堂安の同点弾に喜びを表わす遠藤(11番)。前半には堂安の追撃弾をお膳立てした。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 ついに巡って来たチャンスだった。
 
 初戦の南アフリカ戦、68分に投入されると、ドリブルから堂安律に縦パスを送り込み、堂安の決勝ゴールの起点となった。第2戦で出番は訪れなかったが、決勝トーナメント進出が懸かった大一番の第3戦のイタリア戦でスタメン出場を勝ち取った。
 

「ようやく自分にチャンスが来た」
 
 第1戦で結果を残しながらも、第2戦で一切出番が来なかった悔しさと、スタメン出場という高揚感を、遠藤はこの試合で思い切りぶつけた。
 
 開始早々の3分と7分に立て続けに失点するという、最悪の立ち上がりとなった日本だったが、この窮地を救ったのが、遠藤と堂安の素晴らしい連係だった。
 
 まずは22分、左サイドでボールを受けた遠藤のピンポイントクロスから、ゴール前のスペースに猛ダッシュで飛び込んで来た堂安が、左足でゴールに押し込む。連続失点による嫌な雰囲気を一変させるゴールとなった。
 
 このシーンで、遠藤はDFとGKの間のスペースと、そこを狙っていた堂安を間接視野で完全に捉えていた。
「自分の好きなタイミングでドリブルができて、ふと顔を上げたら律の姿が見えた。『あ、これはいける』と思って、クロスを上げました。あれは本当にいいタイミング、点と点でした」
 
 自画自賛するほど、ドンピシャのタイミングから放たれた右足クロスは、トップスピードで飛び込んだ堂安の足先にピタリ。これにはイタリア守備陣も為す術なしだった。
 
 このゴールで勢いに乗ったチームをさらに加速すべく、遠藤は直後の25分に高い位置から高速ドリブルで縦に仕掛けてファウルをもらうなど、イタリアを守勢に回らせた。そして50分、堂安のスーパーゴールが生まれた。
 
 2点のビハインドからの同点劇。本来ならばさらに遠藤はドリブルでイタリア陣内を切り裂く姿が見られるはずだった。しかし、引き分けでも2位が確定するイタリアが明らかな引き分け狙いの戦い方に切り替えたため、日本もそれに合わせてリスクを冒さない戦い方に切り替えた。
 
「最後はサッカーしていて楽しくなかったけど、あれがサッカーだと思う。もちろんもっと仕掛けたら、もっと良い経験ができたと思うし、そうしたくなるシーンもあったけど、そこは自制した」と、遠藤も本来なら間違いなく仕掛けるような場面でバックパスを選択するなど、フォア・ザ・チームのプレーを全うし、決勝トーナメント進出に必要だった勝点1を獲得した。
「今日の試合で自分のドリブルの幅が広がった」
 
 そう語る遠藤がこの試合で掴んだものは、自らのドリブルの『活かし方』だ。これまでは突破してシュートまで辿り着くことに躍起になり、より良い位置でゴールを狙う味方を活かしきれず、チャンスを潰してしまうシーンが多かった。
 
「マリノスでも『お前は周りが見えていない』とよく言われていた。もし自分がその言葉に耳を傾けずにやっていたら、今日のシーンも律へのクロスではなく、ワンツーしたり、ドリブルしてシュートをしてしまっていた。当然その選択肢はあったけど、あの時は律の動きが見えて、すぐに身体が反応した。そういう意味では今日で一歩前に進めた気がします」
 
 世界の大舞台でのスタメン出場は、その成長を促すために必要な気付きと、確かな手応えをもたらした。
「でも、やっぱり今日の最後はモヤモヤします。この気持ちは次に絶対ぶつけたい。次からは決勝トーナメントなので、自信を持って向かっていきたいです」
 
 次なる戦いへと目を光らせる遠藤。ようやく掴んだ世界での手応えをより確かなものとするために――。さらなる高揚感と最後まで勝負できなかった悔しさを、次なる相手・ベネズエラに思い切りぶちまけるつもりだ。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)