718ケイマンの納車日が
やってきた。

彼が住む埼玉までシャカイチ号でいき、合流。
ポルシェ・センター青山に行くことになっていた。

はじめてメールを受け取ってからすでに半年。
数えきれないくらいのメッセージをくり返し、
クルマの仕様はバッチリと頭に入っていたし、
およそMくんの人がらまで想像がついていた。

待ちあわせたのは北朝霞(きたあさか)の駅。
あさの8時くらいだったと思う。

ロータリーにクルマを停めていると、
ニコニコしながら歩み寄ってくる男のひとがいた。
まぶしいくらいに「うれしい!」といった空気を、
こっちが心配になるくらいに体中から発していた。

背は高く、すこし離れたところから見ても、
体が引き締まり、健康的に日焼けしていることがわかった。
そういう仕事なのだそうだ。

Mくんはシャカイチ号の助手席に乗ると、
レッドブルを手渡してくれた。
まるできょう一日がとてもたいへんであることを
暗に示唆するかのように。

ポルシェセンター青山に向かうまでの道中、
彼はずっと話をしていた。
首都高の池袋線、高島平の手前のコーナーでは、
「あぁやっぱこれですね!
 こう、ポルシェはピタッとしてるんです
 コーナーでもぜんぜん怖くない!」

Mくんは、納車までの半年間、
何度もポルシェセンターに通い、
718シリーズのトライアルをくり返し、
718が何たるかを叩きこんだのだそうだ。

書籍もたくさん買い込んだし、
ネット上の718シリーズの情報も読みこんだ。

「だからでしょうか。納車を目の前にして
 よく『いまだに現実味がない』って言うひと
 いらっしゃるじゃないですか。ぼく違うんです。
 くり返し『イメトレ』をしすぎて、
 もう納車後みたいな気分なんです」
とMくんは言っていた。

笑うべきところなのかもしれないけど、
Mくんの顔はいたってマジメだった。
これがまたおかしかった。

でも青山通りに差し掛かったところから
ポルシェセンター青山につくまで
Mくんは拳をぎゅっと握っていてことを
見逃していない。そりゃそうだ。
新車! しかもポルシェ!
僕だったら呼吸さえ忘れるところだろう。

ショールームの裏にシャカイチ号を停めて
表に回ると「あっ!」とMくんは言った。

真っ赤な718ケイマンが
ガラスの向こうで待っていた。

オーダーしたとおりに
エンブレムはブラックで、
フロント・ガラスには、時計(スポーツクロノ)が
ヒョコンと鎮座していることがわかった。

Mくんはこのへんで、
まわりが一切みえなくなっていた。
一目散にショールームに駆け込んだ。

Mくんはキーを受け取り
担当のディーラーのかたのレクチャーを待っていると
見覚えのあるひとが入ってきた。
Tシャツに細身のパンツを履いた
おしゃれなお兄さんだった。

Mくんが
「あ!上野さん紹介します。
 彼、ぼくをディーラーに連れていってくれた
 ケイマンGT4のTさんです」

そこでピンときた!
第35話で出会った、あのTさんだった。
まさかここで再会できるとは。
世界は狭いというか、なんというか。
とてもうれしい気持ちになった。

じつは僕も987ボクスターのIくんを呼んでいた。
それから4人で辰巳PAに行った。

さらにそれから大黒PAに行った。カツ丼を食べた。

Mくんは、胸がいっぱいすぎて、
ほとんど食べられなかった。
「まるで恋の病みたいですよ!」というMくんは
もう誰がどうみても幸せの絶頂の表情だった。

思えばシャカイチ号を買った2年前は、
20代の友人なんて誰ひとりとしていなかったし、
冷ややかな目で見られることも少なくなかっただけに
こうやって4人でPAのたんなる定食を食べているのも
ふしぎな気分だった。

「来週末どこか走りにいこうよ!」
なんて言ってるんだから
こんなにすてきなことはないと思った。

趣味って、ある頃合いで
誰かに認めてもらうことが
求められているのかもしれない。

※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。
 
 それはそうと、第50話が遅くなってしまって
 ご心配をおかけしました。ごめんなさい。
 いっぱいメールもいただいているのに……。

 正直にもうしあげて、
 書くことに、ものすごく時間がかかってしまった。
 こういうことってはじめてです。

 車検、自動車税の影が忍びよっていることが
 なにかしら影響しているのでしょうか。

 皆さんはもう自動車税、支払いましたか?
 ぼくは、カードの締め日をうまく利用して、
 5月31日ぎりぎりに払うとおもいます。

 「俺たち楽しくってクルマに乗ってるわけじゃん。
  あんまりお金に関してベタベタ言ってっと、
  ダサいじゃん」
 という編集長の気持ちだけは心に留めておこう。

 さぁ何回に分割しようかなぁ(笑)

 今後とも、inquiry@autocar-japan.com まで、
 皆さまの声をお聞かせください。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。